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飛鳥史学文学講座が千里山キャンパスで開講式 -今年で47年目。来春には記念行事も-

高松塚古墳での日本で初めての壁画発見を機に始まった飛鳥史学文学講座が、今年度も4月から始まりました。47年目の第1講は、話題の中尾山古墳(奈良県明日香村)について米田文孝・関西大学文学部教授が講演し、10月10日に「伎楽と天王寺舞楽」と題して特別講座を予定している天王寺楽所雅亮会副理事長・小野真龍さんも挨拶しました。

当日は関西大学と考古学研究に関するパネルを多数展示

540回「皆勤」が4人も

講座は通常、明日香村の中央公民館で開かれていますが、公民館の改修工事の関係で、今年度は関西大学の千里山キャンパスで開くとともに、その様子を飛鳥文化研究所・植田記念館にもライブ配信を行っています。
4月11日の開講式では、感染防止対策が行われた百周年記念会館に考古学ファンら約170人が参加。講座の創設者、森本靖一郎・元関西大学理事長(5月14日逝去)が「講座はこれまで540回ほど開いていますが、そのすべてに出席していただいている方が4人もいらっしゃいます」などと、講座の魅力を強調しました。

天王寺楽所の小野さん、来春の公演を予告

続いて森川裕一・明日香村村長、関西大学の芝井敬司理事長、前田裕学長らの挨拶に続き、小野雅亮会副理事長が、来年3月27日には高松塚古墳壁画発見50周年記念事業の一環として記念公演を開催することを予告しました。
天王寺楽所は、聖徳太子の年忌法要である「聖霊会」での奏楽・奏舞を行うために設立され、雅楽の伝承に力を入れています。その舞楽は野外で演奏することや、もっぱら参詣者の仏縁を深めることを目的としていたことから、ダイナミックな舞いぶりで有名です。

開講式の様子

古墳の終焉と火葬の始まり

今年度第1講の講師、米田教授は「中尾山古墳が語る時代の変革─古墳の終焉と火葬の始まり」と題して話しました。それによると──。
中尾山古墳は終末期古墳の一つで、東西にのびるなだらかな丘の頂上にあります。調査は1974年と今回(2020年)の2回にわたって行われました。今回の調査では、この古墳は3段の墳丘と3重の外周石敷をめぐらせた八角墳であることが分かりました。中心部の埋葬施設は10個の切り石でつくられた横口式で、高さ、幅、奥行きとも約90㎝です。
特に注目されるのは内部の壁面で、かなりきれいに磨かれ前面に水銀朱が塗られ、被葬者の地位の高さがうかがえます。床面の中央部には火葬骨を収めた蔵骨器を安置するための台が設置されていたと考えられ、ここに古墳の終焉と火葬の始まりが示されていると言えそうです。

米田教授による講座の様子

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