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コロナに負けるな!「ゆめサポ」支援に見た関大生の新事業や頑張り

2020年、突然のコロナ禍で生活の苦しい学生へ、「夢実現」をサポートしようと始まった「ゆめサポ〜夢実現支援金〜」。
昨年も継続し、学生たちの独創的な「夢づくり」が目立っています。その中の3人を紹介します。

「青春奪還作戦」で東京進出

「もしも一度だけ、あの日に戻れるなら」の値打ち

山口さんは2020年度に「ゆめサポ」に応募し、得た資金30万円などで起業。その後いくつかの事業を始め、今春には新たに始めた「青春奪還作戦」という大学生向け事業で東京に進出しました。
山口さんが元々始めたのは新たなカードゲームです。名付けて「人狼コロシアム」。以前からある「人狼ゲーム」を逆転の発想で改造し、人狼を引かずに相手にどのように引かせるかがポイント。これが受けて、クラウドファンディングで開発資金として目標の4倍、約200万円を集めるなど順調なスタートを切りました。

TRYBE企画書の表紙

資本金50万円で会社設立

2020年末には資本金50万円で「株式会社TRYBE」を設立。カードゲーム以外にも試行錯誤を重ねながらこの年、大阪で「青春奪還」を始めました。小学校の廃校を借りて「高校時代の一日」を再現するシンプルな企画で、山口さんの仲間が「先生役」になって、国語、政経、美術、物理などの授業をするだけです。受講する学生は3500円〜5500円を払います。それがなぜ受けるのか。
山口さんに言わせると、「もしも一度だけ、あの日に戻れるなら」というコンセプトが受けたそうです。
「大学に進学してもコロナなどでろくなことはなく、あっと言う間に就活戦線に追い込まれ、自分を見失いがちです。しかし高校時代は時間がゆっくり流れ、将来の仕事や自分をぼんやりながらも、頭の中に思い浮かべることが出来ました。もう一度あの時代に戻って、自分を取り戻しましょう。」というわけです。

高校時代の国語の授業を再現したシーン、
先生役も生徒役も大学生

もっとリアルに温かいことを

これが受けて、SNSで知った東京の学生たちが「こちらでも開きたい」と山口さんたちに連絡し、双方が協力して3月23日、東京あきる野市の小学校の廃校を使って開催しました。人狼ゲームにしろ「青春奪還」にしろ、「スマホやネットだけに頼らず、もっとリアルに温かいことをしたい」というコンセプトは、こういう時代だからこそ活きるのかもしれません。

フードロスで独自のアプリ開発

流通グループに注目され実証実験へ

村田さんは昨年入学したばかりですが、夢はコンビニやスーパーなどから生まれる食品ロスを減らすことです。そのためのアプリを自力で開発しました。今はあちこちのビジネスコンテストに応募しながら、アプリを採用してくれる企業や飲食店を探しています。
フードロスを削減するためのアプリは、全国でも数多く生まれていますが、村田さんが開発したものは他とどう違うのか。村田さんに言わせると、「産地と消費者を結びつけるアプリは結構多いのですが、僕が開発したのは産地ではなく、流通業者や飲食店と消費者を結ぶものです。こちらの方が異なる思惑などが重なってアプリ導入が難しい」そうです。
4月時点で東京の流通グループがこのアプリに着目し、近く大阪市内の店で実証実験を始める予定です。グループの社長も注目しているといいますが、この社長も、若いときに同じようなアプリを開発しようとして、失敗した経験があるそうです。世の中、何が幸いするかわからないことの好例です。

ビジコンでプレゼンする村田さん

ラグビーに生かしたデータサイエンス

ラグビーのルールも知らずに「分析班」へ

糸数さんの場合もユニークです。彼女の夢は「英語とデータサイエンスで日本と世界をつなぐ」です。元々、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなアミューズメントパークで、データサイエンティストとして働くことで、綿密な戦略策定や市場分析の能力獲得も視野に入っていました。糸数さんがユニークなのは、データサイエンスなどの学習を所属している体育会ラグビー部の戦略構築に役立てている点です。

強豪チームの弱点見っけ

中学高校とラグビーとは全く無縁。しかし関大入学後、部の雰囲気に惹かれ4月下旬に入部しましたが、当時はラグビーのルールすら知りませんでした。そんな糸数さんが選んだのは、スタッフの4つの分野の一つ、「分析班」です。分析班の中で、3年次生になり、試合の戦術を自分で考えてコーチ陣に提案するようになりました。

カギはタックルの成功率

たとえば、ある強豪チームの試合映像を最低でも3試合見て、相手の弱点を探りました。統計的に処理してタックルの成功率の低い選手を見つけ出し、それをコーチ陣にパワーポイントで説明しました。その結果、苦手だったそのチームに勝利することができました。関西大学の伝統である「学の実化」そのものです。

右手で“データサイエンス”、
左手で“ルールも知らなかったラグビー”
をゲットした糸数さん

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