1. TOP >
  2. 会報『葦』のご紹介 >
  3. 2023年春号 No.184 >
  4. 「学の実化」を具現化するためのオープンイノベーションの場

「学の実化」を具現化するためのオープンイノベーションの場
関西大学イノベーション創生センター(CIC)のご紹介
ウイーン医科大学─関西大学の国際共同研究の紹介

環境都市工学部
エネルギー環境・化学工学科
教授 山本 秀樹

「関西大学イノベーション創生センター」(Center for Innovation & Creativity:CIC)は2016年9月、関西大学創立130周年記念事業の柱として、関西大学における本格的なイノベーションの創出拠点となることを目的に竣工されました。このセンターでは、人文・社会・自然科学の学問分野を融合し、産学官連携活動の飛躍的な活性化となる研究活動支援を行っています。関西大学におけるアントレプレナーシップ「起業家精神」の醸成に対する特徴は、「学の実化」の具現化を目指し、常に起業家のように考動できる「考動力」人材育成を一つの目標としています。当センター内部は、実験研究エリア(全34室:学外企業5社含む)、ベンチャーオフィス(関大発ベンチャー7社)、対話スペース、カフェ・ミーティングスペース(スターバックス:1F)などから構成されています。
私は、環境都市工学部エネルギー環境・化学工学科に所属し、関西大学イノベーション創生センターの実験研究エリアで、所属の学生や院生PDおよび社会人博士学生と一緒に、いくつかの国内企業や海外大学と連携して共同研究を実施しています。
近年、医学と工学を連携させた研究を進めています。具体的には、ヒト血液のネバネバ、サラサラを評価する指標である血液粘度(粘性率)測定装置(小型人血液流動特性解析装置Falling Needle Rheometer)の開発と実証試験を学部学生、院生と一緒に行っています。血液粘度測定装置の開発には15年以上の月日がかかりました。特に苦労したことは、実際の測定は医学部の共同研究者である先生方の協力が不可欠で、私たちは、当初、アメリカ国立標準技術研究所:NISTのMichael Frenkel博士の研究所で装置開発を実施しました。

関西大学イノベーション創生センター
人血液流動特性解析装置(Falling Needle Rheometer)

また、臨床試験先としてオーストリアのウイーン医科大学、Bruno教授、Plasenzotti博士と、共同研究をスタートしました。ウイーン医科大学と関西大学の共同研究は10年以上も継続できています。毎年数回、研究室所属の学生、院生と短期間の共同研究を現地で実施しています。国内においては東京慈恵医科大学、三重中央医療センターの先生方にも利用いただき、長年にわたり人血液流動特性解析装置の小型化に挑戦してきました。
この装置は、人血液の粘性率を少量採血後、短時間で測定できます。実用化のための臨床試験は、医学系の研究室で実施が不可欠であるため、国内の研究所に加えて、オーストリアのウイーン医科大学、Bruno教授、Plasenzotti博士と人血液に加えて、哺乳類(馬、ヤギ、ヒツジ、ウサギ)の血液の流動特性(粘性率)の測定・評価を実施し、学術論文として発表してきました。海外での実験は、装置運搬の手続き(インボイス)、滞在計画、研究計画などをすべて英語で作成する必要があるので準備が大変ですが、学生の皆さんには、海外短期研究室インターンシップとして貴重で重要な体験となっています。
(関西大学副学長・本会会報編集顧問)

ウイーン医科大学院生との共同研究とFNR
米国国立標準技術研究所(NIST)
ウイーン医科大学共同研究風景
ウイーン医科大学共同研究メンバー
ウイーン医科大学共同研究風景

会報『葦』のご紹介