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授業拝見

アジアNIESの経済発展から、
日本、アジア、世界の「今」を見つめる

経済学部「アジア・太平洋経済論Ⅰ・Ⅱ」
経済学部教授 北波道子

「アジア・太平洋経済論Ⅰ・Ⅱ」では、日本近代化の出発点となった明治維新が起こる1860年代から、第一次世界大戦後に多くの植民地が独立を果たした1960年代、そして現在に至るまでのアジア・太平洋地域の経済成長と近代化の歩みについて学びます。国際関係や中国経済、アジア経済の研究者である北波先生に、日本だけでなく、アジア・太平洋地域の経済と近代化について学ぶ魅力をお聞きしました。

Q.1970年代に急速な工業化と経済成長を果たした「アジアNIES(台湾、韓国、シンガポール、香港)」がアジア・太平洋経済学を学ぶカギになると伺いました。具体的にはどのようなことでしょうか?

この授業では「アジアNIES」のなかでも、特に台湾に注目します。例えば、日本統治時代の台湾では、大規模なダムや水力発電などの建設に日本の技術が用いられ、痩せた土地での農耕が可能となるなど産業に大きな変化をもたらしました。こうした環境や技術が第二次世界大戦後、台湾の経済発展の基礎にもなりました。日本とほぼ同時期に近代化を経験したと言える台湾は、中国や韓国、フィリピンなどにも多くの経済的な影響を与えており、アジア経済の複雑な連鎖を理解するうえでとても重要な存在です。

Q.アジア・太平洋地域の経済と近代化の歴史を学ぶ魅力とは何でしょうか?

日本だけでなくアジア・太平洋地域の各国がどのように関わりあって近代化が進んできたのかを経済的側面だけでなく、社会的、歴史的背景とあわせて理解することで、幅広い視野を培うことができます。また、現代の私たちの身近にあるモノや暮らしの基礎がいつ、どのような形で世の中に普及したのかといった「変化」を理解することができます。
例えば、日本企業の生産工場の拠点は、韓国などから中国、そしてベトナムやインドへと広がっています。さらに、日本企業と技術提携し、精密機器の下請けなどを行っていた台湾の企業が、2016年にシャープを買収したこともアジア経済の「変化」の表れのひとつと言えます。
こうした「変化」は、今後の社会においても必ず表れるものです。過去を学ぶことで、今後の自分自身の人生で起こる社会の「変化」に、柔軟に対応できる基礎力を養ってほしいと思います。

Q.最後に、父母・保護者の皆さまにメッセージをお願いします。

私自身親として、子どもにはできるだけたくさんの「経験」をしてほしいと思っています。本学部には「GoLD(Global Leadership Development)」という短期留学のプログラムがあり、毎年多くの学生が参加しています。教室で学んだ知識をもとに実際に世界を見る体験は、人生において大きな価値のあるものだと思います。

コンピュータの知識を活かして社会や人びとの暮らしをよりよくデザインするために

総合情報学部「インタラクティブアート実習」
総合情報学部教授 松下光範

「インタラクティブアート実習」では、パソコンに接続するセンサなどのメディアを利用したプログラミングの基礎的な知識とスキルを身につけます。インタラクティブとは「対話」「双方向」といった意味で、この授業では人の振る舞いをコンピュータが検知し、反応する作品を作れるようになることをゴールにしています。ビジネスや教育、アートなどあらゆる分野でコンピュータが必要とされる現代において、インタラクティブアートを学ぶ魅力とは何かを松下光範教授にお聞きしました。

Q.授業では具体的にどのようなことに取り組むのでしょうか?

パソコンとLEDや光センサなどの外部入出力装置を連携させ、LEDの光を自在にコントロールするシステムや、光センサで物体との距離を測定するシステムなどの制作に取り組みます。例えば、光センサで距離を測定するシステムでは、物体に反射する光で装置と物体との距離を測ることができるようにプログラミングします。物体が近いほど反射する光は明るく、離れているほど暗くなります。これを距離の数値で表すことはもちろん、パソコンに表示する図形の大きさや画像・イラストの動きなどで表現することも可能です。物体が近いときには図形が大きくなり、遠いときには小さくなるといったように、可視化することでモノと人のコミュニケーションはさらに楽しくなります。

Q.インタラクティブアートの技術は、社会でどのように活かされているのでしょうか?

自動車の「衝突防止システム」は、先ほど出てきました距離測定システムと基本的な考え方は同じです。こちらは光ではなく超音波などを用いて距離を測っています。これは光よりも超音波の方がより遠くのものを測ることに適しているからです。
学んだ技術を社会に活かすうえで大切なのは、基本的な知識やスキルをどのように応用するかという発想力です。技術力とアイデアの両方を鍛えられるのが、文系・理系の枠を超えて学べる総合情報学部の強みだと思います。

Q.最後に、父母・保護者の皆さまにメッセージをお願いします。

学生のなかには、ゲームが好きで総合情報学部に入学したという人もいます。ゲームに熱中する姿を見て心配されているかもしれませんが、私としてはゲームを大いに楽しんでそれを作品制作や学びに活かしてほしいと考えています。
近年ではゲームの視点を活かして社会の問題を解決する「ゲーミフィケーション」が注目されています。例えば、公園にゴミを入れるとユニークな効果音が鳴る仕組みのゴミ箱を設置したことで、人々がゴミを捨てたくなり、公園がきれいになったという実例があります。学生たちの生み出すアイデアが、人びとの行動を変え、社会の問題を解決する力になっていくことを期待しています。

会報『葦』のご紹介