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特集企画 就職座談会 学生のキャリア形成・就職活動支援を考える ─親子に聞いた「ここだけの…」─

関大生の内定率 ─全国平均上回る98・5% キャリアセンター調査

箕口昇広報委員長:今回の座談会ではキャリア形成・就職活動支援をテーマに、お話を進めます。初めに教育後援会のキャリア形成・就職支援の取り組みを教育後援会会長の岡野新様からお話しいただきます。

岡野新会長:関西大学教育後援会は就職に関する取り組みを伝統的に重視しています。例えば保護者向けの就職説明懇談会は他大学に先駆けて1980年に始めました。今年度は新たに「就職活動サポートブック」を作成し、3年次生に配付しました。今後はインターンシップの取り組みへのサポートも充実させていく予定です。

教育後援会広報委員長 箕口 昇

箕口委員長:次にキャリアセンター所長の笹倉淳史先生から昨今の就職状況を教えていただきたいと思います。

笹倉淳史キャリアセンター所長:昨今の就職状況は学生優位の「売り手市場」が続き、関西大学の実績も非常に好調です。

箕口委員長:就職活動の日程はいかがでしょうか。2018年10月、日本経済団体連合会(経団連)が2021年新卒採用より採用選考の指針を策定しないと発表しましたが。

笹倉所長:その影響で就職活動に混乱をきたさないように政府が収拾に乗り出し、現在の3年次生・2年次生の採用選考までは2019年3月卒業生と同様に、企業の採用に関する広報活動を3年次3月1日以降、選考活動を4年次6月1日以降とするガイドラインが引かれました。その指針は、現1年次生以降の採用選考にも踏襲されると考えられます。

箕口委員長:続けて関西大学のキャリア形成のステップを教えてください。

キャリアセンター所長 笹倉 淳史

笹倉所長:本学のキャリア形成は次の5つのステップで進んでいきます。
これは、大学4年間を、ステップ1〜5の5つの段階に分けて、段階的に進めていくシステムで、それらをキャリアカウンセリングという技法で大きく支えていきます。

キャリア形成V段階システムの実践

インターンシップはますます重要です

箕口委員長:なかでもインターンシップは職業観や勤労観の醸成にますます重要な役割を担うようになっていると感じます。

岡野会長:今は学生たちもインターンシップの重要性を十分に感じているようです。キャリアセンターが開催したガイダンスには、大変多くの学生が集まり、大盛況だったとお聞きしました。教育後援会はこれまでも国際インターンシップなどへの支援を行ってきましたが、これからはインターンシップの準備セミナーのサポートなども必要ではないかと検討しているところです。

教育後援会会長 岡野 新

笹倉所長:インターンシップは就業体験を通じて「働く」ことに対する理解を深める貴重な学びの場と捉えていますので、学生には低年次からの参加を促しています。近年は1日限りの1dayインターンシップも増えていますが、大学としては5日間以上・実習体験40時間以上をインターンシップの基準とし、事前・事後教育をこなして修了した者には単位を認定しています。また、本学では海外でインターンシップに取り組む国際インターンシップ制度も設けています。今年度も海外6都市で行い、環境の違いを乗り越えてたくましく成長する学生たちには私たちも大いに期待しています。

笹倉所長の説明

箕口委員長:芝井学長はインターンシップについてどうお考えですか。

目的に応じて使い分け

芝井敬司学長:学生の本分は学業ですから、学業をおろそかにしてインターンシップに取り組むのは本末転倒です。その前提を踏まえた上で、社会とのつながりを学生時代に得る就業体験はとても重要といえます。
海外の学生のように休学して半年間、というのは難しいでしょうが、長期間のインターンシップなら多くの発見が得られるでしょう。先ほど話題に登場した1dayインターンシップは採用選考を念頭に学生との早期アプローチを図るものが多く、大学としてはインターンシップに数えていませんが、それはそれで得られるものがあるはず。目的に応じて使い分けていただきたいと思います。

学長 芝井 敬司

1dayインターンシップはさまざまな企業が開催しており、私も参加しました。友だちもたくさん参加しています。

芝井学長:企業や自治体が今、何に関心をもち、何を課題として、どこに向かっているのか、肌で感じられる体験は、大学ではなかなか得られないものです。アルバイトも社会を知るチャンスですが、どうしてもサービス業に偏りがち。実際の仕事の複雑さや難解さを知り、同時にやりがいを体感するような経験を重ね、未来につなげてほしいと思います。

満足できる就職のためにも大学生活を全力で楽しむ

箕口委員長:古川真衣さんは就職活動を終えて第一志望の進路先から内定を得られたとお聞きしました。どのような就職活動をしましたか?

古川(子):私の就職活動は3年次の5月、故郷の石川県庁で実施されるインターンシップの参加理由を考えるところから始まりました。そして夏に県庁で仕事を経験し、その後、石川県野々市市役所で1週間のインターンシップに挑戦。1dayインターンシップにも複数参加して業界研究や企業研究を進め、関西大学のキャンパスで開催された企業の合同説明会や地元での合同説明会などに参加して4月くらいから企業・団体への本格的なアプローチを行いました。7月くらいには予防医学に関する一般財団法人への就職内定が決まりました。

箕口委員長:進路先をめざした理由もお教えいただけますか?

古川(子):私は大学で「防災教育」をテーマに学んでいます。地震や異常気象などによる被害を少しでも少なくする方法を専門家だけでなく市民も学び、みんなで生活を守るための研究に取り組んでいます。ふるさとの人、その暮らしや健康を守る仕事に就くことは私の大切な目標でした。

箕口委員長:では、就職活動中の時間の使い方で工夫したことや不安を取り払うために行ったことはありますか?

遊んだから頑張らなくちゃ

古川(子):就職活動だけに時間を使うのではなく、学生生活を楽しむことを大事にしました。3年次には鳥取や秋田、韓国へ旅行に行き、ほかにも地元のイベントに参加したり六甲山でスキーをしたり。面接の前日に友だちと遊びに行って英気を養うようなこともありました。
授業もおろそかにはできないですから、就職活動中は真面目に頑張るほど精神的に追い込まれがちです。前向きに取り組む姿勢を維持し続けるには息抜きも重要でした。「遊んだから頑張らなくちゃ」という反省の気持ちも力になりました(笑)。

箕口委員長:上手にバランスをとって就職活動に取り組んだのですね。逆に失敗したことはありますか?

精神的に追い込まれるので息抜きも大切です 社会安全学部4年次生

逃がしたチャンス

古川(子):採用選考でWebテストが課されることがあり、立て込んでいる時期はかなり多くのテストを受けました。そのなかで締め切り日を勘違いし、気づけばテストが終わっていたことが。日程管理が甘くてチャンスを逃がしてしまいました。

箕口委員長:就職活動の大原則は自分をよく理解することです。何が好きで、何が得意で、どんな価値観を大切にしたいと思っているかを知ることが進路選択や自己アピールの第一歩です。
次に、大学生活を充実させること。学業や部活動、ボランティア活動など「これは頑張った」と自信をもっていえることが強みになります。
そして、キャリアセンターを活用することです。業界を牽引する企業を招いた説明会や人事の方と交流できる機会など、キャリアセンターでは就職に直結するイベントを豊富に設けています。近年、一層重視されつつある適性検査(SPI等)対策としても年3回の模擬Webテストが無料で受験可能です。

古川(子):私もキャリアセンターを積極的に活用しました。キャリア支援システム(KICSS)で個別面談を申し込み、スタッフの方にとてもやさしくサポートしていただきました。
関西大学は本当に人があたたかいですね。SPI対策のWebテストもすべて受験。自己分析セミナーは、社会安全学部がある高槻ミューズキャンパスだけでなく千里山キャンパスで開かれた回にも参加しました。

芝井学長:学生たちには、真衣さんのように大学を上手に活用してもらいたいと思っています。なかにはキャリアセンターを全く活用しない人もいるので…。KICSSで告知もしていますが、利用を促す効果的な方法を考えることは私たちの課題です。
また、何か制度やプログラムを利用した感想はぜひスタッフに伝えてください。内定の報告も大きな励みになります。学生たちを少しでも助けられることが彼らの喜びです。

キャリアセンター高槻ミューズキャンパス分室
今岡志保さんの話

「あきらめずにまずは行動を」

古川さんのことはよく覚えています。「故郷・石川でインターンシップ先を探したい」との相談から、意外な進展があったからです。古川さんはある自治体での仕事体験を希望していましたが、「そこでは募集していないので困っている」とのことでした。私は「念のために電話であなたの希望を伝えたら」とアドバイスしました。そうしたらその自治体が「希望するなら受け入れよう」と言ってくれたのです。あきらめずにまずは行動することが大切です

愚痴を聞いたり、叱りつけたり─ガス抜きもしましょう

箕口委員長:お母様の古川雅子様は真衣さんをどのようにサポートされましたか?一人暮らしのご子女を支えるのは大変だったと思います。

古川雅子(親):離れて暮らしていたため、電話で伝えてくれることが真衣の現状を知るすべてでした。就職活動でいろいろなストレスがあったのでしょう、電話口で愚痴をこぼすこともありました。それを聞いてこちらも叱りつけたり(笑)。そんなやりとりが多少はガス抜きになったかもしれませんが、サポートらしいサポートはしていません。
ただ、地元でインターンシップに取り組んでいるときなどは、交通の便があまりよくないこともあり、車で送迎したことはありました。

箕口委員長:心配もおありだったでしょう、どんな思いで交流されましたか。「ここだけの話」を聞かせてください。

 電話口で愚痴も聞きました 古川 雅子 様

古川(親):今振り返れば反省することばかりです。私の希望を押しつけ、真衣には申し訳なく思います。教員や公務員をめざしてほしい、地元に帰ってきてほしい、といったことをストレートに伝えていたので…。そんなことを耳に入れていなかったら彼女はもっと自由に就職活動ができたのではないかと思います。

母親と父親の微妙な違い

箕口委員長:お父様はどのようなお考えでしたか?

古川(親):夫は娘がしたいことをさせてやりたい、というスタンスでした。娘もはっきりと自分の意見を言うので、私と話しているとお互いにエキサイトしてしまうことがあり、夫は間に立ってお互いの気持ちを伝える橋渡しになってくれました。

岡野会長:手は離すけれども目は離さない、という点でお母様はしっかりと保護者の役割を担っていらっしゃると感じました。
この時代、親は子どもの就職にとても熱心です。教育後援会が主催する1年次生の父母・保護者向け就職説明懇談会は今年度もほぼ満席でした。今後も父母・保護者の皆さまにはさらに後援会活動に積極的に取り組んでいただき、各種のイベントで就職についての情報などを得て、ご子女のよき理解者になっていただきたいと思います。

芝井学長:関西大学の教育後援会は国内の大学屈指の規模であり、学生生活や就職などへの支援の水準も非常に高いものです。学生の成長を願う思いは保護者も大学の教職員も同じですから、大学も教育後援会とさらに密に連携し、サポートに力を注いでまいります。学生は暑苦しく感じるかもしれませんが(笑)。

箕口委員長:これから就職活動に挑む後輩や保護者の方々に何かメッセージをいただけますか?

のびのびと楽しんで

古川(子):くり返しますが、就職活動を理由に自分がやりたいことを我慢するのは逆にストレスになるかもしれないので、普段どおりに行動してのびのびと就職活動を楽しめばいいと思います。
また、保護者の方々は真剣に就職活動に取り組む学生をあたたかくサポートしてあげてください。

AIと人間らしさ

古川(親):今は大学の2年次生になるくらいから就職が意識され始めるようですが、就職のために大学生活を過ごすよりも、人間的な成長のために大切な時間を費やすことが大切なように思います。娘は4年間、家を出て寮生活を行ったりインターンシップに取り組んだりするなかで正面から社会と向き合い、「社会人としての自分」を自覚したと思います。そうしたなかで培った思いやりの心は、AI時代に見直される「人間らしさ」にもつながると思います。

理想や希望は押しつけないで

古川(親):また、就職先を探す際は自分の可能性を伸ばしてくれる環境と仕事のやりがいのバランスを考えてほしいです。社会経験豊富な親はいろいろと考えることもあるでしょうが、理想や希望を押しつけずにサポートができればよいと思います。

笹倉所長:おっしゃるとおりで、進路は頭に入れつつも、4年間を大いに楽しむことが大切です。関心のあることに打ち込んだ経験は必ず就職にもつながります。
また、進路実現へのプロセスではいろいろな人の意見を聞いてください。保護者の方々はもちろん、キャリアセンターの職員やキャリアカウンセラーも豊富な経験に裏打ちされた助言を行います。そうした意見を参考に、最後は学生が自分で納得できる進路を決めればよいと思います。

47万人の「大きさ」

芝井学長:関西大学は巨大な大学です。併設校も含めると卒業生のネットワークは47万人以上にもなります。仕事の場面で同じ「関大人」に出会うと、同窓生どうし打ち解けやすいでしょうし、本音のコミュニケーションを楽しめると思います。社会に出て関大の大きさを実感してください。
そのためにも希望する進路を実現できる力を身につけていただきたいですし、また私たちも学生たちをしっかりとサポートしてまいります。

箕口委員長:本日は皆さん本当にありがとうございました。

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