1. TOP >
  2. 会報『葦』のご紹介 >
  3. 2022年夏号 No.182 >
  4. コロナ世代への対応

コロナ世代への対応

2020年から始まった世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、関西大学も大きな打撃を受けました。しかし感染患者の増加が一時的に鈍化したことなどから今春は履修者の多い授業を除き、オンライン授業から原則対面授業に切り替わりました。さらにコロナ禍による学生たちへの影響をできるだけ少なくしようと、様々な取り組みや変化が見られます。

新入生歓迎の集いに500人

千里山キャンパスでは4月3日、新生活のスタートと学生同士の交流をサポートするイベント「関西大学 新入生歓迎の集い2022」が開かれました。この企画が始まったのは2018年です。大学主催で、我が子の一人暮らしを心配する親御さんらの声がきっかけです。全国の大学で、一人暮らしの新入生のための本格的で大規模な歓迎会を無料で開催するのは極めて異例で、当時メディアでも大きく取り上げられました。
今年は西日本出身者と、東日本出身者・留学生の2部制で行われ、合わせて500人を超える新入生が参加しました。出身地や学部を明示したカードをかけ、同郷の学生を見つけて方言での地元トークを繰り広げるなど盛り上がりました。
イベントの最後には、教育後援会から“食”支援の一環として、参加者全員にお米やそば、USBフラッシュメモリなど新生活に必要なものをプレゼントしました。

教育後援会がアンケートで拾った新入生たちの声を紹介します

ラボで出会おう1
県人会と100円朝食、100円夕食

こうした「郷土意識」を強くした新入生らの集まりは、キャリアセンターでも4月中に12回、行われました。例えば4月19日に千里山キャンパスのキャリアデザインラボで開かれた和歌山県人会。
出席した新入生に先輩の2年次生が、ゼミ制度の説明や部活やサークルの選び方などを教えました。中には遠距離通学で「朝の5時半に起き、5時45分には家を出てキャンパスには8時に着きます」という新入生もいました。心配顔の先輩が「それでは朝ご飯を食べる時間がないでしょう?」と尋ねると、この新入生は涼しい顔で「毎朝、学生食堂で100円朝食を食べており、これで助かっています」。
100円朝食は2018年から始まりましたが、2年前の秋からは同じ千里山キャンパス凜風館2階食堂で、「100円夕食」も始まりました。コロナ禍で経済的に困窮する学生を支援するもので、教育後援会などの支援と大学生協の協力で実施しています。100円朝食と同様、「100円夕食」のメニューも日替わりで、ハンバーグやアジフライ、チキン南蛮、豚カツなどをメインに、副菜として里芋、チンゲン菜、インゲンなどの野菜をバランスよく取り入れています。100円朝食は現在一日平均180食程度、100円夕食は150食程度提供されています。
また、千里山キャンパス以外のキャンパスにおいても状況に応じた食育支援が行われています。

ラボで出会おう2
「マーケティングしました」

キャリアデザインラボでは5月25日と6月8日の2回、マーケティング体験企画が行われました。就職活動中の学生からマーケティング職に興味があるとよく耳にしますが、学生が実際に体験できるケースはほとんどありません。そこでキャリアセンターの職員が「マーケティングとはどんなものかを学生に体験してもらったら」と企画。たまたま職員の知り合いがいた家電メーカー「シャープ」に依頼し、実現しました。
今回のテーマは「ホットクックの売り込み」。これは同社の自動調理器で▽スマホと連動▽無水の自動調理▽最大15時間の予約可能▽かき混ぜ機能付き──などがキャッチフレーズです。開発した経緯などを担当者から講演してもらった学生が、新規顧客への新たなマーケティング戦略をグループ別に立案しようという試みです。
集まった学生は約30人。まず1回目は講演と試食。開発時の苦労話などを聴き、その間にホットクックで調理したカレーを実際に食べて、機能を自分の味覚で確かめました。2回目が本番です。独身チーム、子育てチーム、シニアチーム、新婚チームの4グループに分かれ、それぞれのターゲットに受け入れてもらいやすい新たなアピール方法などを事前に練り上げ、発表しました。
まず「子育てチーム」。「火を使わないので、その分安心です。また食洗器で洗えたり、予約機能がしっかりしており、料理が得意でない人や時間がない人も安心して使えます」とアピール。さらに離乳食まで調理できることから、同じ子育て世代と情報を共有でき、そこから新たな交流も始まります──、との点も追加されました。

次いで「独身チーム」です。一人暮らしの学生や社会人で、下宿暮らしの学生も参加していることから、切実な声も出ました。「調理が苦手で面倒くさい」「コンビニ弁当やおにぎりなどに頼るので、栄養が偏るし、家族も心配する」などです。そこで「親の安心」などを前面に打ち出した企画が披露されました。なんとも「親孝行な企画」です。
次は「シニアチーム」。料理が苦手な人や「使いこなせるか」という不安のある人々に、安心して購入してもらえるように、地域ごとにホットクックを使った料理教室を開催。器具の使い方になじんでもらうと同時に、地元の交流やコミュニティづくりにも使ってもらおうという狙いです。
このチームでは最近各地で利用され始めた「ミールキット」との組み合わせも検討されました。これはレシピと食材がセットになった商品で、新鮮な野菜や肉などの食材が必要な分量だけ入っており、買い物の手間が省けることから、人気があります。こういった企画とのコラボも注目されました。
最後は「新婚チーム」。共働き世帯が多いので、料理の時間を節約できるメリットが注目されました。そのうえで大型ショッピングモール内の家電量販店でのアピール、インフルエンサーへの紹介やそれと真逆の実演販売の実施なども提案されました。
それぞれの提案にシャープ側からの評価が行われ、学生たちとの質疑応答も行われました。キャリアセンターでは、今後も条件が整えば同様の試みを続けたいそうです。

再開されたゼミ合宿

春学期に入って対面授業が全面的に再開されましたが、同時にゼミの合宿も始まりました。例えば経済学部の良永康平教授のゼミでは4月29日から1泊2日の予定で関西大学の六甲山荘で行われました。
参加者は教授とゼミ生の約20人。初日の昼過ぎ、六甲山にある大学の研修所に集合しテーマ別に良永教授が指定したSDGs関係の資料の輪読会を実施。夜は夕食の後さらに班ごとに話し合い、翌朝は近くのオルゴールミュージアムを見学するなどして解散する流れです。
良永ゼミの場合、通常は春休みに行っていましたが、コロナ禍で普段通りのゼミ活動や合宿ができませんでした。今回は入学以来、オンライン授業で我慢し友達づくりに苦労した新3年次生の懇親も兼ねており、合宿の内容も「そこがポイントでした」と教授は振り返ります。
参加した獅々堀礼央さん(3年次生)は「指定図書を読んで発表する際は緊張しましたが、入学以来、他の学生と泊まり込むことなどなかったので貴重な経験になりました」と話しました。また奥村七海さん(同)は「思った以上にみんなよく勉強していて、牛のゲップが環境に大きな負荷を与える、というようなことを知っているゼミ生もいてびっくりしました」。
良永教授は「コロナ世代の学生たちをどのように指導するか、先生ごとにいろいろ工夫しています。いずれにしろ何とか関大生らしい学生生活を送ってもらって社会に送り出したい」と話しています。

会報『葦』のご紹介