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熊本で教育懇談会開く「巨大災害を考える」特別講演も
2017年8月 教育後援会会報編集部

昨年4月の熊本地震以降初めて、熊本市での教育懇談会が、8月5日の土曜日、TKPガーデンシティネストホテル熊本で開かれました。
初めに、大学紹介映画「夢、未来を育む─関西大学─」を上映。午前の部「総合懇談会」が午前10時から始まりました。
本部から参加の村岡基会長の開会挨拶に続き、熊本県支部からは中野廣相談役が挨拶しました。また芝井敬司学長から「関西大学の現状と新たな取り組み」と題する講話の後、父母・保護者の多くが関心をもつ就職関連の説明が行われました。
笹倉淳史キャリアセンター所長による関西大学の「就職状況報告」のあと、前田尚さん(社会学部4年次生)による「就職活動体験報告」、野村雅美さん(熊本県UIJターン就職支援センター・UIJターン就職アドバイザー)による熊本県の就職状況等の説明が行われました。午前の部の終盤では、池内啓三理事長が「学校法人関西大学の運営と展望」について話し、淵野稔常任委員による閉会挨拶で締めくくりました。
午後の部「学部別教育懇談会」では、学部ごとに部屋に分かれた後、皆で昼食をとりながらの自己紹介、教員による学部の教育方針等に関する説明、そして個人面談という流れでプログラムが進められました。

震災復興祈念特別講演

午後3時からは、大学ならびに校友会との共催で、「巨大災害を考える─震災復興祈念特別講演─」が、安部誠治社会安全学部長による司会で開催されました。関西大学の社会安全学部は全国の800校近い4年制大学の中で初めて本格的に「社会の安全、安心、防災」を考える学部として7年前に発足しました。そこで蓄積された防災のノウハウを熊本の皆様に活用して頂こうという狙いです。教育後援会が熊本地震の直後の総会で、熊本市出身の学生とその母親の手紙のやり取りを紹介したり、それに感動した後援会長らの発案で、いち早く義援金を御父母らから募って寄付したというご縁もありました。
芝井敬司学長による挨拶の後、河田惠昭社会安全研究センター長による講演「熊本地震の教訓─きたる大震災に備えるために─」、続いて、小山倫史社会安全学部准教授による講演「熊本城築城と修復の歴史─復興に向けた課題─」が行われ、70人を超す参加者が耳を傾けました。

役所・市民の情報共有を

河田惠昭社会安全研究センター長

河田センター長は熊本地震当時の救援物資輸送などに触れ、「ICT(情報通信技術)を生かし役所と市民が情報を共有することが大切で、そのための仕組みづくりが必要です」と話しました。また高度なノウハウや防災技術以外にも、普段から意識しておいたほうがよい「防災の知恵」にも触れました。例えば熊本市などでの国の調査によると、「地震が起こるかもしれない」と意識していた市民は「43人に1人」だったことから、「普段から地震などの自然災害を意識して、備蓄なども考えることが必要」と呼びかけました。
さらに大規模なリゾート地で地震に遭遇した場合を例にとって「携帯電話もつかえなくなり、一緒に行った人とはぐれる場合があります。そんなときに備えて、普段からはぐれた場合の合流場所を2カ所確認しておくことが役立ちます。“はぐれたらここで会いましょう”と決めておくわけです」と説明しました。さらに住民同士の避難時の声かけ、安否確認や避難生活での物資の持ち寄りを進めることの大切さに触れました。

避難所運営のノウハウ

小山倫史社会安全学部准教授

このほか熊本地震の教訓のひとつとして避難所の運営のノウハウに言及しました。「避難所は最終的に避難して来た市民の皆さんが運営し、それを専門ボランテイアがサポートする、というのが最も合理的な方法であることが、東日本大震災の教訓のひとつでしたが、熊本地震ではそれが必ずしもうまく生かされていませんでした」と説明。しかし「その教訓は徐々に各地へ浸透し、九州北部豪雨では自治体の対応が比較的うまくいきました」と話しました。その実例として福岡県庁の動きを指摘。「被災地の自治体に福岡県から直接職員が入って、地元の職員と協力しながら、次はこういう問題が起きるからこういう手を事前に打っておきましょうとアドバイスし、それが上手く機能しました」と説明しました。
一方、小山准教授は地盤工学の専門家で、熊本城について何回も現地調査し、今回の講演会の前日も城の調査を行いました。そうした体験から熊本城の石垣の修復などについて話しました。まず小山氏は地震当時の熊本城について、「4月14日の前震では震度6弱くらいで揺れ、本震では6強くらいだった」と説明。しかも「城は結構縦に揺れたので、これが石積みに非常に悪い影響を及ぼした」と話しました。そして修復作業に欠かせないのが、地震のために生まれた被害を特定させるための地震前の記録だと指摘。ところが「実はそういった記録はさほどなくて、今後はデータをいかに残すかが課題のひとつ」と注意喚起しました。

崩壊していない石垣のケアを

そして地震1年後の変化について「崩壊を免れた石垣にしても2センチほどせり出している場所もあり、注意したほうが良い」と話しました。最後に今後の修復作業で注意しなければならないポイントを2点挙げました。ひとつは崩壊していない石垣のケアで、もうひとつは解体して組みなおす際に「建設当時に使われていなかった現代の技術を取り入れてよいか、などの問題で、参加者は「名城修復」の難しさを実感したようでした。
さらに午後6時からは、校友会熊本県支部総会および懇親会が同会場で開催され、本学校友の他、本学教職員と教育後援会役員も参加したことで、互いに交流が図られ、熊本における「オール関大」の絆をより一層深めることができました。

目立ったメディアの協力

今回の懇談会では、これまでの懇談会と違って、事前準備の一環で地元メデイアの協力が得られました。懇談会まえに教育後援会の会報編集顧問が地元のラジオ番組で講演会を予告したり、地元熊本日日新聞でも予告記事を掲載してもらいました。さらに熊本日日新聞は8月7日の朝刊で講演会の詳細を記事化。また懇談会場で一部を展示した関大図書館の「室原文庫」についても9月1日の朝刊で社会面トップ扱いの詳細な記事を掲載しました。こうしたメデイアの協力の陰には、熊本在住の関西大学の校友たちのバックアップがあったことが見逃せません。
また講演会前に芝井学長らが熊本県内の複数の高校を訪問。校長らに関西大学の現状や卒業生の進路分析などきめ細かい情報を提供し、懇談しました。

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