教員紹介
本書は、ニュートン力学に代表される決定的モデルを出発点とし、乱数を用いた確率的モデルを経てカオスに至るまでを一つの流れとして、ここに大半の章を構成しています。また、この流れとは別に、ハードウェアの性能の向上とソフトウェアの多様性、利便性の向上にともない、生物や社会の仕組みを模擬したモデルによるシミュレーションが容易になりました。これらをアナロジーに基づくモデルとして最後にまとめましたが、紙面も限られているので、著者の判断で適用範囲が広いと思われるものを優先的にとりあげました。
全体を通じて、シミュレーションという複合的な分野にわたるテーマを包括的に理解するという視点から、よく知られている論点やモデルを中心にまとめました。さらに、文系の学生にもわかりやすいように、全体的な鳥瞰が容易に眺望できることを重視して各章を完結させています。
なお、オーム社のサイトから付録のプログラムをダウンロードできます。
本書は本学部の講義科目「コンピュータシミュレーション」の内容を基に作成しました。テキストとしてまとめるにあたり、第11章のカオスの応用例は本学部第一期生の野村泰稔さんに草稿を作成していただき、図は執筆当時4年生であった鳥形由紀さんに作成していただきました。開講当初、本科目は他大学でも稀な新規性の強いものでしたが、授業を通し、さまざまな紆余曲折を経てここに至った感があります。この間、お付き合いいただいた受講生に感謝の意を込めてまとめました。