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大学昇格100年を迎え多彩な記念事業を展開─山岡順太郎提唱の「学の実化」などを踏まえ─

関西大学は2022年6月5日、大学昇格100年を迎えました。1922年(大正11年)は、大学昇格はもちろん、本学の教育理念である「学の実化」の提唱、千里山キャンパス開設、学歌の制定など、大学の基礎が築かれた年でした。そこでこれらを記念した様々な事業が今春から展開されています。

山岡順太郎と「学の実化」

山岡順太郎

本学の前身は1886年(明治19年)11月に大阪西区京町堀に設立された「関西法律学校」です。その後、私立学校にも帝国大学と同等の資格を認める大学令が公布されたのを機に、この法律学校で大学昇格運動が始まりました。その中心になったのが大阪財界の重鎮、山岡順太郎です。十分な基本財産の確保、新しいキャンパスの開設、優秀な教授陣の招聘など、様々な課題をクリアしましたが、中でも力を注いだのが本学の教育理念「学の実化」の提唱です。

「学の実化」講座の開催

「学の実化」とは「学理と実際との調和」を意味し、これに「国際的精神の涵養」「外国語学習の必要」「体育の奨励」を加えた4つの指針が関西大学の基盤となってきました。
そこで2022年度に展開される記念事業では、まず「学の実化」という理念を現代に問う講座(5回)が始まりました。7月までに3回実施され、9月28日には作家、玉岡かおる氏、11月30日には大坪文雄・パナソニックホールディングス株式会社特別顧問が登壇します。(詳しくは「大学昇格100年記念特設サイト」をご参照ください)

千里山学舎

記念式典とシンポジウムの開催

式典は6月5日、千里山キャンパスのBIGホールで開かれ、学生・院生、教職員、校友ら約500人が出席しました。式典で芝井敬司理事長は山岡順太郎提唱の指導理念を紹介。感染症との長い闘いを続けながら、DXやSDGs、カーボンニュートラルといった現代社会の困難な課題に対峙し、関西大学の未来を展望することは大変意義のあること――と話しました。
また前田裕学長も「山岡先生には、関西大学の未来がどのように見えていたのでしょうか。100年を経た今も色あせない、我々の学是としての『学の実化』に込められている思いは、現代の課題でもあり続けています」と話しました。
シンポジウムでは、まず橋爪紳也氏(大阪公立大学研究推進機構特別教授、大阪公立大学観光産業戦略研究所長)による基調講演「大大阪の誕生」が行われ、本学が大学に昇格した100年前の大阪について説明。続くパネルディスカッションで、市原靖久教授(関西大学法学部)が司会し、橋爪氏や藪田貫氏(関西大学名誉教授、兵庫県立歴史博物館館長)、官田光史准教授(関西大学文学部)、橋寺知子准教授(関西大学環境都市工学部)、熊博毅氏(元関西大学年史編纂室)らパネリストが意見交換しました。

大学昇格100年記念式典・シンポジウム

山岡塾の創設と学生たちの果敢な挑戦

この講座で紹介された「学の実化」という理念を、実際に学生が社会で具現する試みが「山岡塾」の創設です。単なる机上の論だけではなく、学生の鋭い感覚で社会的な課題を見つけて解決策を実際に練り、何とか実現するという試みです。学生がチームをつくり本学教職員や校友らからのアドバイスを得ることができ、1チームごとに最大100万円の活動資金が提供されます。6月末までの応募者から7月の選考を経て塾生が決まり、8月下旬から本格的な活動が始まります。
全国にある4年制大学のうち、何らかの形で学内に塾を開設している大学は100校近くありますが、同様の塾はほとんどありません。山岡塾が想定している学生の活動分野は多岐にわたります。衣食に文化・エンタメ、人権や多様性、スポーツや環境の各分野まで及びます。学生たちは自分の暮らしの周辺で起きている具体的な問題の他、ニュースで知った現代社会の抱えるテーマに果敢に挑戦します。

キャンパスも整備しました

山岡順太郎の胸像は千里山キャンパスの第2学舎1号館前の広場にあります。周辺はうっそうとした緑に囲まれていたのですが、今回かなり整備され、すっきりした広場になりました。一息つける休憩スペースもできましたし、ベンチに座ると視界に様々な植栽が飛び込んできて、くつろげる空間になりました。ベンチで弁当を広げていた経済学部の女性は「ここでいつも友だちと落ち合ってだべっています」と話していました。

スタンプラリーも開催

大学昇格にまつわる千里山キャンパスの山岡順太郎像、大運動場を偲ぶ記念碑、旧正門、景観回顧モニュメント「グラウンドとクラブハウスのあった景観」、学歌、旧図書館の6つのスポットを巡って、スタンプを集めパズルを完成させるとノベルティが贈られるスタンプラリーも行われました。

記念映像の公開

大学に昇格したころの貴重な映像を再編集し、公開しました。例えば1928年(昭和3年)から1931年(昭和6年)ごろまでに撮影された千里山キャンパスの映像では、当時の大学本館や運動場の他、「関大前駅」や学生で満員の電車の通学風景などが収められています。
また日本建築界の偉才、村野藤吾が設計した建物の貴重な映像も紹介。昭和初期のラグビー、相撲、野球などのスポーツに打ち込む学生たちが登場します。

山岡順太郎先生胸像の除幕式

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