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札幌で教育懇談会を開きました。
──「北海道の災害を考える」特別講演も。
教育後援会 会報編集部

7月7日(日)、北海道札幌市で教育後援会恒例の教育懇談会が開かれ、あわせて「北海道の災害を考える」特別講演(関西大学、教育後援会、校友会共催)や校友会北海道支部総会が開かれました。懇談会では道内各地から多くの保護者が参加。大学側の概要説明のあと自己紹介や個別懇談会も行われ、特別講演には市民のほか北海道大学の専門家ら100人余が参加しました。

教育懇談会

北海道での懇談会は1975年(昭和50年)にスタートしました。この日配付された当時の会報の記事によると、このころから保護者の大きな関心のひとつは就職問題にあったことや、当時の久井忠雄理事長の熱弁とユーモアが保護者の皆さんをひきつけたことがうかがえます。いずれもほとんどの大学が行っていなかったサービスでした。

札幌市教育懇談会

[世界文化遺産の登録に貢献]

今回の懇談会ではまず芝井敬司学長が「今朝の北海道新聞の1面トップは、大阪の百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されることが決まった、というニュースです」と紹介。古墳研究に関西大学の考古学の歴代研究者が大きく寄与したことを説明し、現在の教育・研究分野の最先端を話しました。次いで池内啓三理事長は最近の社会の変化から、大学経営の課題などを説明しました。

池内啓三理事長による挨拶

[YouTubeで知った息子の近況]

この後、出席した保護者らがそれぞれの今後の交流のために自己紹介しました。
旭川市から来た守屋尚子さんは息子の勇雅さん(政策創造学部1年次)について「応援団に入ったと聞いて大丈夫かな、と心配でした。男の子なのでぶっきらぼうだし、彼がどんな風に部活動しているのかわかりませんでした。しかしYouTubeで関大応援団の活動がよく流れていて、息子の映像も目に出来て一安心です」と近況を紹介しました。勇雅さんは道産子では珍しいタイガースファン。父親の影響だそうですが、小さいころから両親に連れられて関西でタイガースの試合を観戦し、京セラドームで現役時代の金本選手とグラウンドで握手したこともあるそうです。関西大学を志望したのは、このことも影響しているそうです。

守屋尚子さん
芝井敬司学長との個人面談

特別講演

特別講演では関西大学社会安全学部の高橋智幸学部長が「各大学での社会安全を考える研究は従来、別々の学部で個別的に研究され、関西大学の本学部で初めて各専門家が一堂に会して研究できるようになりました」と挨拶し、この学部の3人の専門家が話しました。

社会安全学部
高橋智幸たかはしともゆき学部長
「北海道の災害を考える」特別講演

[ハザードマップと免災]

最初に登壇したのは社会安全学部、小山倫史准教授です。テーマは「地盤災害リスクにどう向き合うか」。まず2018年胆振東部地震で発生した深刻な地盤災害を、スライドなどで説明しました。次に北海道で警戒すべき自然災害として、地震、火山、気象災害、地盤災害に言及。山体崩壊による津波で1467人が犠牲となった1741年の渡島大島の大噴火や、2016年8月に相次いで北海道に上陸した3つの台風などについて個別に詳しく述べました。そして過去にどのような災害が発生したのかを知ることは大変重要だと強調。「どこが危ないか」が分かるようになっている市町村のハザードマップの存在や、災害の影響下にある人口割合を低下させる「免災」と呼ばれる考え方を紹介しました。

社会安全学部
小山倫史こやまともふみ准教授

[平時の無駄を許し、非常時に備える]

次いで小澤守教授が「大規模停電と電力供給システムの課題」をテーマに講演しました。2018年9月の北海道胆振東部地震では、電力供給システムが破綻して全道でブラックアウト(全面的な停電)が発生し、一極集中の弊害などがメディアで論じられました。小澤教授は北海道電力の火力発電に依存している点や水力発電のバックアップ体制の問題点などを指摘した上で、非常時を想定して①送電線を支える鉄塔の強靭化②病院などが普段から電源を予備的に確保─などに相当の投資が必要と指摘しました。そのうえで「平時の無駄を許して非常時に備える、という考え方が極めて重要。効率ばかり優先してはダメ」と強調しました。

社会安全学部
小澤 守おざわ まもる教授

[ 「エリートはパニック、住民の皆さんはあきらめ」をどうする? ]

最後に土田昭司教授が「非常事態における住民とのコミュニケーション」について話しました。土田教授はまず東日本大震災の津波が引き金となった東京電力福島第一原子力発電所事故を例に挙げ「多くの人々が発生するはずがないと信じていた放射性物質の大気中放出が起きたが、誰も有効な対処法を知らなかった」と指摘。安全社会心理学の研究から「想定外の過酷な災害の際、エリートは悪あがきしてパニックに陥り、逆に普通の住民の皆さんはあきらめて何もしなくなる可能性があります。つまり逃げようとしなくなるのです」と説明し、「そういう住民の方々にどんな情報をどんな風に提供し避難してもらうかが課題」と締めくくりました。

社会安全学部
土田昭司つちだしょうじ教授

校友会北海道支部総会

支部総会には寺内俊太郎・校友会会長ら約50人が参加しました。自己紹介で「うちの先祖は関西大学の前身の関西法律学校の卒業生で、ずっと関大一家です」と話すOBもあり、全道各地から集まった校友たちが親睦を深めました。

校友会北海道支部総会

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