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教育後援会創立70周年記念座談 ─大学と家庭を結んで70年─
2017(平成29)年6月15日(木)校友・父母会館 1階 会議室

芋縄委員長:
本日はお忙しいなかお集まりいただき誠にありがとうございます。今回は「教育後援会創立70周年記念座談会─大学と家庭を結んで70年─」をテーマに、教育後援会のこれまでのあゆみや今後の展望などについて語っていただき、読者である父母・保護者の皆さまに、教育後援会へのご理解を深めていただく機会としたいと考えています。
まずはこのなかで最も長く教育後援会にご尽力いただいた森本常任顧問に、教育後援会のこれまでのあゆみについて教えていただきたいと思います。
芋縄 隆史 教育後援会創立70周年実行委員長

全国の大学に先駆けて誕生

森本常任顧問:
関西大学教育後援会が誕生したのは1947(昭和22)年のことで、日本の教育界にPTAが誕生するよりも前でした。他大学に先駆けて作られた父母・保護者のための組織であり、極めて先見性が高かったと言えるでしょう。私は創立10周年の頃から教育後援会に携わっており、「関西大学に教育後援会があってよかった。」と常々誇りに思っています。
森本 靖一郎 教育後援会常任顧問
芝井学長:
私は関西大学へ着任したのが1984(昭和59)年で、今年34年目を迎えますが、正直なところ最初は大学にPTAのような組織があることに驚きました。しかし、教育後援会の活動を知るにつれてその役割の大きさを認識するようになり、学長となった今では教育後援会は関西大学のたいへん重要な組織の一つであると考え、これからも大切に守り育てていきたいと考えています。
芝井 敬司 学長

親子とのご縁20年余

芋縄:
池内理事長はいかがでしょうか?
池内理事長:
印象深いのはある地方の懇談会でお父さまから、「息子が帰ってくるように説得してください。」とお願いされた時のことです。そのご家庭は農林業を営んでおり、お父さまとしてはご子息に家業を継いでもらいたかったそうです。それならば、と大学に戻ってその学生に会って話を聞いてみると本人はマスコミ関係の仕事に就きたいという夢をどうしても叶えたいとのこと。どちらの言い分もわかりますが、学生本人の意志が強かったので、お父さまに「長い人生の中で色々と気づくことがあるでしょう。本人の意志を尊重して、挑戦させてあげてはいかがでしょうか。」と説得を試みたわけです。するとお父さまからは「そこを何とか。」となるわけです。当時はメールなどの便利な連絡手段はなかったので、お父さまとは主に手紙のやりとりで、当の学生とは直接面談を繰り返していました。結局のところはお父さまが「わが子の人生ですから…」と折れてくださり、夢を叶える形で東京の広告関連の企業に就職していきました。
卒業後も手紙や年賀状のやりとりなどが続いており、20年くらい経ったある時、お父さまから「息子が帰ってくるようです。」という連絡を受けました。本人に電話してみると「親もいい歳なのでそろそろ帰ろうと思います。」とのことで、お父さまは「やっと楽ができます。」と大層喜んでおられました。私はお父さまから託された「息子の説得」を叶えることができなかったのですが、その後20年もやりとりが続いて、親子の物語に深く関わることができた経験は、私にとっても忘れられない思い出として心に刻まれています。
池内 啓三 理事長

二つの約束

芝井:
私たち教員も、父母・保護者の皆さまと交流させていただいたおかげで色々なエピソードがありまして、特に地方に行くと「帰ってきてほしいけど、どうすればいいですか?」というご相談は比較的多いように思います。私もあるお母さまから「こどもが帰ってくるよう、先生から言ってください。」と切にお願いされ、どうしたものかと悩んだ経験があります。やはり最も尊重されるべきは学生の意志だと思いますが、それではお母さまの気が済まないでしょうから、ご子女の学生には二つだけ約束してもらいました。一つはもし地元に帰るとすればどういう選択肢があるのかをきっちり調べた上で判断すること、もう一つはご両親に地元以外で就職したい理由や今後のプランなどをきっちりと説明すること。それですべてがうまくいくわけではありませんが、少なくとも父母・保護者の皆さまとご子女だけの話ではなく、私たち大学の教職員も一緒に三位一体となって、よりよい未来をめざすことができたなら、そこには大きな意味があったのではないかと思っています。

創立70周年の節目を迎えて

芋縄:
村岡会長は創立70周年を迎えた教育後援会にどのような思いを持っておられますか。
村岡会長:
創立70周年の節目に今一度、教育後援会を取り巻く皆さまとの関係と役割を見つめ直し、中期ビジョンの策定を目標に掲げたいと考えています。明快なテーマとしては、例えばシンボルマークやキャッチフレーズの制定など、ソフト面からアプローチしたいと考えています。
村岡 基 教育後援会会長
芋縄:
ちなみに村岡会長は一人の父親として、ご子女とはどのように接しているのですか?
村岡:
長男は化学生命工学部をこの春に卒業し、次男は環境都市工学部で大学院進学をめざして勉強に励んでいます。これまで子育てにおけるPTA活動などはすべて妻に任せきりでしたので申し訳なく感じておりましたが、大学では逆の立場になったことで、少しは恩返しができたのではないかと思っております。妻は妻で、関西大学でもいわゆる「ママ友」を作って楽しそうにしております(笑)。芋縄委員長はどうですか?
芋縄:
私自身、学生時代はアメリカンフットボール部でずっとスポーツに明け暮れていました。車の中ではカセットを入れると関大の応援歌が流れ、家では逍遙歌が流れているといった感じでした(笑)。たいへん失礼ながら教育後援会という組織のことはよく知りませんでした。しかし、わが子が中学、高校、大学と関西大学で学ばせていただくなかで、私も教育後援会の活動に携わるようになって、2015(平成27)年度には会長を務めさせていただきました。その際に強く感じたのは、父母・保護者の皆さまの子どもへの熱い思いです。教育後援会の役員や委員会の皆さまも、ボランティアにもかかわらず心を砕いてくださるのは、こういう活動を積極的に実施している関西大学への感謝の気持ちの表れではないかと思っています。

年間1万人超の参加

芋縄:
池内理事長、教育後援会70年の歴史のなかで、どのような功績があったのかを教えていただけますか?
池内:
目に見える成果はたくさんありますが、私が最も感謝しているのは、教職員を育ててくださったことだと思います。父母・保護者の皆さまの思いを知ることが、学生を指導したり、支援したりするうえでたいへん役に立つことを意識させてくれたのです。
芝井:
私たち教員は普段、学問を介して学生と向き合っていますが、父母・保護者の皆さまとお話することで、学生の背後にあるストーリーが見えてきます。学生と一歩踏み込んだ関係を築くことができるので、そこから生まれる教育効果は計り知れないものがあると思います。
森本:
教育後援会は全国の大学に先駆けて地方教育懇談会や父母・保護者向けの就職関係の行事を開催しましたが、その時々における父母・保護者の皆さまの一番の関心事に、機動性を発揮して応えることができるところに魅力があると思います。
皆さまが本日お集まりいただいているこの「校友・父母会館」は、現在、教育後援会の本部事務局ですが、以前は「教育会館」という建物で、恐らくは日本の大学で初めての父母・保護者のための会館でした。それから課外活動の合宿所として「教育会館別館」をつくったのも教育後援会の事業の一つです。その後も、学生のセミナーハウスや福利厚生施設、体育施設など様ざまな施設を建設して大学に寄贈してきた実績があります。
今はインターネットで様ざまな情報が手に入る時代にもかかわらず、年間1万人を超える父母・保護者の皆さまがわざわざご足労いただき、膝と膝を突き合わせて話し合う文化を生み出したことは、教育後援会の大きな功績であると言えます。

未来に向かって

森本:
創立70周年の記念式典は、わが国のフィギュアスケートブームの先駆けとなったアイスアリーナで、日本スケート連盟の橋本聖子会長らをゲストにお招きして行います。宮原知子さんや本田真凜さんが華麗な演技を披露し、来年の冬季オリンピックへの期待も高まることでしょう。当日の様子に関しましては本誌で詳しく紹介しますのでご覧ください。
芋縄:
さて、教育後援会のこれからについて、お一人ずつお聞かせ願えますでしょうか。
池内:
教育後援会を通じて、父母・保護者の皆さまも子どもとの関わり方を常に考え、学んでいくことが大切なのだと思います。どうかこれからもよろしくお願いします。
芝井:
関西大学は父母・保護者の皆さまを最も身近で大切なステークホルダー(利害関係者)だと考え、良好な関係を築き上げてきました。この関係をぜひ継続してほしいと思います。
村岡:
今の時代に大学に通う意味を考えた時に、私は「人と人との絆を作る」ということが大きな意味をもつのではないかと考えています。現役の在学生同士はもちろん、卒業した校友同士、あるいは父母・保護者の皆さま同士の絆を深めるために、教育後援会でも様ざまな議論を活性化させていきたいと思います。
森本:
教育後援会は長い歴史のなかで、父母・保護者の皆さまと学生と大学が離れ離れになってしまわないよう仲介的な役割を果たしてきたと思います。それは今後も変わることのない重要な役割の一つですが、先ほど村岡会長がおっしゃったように、「人と人との絆を作る」ことも大切です。長年、教育後援会に携わってきたなかで私が感じるのは、関西大学のことを最も愛しているのは父母・保護者の皆さまなのではないかということです。ただそれはご子女が在学中の4年間に限られたことなので、関西大学と縁をもった役員以外の父母・保護者の皆さまも継続的につながっていけるような新しい組織を作れないかと考えています。それが創立70周年以降の教育後援会に課せられた宿題の一つだと思っています。
芋縄:
皆さまありがとうございます。本日は有意義な意見交換ができたことに感謝します。これからもますます関西大学を盛り上げていくことができるよう、新しい教育後援会のあり方を皆さまと一緒に模索していきたいと思います。本日は、誠にありがとうございました。

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