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3年目の「新入生に贈る100冊」と多彩な学生の読書運動─教育後援会の全面的バックアップ─ 会報編集部

関西大学では一昨年から芝井敬司学長のもと、教育後援会の全面的なバックアップで「新入生に贈る100冊」企画など様々な読書運動を繰り広げています。第3弾の今春はジャルジャルの福徳秀介さん(関大文卒)の小説家デビュー作が「101冊目」に滑り込んだり、関大OGのユニークな新刊「ワンピースで世界を変える!」に関大生の「本の帯文」11本が収められたことなど、ニュースに事欠きません。他大学の追随を許さない、ご父母・保護者からのプレゼントによる関大生の「読む」をレポートします。

学生の半分は「読書ゼロ」(全国大学生協連)

若者の活字離れ。これがどの教育機関も抱える深刻な悩みです。例えば全国大学生協連の調査(今年2月発表)によると、学生の1日の読書時間で「0分」は48%。平均時間は「30分」で、依然と低水準です。また芝井学長が今年の入学式辞で指摘していますが、アメリカの学生は1年間で100冊の本を読むといわれているそうです。日米の学生間の「読書の格差」は歴然としています。

9割はスマホで読めます

そこで「100冊」企画が生まれました。毎年、芝井学長が20冊、大手書店の「丸善雄松堂」と「紀伊國屋書店」がそれぞれ40冊ずつ選び、新入生約7千人に「本との出会いはあなたの魂の成長の糧」と薦めるわけです。具体的には新入生にパンフレットで案内するほか、関大のホームページからも読むことができます。
100冊はご父母・保護者からのプレゼントとして教育後援会が購入し、4キャンパスの図書館で読めるほか、うち89冊は電子ブックとして読むこともできます。

ブローレンヂさん「ワンピースで…」

今春の第3弾は、話題の新刊が2冊入りました。1冊は「ワンピースで世界を変える!」(創元社)で、著者のブローレンヂ智世さんは関西大学文学部卒です。「メンズサイズの可愛いお洋服を」で起業し、東京大学の安田講堂で初めてファッションショーを開くなどした記録です。

ジャルジャルの福徳さんデビュー作

もう1冊は福徳さんの「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(小学館)で、福徳さんが学んだ千里山キャンパスが舞台です。
「超越論哲学」の授業で見つけた「一人ざる蕎麦女」への恋心と過酷な運命が青年をほんろうさせるドラマです。5月11日の発売予定ですから、「100冊」の選考には間に合わず、ようやく「101冊」という格好で取り込みました。しかし新型コロナウイルスの影響で発売は11月上旬に延びました。

関大生の成長と帯プロ

「100冊」企画による関大生の成長と質の高さをうかがわせるのが「本の帯プロジェクト」(オビプロ、協力:紀伊國屋書店、創元社)です。これは、「ワンピースで世界を変える!」の帯文を著者の後輩である関大生が手掛け、最優秀作品は全国の書店に並ぶ書籍の帯を飾るという企画でした。
プロジェクトの参加学生11人は、まず編集者によるレクチャーを受け、本書のプロトタイプ原稿を読んだ上で、帯の素材となる「キャッチフレーズ」と「本の紹介文」を考えました。
そうして集まった11の候補作品のなかから、最も心に響いたものに一票を投じてもらうWeb一般投票と選考委員による厳正な審査の結果、大西珠生さん(総合情報学部4年次生)の作品が最優秀賞に選ばれました。ここで大西さんの作品をはじめとする帯文を紹介します。

「オビプロ」応募作品

想定外の巻末

ところが想定外のことが起きました。選に漏れたほかの作品10点もすべて創元社の担当編集者、小野紗也香さんが巻末に収めてくれたのです。これには学生もビックリでした。小野さんはその理由を同書の200ページ目でこう説明しています。
「候補作品はいずれもすばらしく、あるものは個性的でユニーク、あるものは編集者も舌を巻くほど巧みで、非常にクオリティの高いものばかりでした」

読書カルテと「99人中9人は本嫌い」

もう一つ「100冊」から発展したユニークな取り組みが「オーダーメイド選書」です。学生の中には「どの本を読めばいいのかわからない」と迷う人もいます。そこで「本が好きですか」「興味のわくものは何?」「本に期待すること」など5つの質問に答える「読書カルテ」を学生から出してもらい、それを参考に書店のプロたちがその学生に合った1冊をメッセージとともにメールで届ける仕組みです。
社会学部4年次生、小山さくらさんは『僕がロボットをつくる理由─未来の生き方を日常からデザインする』(石黒浩著)を紹介されました。「アンドロイドなんてわからんしー」と思ってとっつきにくかったそうですが、実際に読んでみると「日常の暮らしに密着した話題が次々に登場して、まるでドラマを観ているような感覚で読みました」と話しています。
驚いたことにこの仕組みを利用した99人のうち「本は嫌い」と答えた人が9人もいました。学生によると「嫌い派」の中には「食わず嫌い」の学生もおり、「100冊」の大半が電子ブックだったことから、「スマホで簡単に読める」と申し込んだ人もいるようです。

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