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魅力の“飛鳥講座”を関西大学でスタート──47年目の開講、中尾山古墳やヴィクトリア女王…──

日本で最大規模

考古学ファンらが集まる講座としては日本で最大規模の「関西大学飛鳥史学文学講座」が、4月から千里山キャンパスで始まりました。今年も多彩なテーマで12講プラス特別講を開催の予定。話題の中尾山古墳から「女帝と女王」、「古代美人の活躍時代」など、幅広いテーマに加えサプライズやキャンパスミニツアーも用意されます。なお、開催日等の詳細は、本会HPの行事・活動のご紹介「飛鳥史学文学講座」ページに記載しています。

きっかけは高松塚発見

講座創設のきっかけとなったのは、1972年(昭和47年)高松塚古墳の壁画発見です。極彩色の壁画の中で浮かび上がった青龍や女子群像は、1300年の時空を超えたトップニュースとして世界に発信されました。発掘を担当した網干善教・関西大学名誉教授(当時、助教授)が、調査を全面的にバックアップした教育後援会の森本靖一郎幹事長(後の本学理事長、現教育後援会常任顧問)らと相談し、発掘の成果を生かした社会貢献として、連続講座を企画しました。
その講座は1975年(昭和50年)からスタートし、これまで500回以上開催。参加者は延べ11万人近く、日本有数の歴史・文学講座に成長しました。

3千人の考古学ファン

昨年12月13日に開かれた講座では関西大学文学部、西本昌弘教授が「飛鳥京跡苑池を考える」と題して講演しました。苑池は飛鳥宮の庭園跡で、中国などの影響を受け、斉明女帝が宮殿に隣接して建設。西本教授はこうした建造物の歴史的意義について説明しました。
この後登壇したのは明日香村教育委員会文化財課調整員で関西大学非常勤講師、西光慎治氏。西光氏が取り上げたのは話題の中尾山古墳。氏は関大文学部史学科出身で、文学部の米田文孝教授に協力し、明日香村の同古墳を発掘調査しました。
村と関大考古学研究室の共同調査で、その成果は昨年11月末、発表と同時に、各メディアに大々的に取り上げられました。その後開かれた現地説明会には、コロナ禍にもかかわらず全国から3千人近い考古学ファンが詰め掛けたほどです。

西本昌弘文学部教授による講演風景
墳丘復元図について説明をする西光慎治氏

中尾山古墳と文武天皇

この調査が注目されたのは文武天皇との関連です。もともと宮内庁は現場から400メートルほど南にある栗原塚古墳を文武天皇陵とし、今後も変更の予定はなさそうです。しかし今回の調査で意外なことが分かったのです。
古墳は50年ほど前に調査されたことがありますが、その時の調査は十分ではなく、今回初めて墳丘が正八角形の八角墳であることが確認されました。さらに3段の墳丘の周囲に3重の石敷きを巡らせていることや、石室の全容が解明され、「大宝律令制定などで知られる文武天皇が被葬者であることが確定的」と報じられました。細部で注目されたのは次の3点です。

  • ・八角形墳は天皇陵の特徴の一つ。
  • ・ 中尾山古墳の建設に必要な労働者は推定2万人(村教委文化財課)で高松塚古墳の4倍。
     被葬者の権力の大きさがうかがえる。
  • ・ 石室は10枚の切り石で精巧に組み合わされ、骨壺が安置されたとみられる90センチメートル四方の内面は見事に磨き上げられたうえ、赤色顔料が全面的に塗られている。
中尾山古墳

ユニークな学生の発想

関西大学の発掘調査で見逃せないのは、学生の存在です。考古学研究室で学ぶ学部生や院生が調査に参加し、考古学を実体験するのですが、特にユニークなのは学生たちの柔軟で自由な発想です。
例えば文学部3年次生、小木曽優佳さん。小木曽さんはもともと政策創造学部生でしたが、今年度から文学部に転部しました。政策を学んだだけに考古学を目指す他の学生にはない独自の視点があります。彼女はこういいます。
「今後の文化行政を発展させるには幅広い世代からの理解が必要で、特に小学生をはじめとした若い世代へのアピールをどうするかが課題。恐竜の骨が埋まっています、というくらい子供も関心をもてるような、年齢別の話題を用意することも必要です」
小木曽さんがこういう考えに至ったのは、3千人の現地説明会の中で耳にした親子の会話がヒントになっており、「実体験」をもとにした発想がキラリと光ります。

関西大学文学部考古学研究室のメンバー
石槨を調査する学生たち

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