働く関大人 "潤滑油"として開発現場を支える 世界に届けるゲームの魅力 ゲームソフトウェア業/総合職
株式会社カプコン
島田 実緒(しまだ みお)さん 

 この20年間で約4倍に成長し、国内市場規模が年間2兆円を超えるゲーム業界。島田実緒さんは2022年に大手ゲーム会社・株式会社カプコンに入社し、現在は開発管理部で活躍しています。人気ゲーム『モンスターハンター』の新作などにも携わる島田さんに、仕事のやりがいや業界の魅力を伺いました。

経営層と開発部門をつなぐ"潤滑油"

—今年3月、「大カプコン展」が開催されました。

 大阪中之島美術館での開催期間中に私も見に行きました。歴代の人気作品のパッケージやキャラクターの設定資料などが展示されていて、どのブースにも長い行列ができていました。カプコンのゲームがどれだけ多くの人に愛されているか、改めて実感できる展覧会でした。

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 「大カプコン展―世界を魅了するゲームクリエイション」は1983年の創業以来、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター』やサバイバルホラーゲーム『バイオハザード』、ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』といった、世界的な人気ゲームを創り出してきたカプコンの軌跡をたどる展覧会。大阪では2025年3月~6月に大阪中之島美術館で開催され、多くの来館者でにぎわった。同展はその後、全国を巡回している。

—島田さんが所属している開発管理部は、どんな業務を担当する部署ですか?

 ゲームソフトの開発には、プロデューサーやディレクター、デザイナー、プログラマー、サウンド担当など、多くのスタッフが関わります。タイトルによっては数百人が参加することもあり、開発期間は数年、多額の費用もかかります。

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 開発管理部は、こうした人員や予算の管理を担当する部署です。私は3人チームの一員として、プロデューサーからゲームの企画や予算内容をヒアリングし、その情報をもとに経営陣へ開発の承認を得るための資料を作成しています。

—経営陣にわかりやすく伝えるために工夫していることは?

 開発者の想いや必要なコストを、そのまま伝えるだけでは意図が正確に伝わらないこともあります。だからこそ、「どう表現すればわかりやすく、納得してもらえるか」を常に意識しながら、試行錯誤を重ねています。経営会議に提出する資料は、提出の約1カ月前から本格的な準備に入ります。開発チームと、対面やオンラインでほぼ毎日のようにコミュニケーションを取り、内容をブラッシュアップして完成させていきます。経営層と開発部門の間に立ち、両者をつなぐ"潤滑油"のような役割ですね。

周りの声に耳を傾ける大切さ

—入社してから、最も嬉しかった瞬間を教えてください。

 初めて自分の名前がゲームのエンドロールに載った時ですね。初めて担当した『ゴーストトリック』(2023年6月発売)には、まだ2年目ということもあり自分の名前がスタッフとして載るとは思っていませんでした。エンドロールで名前を見つけたときは本当に嬉しくて、両親にゲームソフトをプレゼントしたほどです。

—仕事での苦労や失敗は?

 私の所属する部署には先輩がサポートしてくださる体制が整っているので、大きな失敗をする前にフォローしてくださります。人はどうしても「自分の考えが正しい」と思いがちですが、異なる視点から指摘をもらうことの大切さを、日々実感しています。特に開発チームのメンバーとは、仕事をする環境やバックグラウンドが異なるので、丁寧なコミュニケーションを意識しています。

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ゲームの楽しさを、もっと多くの人へ

—仕事のやりがいは何ですか?

 大きなプロジェクトに関われることです。今年2月に発売されたモンハンシリーズの新作『モンスターハンターワイルズ』(2025年2月発売)は、発売1カ月で全世界1000万本を突破しました。自分が直接開発したわけではないのですが、良い仕事に関わることができ、大きな満足感を得ました。

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 入社前はゲームをプレイして「楽しかったな」だけで終わっていましたが、制作の裏側を知った今は「開発者はこういう想いを伝えたかったんだな」と、作品に込められた意図や工夫が見えるようになりました。ただ、新作には常に前作を超えることが求められます。やりがいのある仕事ですが、その分責任の重さも感じています。

—将来的に取り組んでみたいことはありますか?

 ゲームのすそ野を広げるような仕事にも、今後ぜひ挑戦してみたいです。かつては「ゲームに熱中するのは若い男性」というイメージが強くありましたが、今ではその印象も変わりつつあります。実際、「大カプコン展」には幅広い年代の方々にご来場いただきましたし、近年はeSportsへの関心も高まっています。これからはより多くの人に、そして世界中の人にゲームの楽しさを届けられるようにしたいですね。

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大学での挑戦が、ゲーム業界への扉を開いた

—ゲーム業界を志望した理由を教えてください。

 テーマパークやゲームに興味があり、人を喜ばせることが好きだったので、もともとエンターテインメント業界で働きたいと考えていました。エンタメ系のコンテンツは、必要とされなければ消費者に選ばれません。それが難しさであり、面白さでもあります。なかでもゲーム業界を選んだのは、外国語学部で学んだ経験を活かして、世界中の人たちに楽しんでもらえるコンテンツ作りに携わりたいと思ったからです。

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—学生時代に経験したことで、今につながっていることはありますか?

 1年次に、「関大祭」(関西大学の統一学園祭)の実行委員会に所属し、お化け屋敷の運営を担当しました。3日間で多くの来場者に楽しんでいただき、大きな達成感を味わいました。
 また、4年次のゼミ活動では、堺市の観光パンフレット制作に取り組みました。市役所や印刷会社と打ち合わせを重ね、自分たちで取材も行いながら1年かけて一つの作品を作り上げました。予算や納期が決まっている中で進める経験は初めてで、社会に出る前の貴重な学びとなりました。これらの経験を通じて、チャレンジ精神や計画性、そしてチームワークの大切さを身につけることができたと感じています。

在学中にはいろいろなことに挑戦を!

—最後に後輩へのアドバイスをお願いします。 

 実は私も大学時代、ゲーム業界のことはあまりよく知りませんでした。就職活動を始めるときに「自分は何がしたいのか」と改めて考えた結果、「やはりゲーム業界で働きたい」と気付きました。それは関大祭などでの経験があったからだと思います。後輩の皆さんには、ぜひ在学中にさまざまなことに挑戦し、多くの経験を積んでほしいと願っています。

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教えて!働く関大人

必須アイテム

 デスクにはゲーム用の「マイコントローラー」を置いています。ゲーム業界以外では考えられないですよね(笑)。昼休みに同僚たちと、『ストリートファイター』などをプレイして楽しんでいます。毎年社内で開催されるeSports大会に出ることがモチベーションに繋がっています。

ある1日のスケジュール

  9:00 出社
 10:00 開発チームとの調整、資料作成
 12:00 昼食、ゲーム仲間と
     『ストリートファイター6』でリフレッシュ!
 13:00 開発チームとのミーティング
 14:00 プロジェクトチームのミーティング
 15:00 資料作成
 17:30 退勤

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リフレッシュ方法

 昨年からテニス教室に通っています。今年、初心者クラスから初級クラスに進級しました!

ゲームソフトウェア業/総合職
株式会社カプコン
島田 実緒(しまだ みお)さん

2022年外国語学部卒
京都府 立命館高等学校出身