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東京都で教育懇談会と特別講演を開催「検証 COVID-19災害 ─見えてきた課題とアフターコロナの社会」

関西大学教育後援会は関西大学との共催で8月27日(土)、ホテル東京ガーデンパレス(東京都文京区湯島)で教育懇談会と特別講演を開催しました。
この教育懇談会は、主に夏季休業期間を利用して、関西大学から遠隔地に在住する在学生のご父母を対象に、全国各地で開催しているものです。他大学に先駆けて本学が最初に開始した取り組みで、後に全国の多くの大学が追随するようになりました。
当日は、前田裕学長が本学の教育について、芝井敬司理事長が本学の運営と今後の展望について説明しました。また、キャリアセンターによる就職状況の説明、今年就職活動を終えた学生からの就職活動体験報告が行われ、参加者は真剣に聞き入っていました。午後からは、学部別の教育懇談会を実施。就職や学生生活、奨学金などの相談コーナーも設置し、本学教職員がご父母の皆様の疑問や質問にお答えしました。
一方、同時開催となった午後の特別講演(関西大学・関西大学教育後援会・関西大学校友会共催)では、社会安全学部の廣川空美教授、山崎栄一教授、永田尚三教授が「検証 COVID-19災害 ─見えてきた課題とアフターコロナの社会」をテーマに講演しました。

次の社会のために災害と向き合う

特別講演は社会安全学部長の川口寿裕教授の司会進行によって開始され、まずは前田学長から「私たち大学は、このCOVID-19災害を乗り越え、次の社会を作っていかなければならない存在です。 本日は社会安全学部の3名の先生方の講演を通じて、皆様と一緒に改めてCOVID-19災害について考える機会となれば幸いです」と挨拶しました。

次いで川口教授が社会安全学部を中心に関西大学が編著した『新型コロナで世の中がエラいことになったので関西大学がいろいろ考えた。(浪速社)』などを紹介し、「社会安全学部ではこの教育懇談会において、熊本では地震の話をしたり、岡山では豪雨災害の話をしたり、そして今回はCOVID-19災害を取り上げるなど、災害やパンデミックに関して、多様な分野の専門家である教員による複眼的な検証を実施しています」と述べました。

職場で起こるこころの問題とは?

最初に講演した廣川教授は、メンタルヘルスを専門としており、職場における新型コロナウイルス感染症対策や、それによって生じる従業員のメンタルヘルス不全の問題について解説しました。「職域における対策では、リスクに関する情報提示や意見交換を通じて、相互理解を深めて考えを共有するリスクコミュニケーションが必要です」と説明しました。また、独自の調査結果を示し、どういう人にリスクが高いのか、何にストレスを感じるのか、どのような行動変容があったのかなどのデータを示し、ストレスケアの必要性と方法について解説しました。詳しくは廣川教授の研究チームのWebサイト「コロナ禍におけるストレスケア(https://stress-care.jimdofree.com)」でご覧いただけます。

法的規制の社会的要請と法的規制の難しさ

続いて山崎教授は、COVID-19対策をめぐる国や行政の対応の妥当性や問題点などについて、法学の視点から解説しました。「本来、法規制というものは、個人の自由が最大限に保障されるべきもので、むやみに規制すべきではないという議論が行われてきたのに、COVID-19災害においてはむしろ逆に積極的に規制すべきという議論が起こりました」と説明しました。しかし、「何を規制するのか、規制に従わない場合どのように強制するのかについて検討する中で、法制度化の難しさが見えてきました」と述べました。

慢性的な人手不足を解消するために

最後に永田教授は、COVID-19災害における行政の危機管理上の課題と今後の対応策について、行政学、公共政策、政治学の視点から解説しました。「COVID-19災害の長期化によって災害時新業務の日常化が起こり、どの市町村においても慢性的な人手不足が生じました」と警鐘を鳴らしました。このような事態に対して、「Civil Protection(文民保護)」に関わる民間の共助組織の活用、オールハザード型の危機管理体制の確立など、いくつかの対応策を示唆して講演を締めくくりました。

  • 前田 裕 学長
  • 川口寿裕 教授
  • 廣川空美 教授
  • 山崎栄一 教授
  • 永田尚三 教授

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