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自粛から生まれた学生のアイデアや斬新な社会貢献

巣ごもり生活でも新たな試み
─野球部員の動画教室や女子学生の「ありがとう」サイト─

新型コロナウイルスの感染拡大で、学生たちの課外活動も、大幅な「巣ごもり」を余儀なくされた。昨秋の明治神宮野球大会で準優勝した関大野球部も例外ではない。それでも「何かできることはないか」と動画で野球教室などを開く新しい試みを始めた。一方では、社会学部の女性が医療従事者への感謝の言葉を書き込めるサイトを新設し、大きな反響があった。

部員200人で子供たち向けオンライン教室

野球部員は約200人。4月3日から練習を自粛した。部員は落胆したが、同じようなことに陥っている野球好きの小中高生の存在に気が付いた。部員自身が考えたメッセージを動画で伝えようと、部の公式ブログやインスタグラムで配信を始めた。
自分たちが大切にしている一言を子供たちに紹介する部員がいた。例えばさん(経済学部2年次生)は「自分に勝つ」だ。「僕も今は一人でトレーニングしていますが、目標を見失わず努力を続けましょう。この期間に強い精神力を身に着けてください」と励ました。

マネージャーのさん(社会安全学部2年次生)は準備の大切さを強調した。「誰にでも、あの一球さえなければ、という苦い経験があるはずです。その一球を良くするのも悪くするのも、それまでの準備次第なのです」。

ダブルプレーの㊙テク教えます

もちろん動画を生かして、プレーの細かいテクニックや注意点を説明する部員もいた。理想の投球フォームを身につけるにはどうしたらよいのか。「ダブルプレーを取るための㊙テクニック」と題して、併殺の際の内野手のポジショニングや足の運び方まで、指摘は実に細かな点にまで及んだ。
強打で鳴るさん(商学部2年次生)は素振りの際に「ただバットを強振するだけではなく、高さやコースを想定して、ミートポイントを見定めて振ったら効果的」と指摘した。
ほとんど毎日、野球部員の練習を見続けている野球部アドバイザーで元阪急ブレーブス投手、山口高志さんは「授業や部活動が満足にできない期間だが、こんな時こそ心身ともに成長する一日一日にしてほしい」と話している。

子供たちの反応も「すごっ」

興味深いのは子供たちの反応だ。「あの腕立て伏せはすごかった」と中学生が驚いたのはさん(人間健康学部2年次生)の腕立て伏せだ。ふつうに手足を床につけてするのではなく、手足を使って上に飛び上がり着地する、というスタイルを延々繰り返すので、子供たちは驚いたという。
反響は子供に限らず、その親にも及んだ。投手のさん(人間健康学部2年次生)はマシーンで両足を1メートルほどに開き、足首も外側に開いてゆっくりじっくり腰を下ろす特殊なスクワットを動画で実演した。これを見た子供の母親が「マシーンを使わず家でもできる方法は」と問い合わせした。

11年前の伏線

動画教室は6月中旬まで2カ月あまり、ほとんど1日も欠かさず続いた。「こうした部員の社会貢献は、ずいぶん前の出来事が伏線となっています」というのは、元監督(1999〈平成11〉年〜2005〈平成17〉年)で本学の総務局長の高岡淳氏だ。野球部の貢献活動は高知県・安芸キャンプでの野球教室や淀川の清掃作業までかなり多岐にわたるが、そのきっかけは2009〈平成21〉年の不祥事にさかのぼる。
休部に追い込まれた野球部は部員たちの意識改革など、様々な再発防止策に取り組んだ。それが現在にまで及んでいる。

毎年行っている河川の清掃活動

淀川の清掃活動は毎年、他のボランティア学生も呼び込んで参加者は毎回500人にも及ぶ。担当個所のゴミが目立たなくなり、昨年から舞台を大和川に移したほどだ。
また新入生の研修プログラムも徹底している。今年はコロナ禍の影響で時期が6月にずれ込んだが、約60人の新入生が5回の座学に出席。1時間ずつ「文武両道」から「モラルとルール」「キャリアデザイン」「大学野球とは」「野球部の歴史」まで多様なテーマの講習を受けた。
そういう積み重ねが今回の「子供たちのための動画教室」に結実したという。

毎年行っている河川の清掃活動

たった二人の「ありがとうガーデン」

新たな活動の芽は部活動に限らない。例えば社会学部の3年次生、さん。5月上旬、高校時代の同級生、武庫川女子大のさんと組んで、ネット上に「Arigato Garden」というサイトを新設した。
人手や器材の不足など厳しい環境で新型コロナウイルス感染者の治療を続ける医療従事者らに、感謝の言葉を送信するサイトだ。フロントページには「心に眠る感謝や応援の言葉を、届けたい人へ。今届けるべき人へ。さあ、想いを咲かせよう。」とあり、現在では医療分野の他、保健所・救急隊員、小売・流通など5つの分野で、感謝の言葉を募っている。

Arigato Garden

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