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学長・会長 特別対談
関西大学のさらなる飛躍をめざして
─ 変革に向けたダイヴァシティ(多様性)の確保 ─
対談
関西大学教育後援会 会長 山本和良
関西大学 学長 芝井敬司

新たに学長に就任されて

山本和良会長:
本日はお忙しいところ、会報『葦』の対談企画に足をお運びくださり、誠にありがとうございます。今回は芝井学長と対談させていただき、この春に入学された新入生と会報『葦』の読者であります父母・保護者の皆さまに向けて、これからの関西大学の姿をお伝えしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
芝井敬司学長:
こちらこそよろしくお願いいたします。新入生の皆さま、ならびにご父母・保護者の皆さま、ご入学おめでとうございます。まずはお祝い申しあげますとともに、心より歓迎いたします。
山本:
芝井先生は昨年10月1日に関西大学の第42代学長に就任され、その後、間もなく11月4日には、本学創立130周年記念式典の日を迎えられました。まずは記念式典を終えられて、どのようなご感想をお持ちでしょうか。
芝井:
長き歴史と伝統をもつ関西大学の学長に就任し、その重責に身の引き締まる思いを感じていたので、130周年記念式典で登壇する時はたいへん緊張しました。
しかし、一方でたくさんの方にお集まりいただいた中で130周年の節目を迎えることができたことに大きな喜びを感じています。連綿と受け継がれてきた伝統をただ引き継ぐだけではなく、新しい未来に進むという決意を新たにできた素晴らしい機会になりました。
芝井敬司 学長山本和良 会長
[2017(平成29)年2月16日(木)関西大学会館 来賓室にて]

大学教育はどうあるべきか

山本:
今回の『葦』は春号ということで新入生とその父母・保護者の皆さまも多くご覧になっていると思います。関西大学に大きな期待を抱いてご入学されたことかと思いますが、大学で何ができるのか、不安に感じていらっしゃる方もおられるかと思います。芝井先生、大学教育の役割とはどんなところにあるのでしょうか。
芝井:
学生は社会に出るまでの大切な時間を大学で過ごすことになります。その過程において、一生役に立つ何かを身につける、それも「関西大学だからこそ身につけることができた。」と思ってもらえるような教育を施すことが大切だと私は考えます。
山本:
そのためには教育の質の確保ということが大切になってくると思います。
私の好きな外国の格言で「凡庸な教師はただしゃべる。いい教師は上手に説明する。優れた教師は自らやってみせる。そして、偉大な教師は生徒の心に火をつける。」というものがあります。
私も一人の保護者として、関西大学で学ぶ学生にも、そんな先生との出会いを作ってほしいと期待しています。
芝井:
ありがとうございます。大学は若者に対する教育の責務を負っているのは当然のことですが、同時に学術研究という面ではそのレベルを高く保つことが求められていると思います。個人においても、組織においても、教育と研究のバランスをとりながら、両面の質を磨いていくことが大切だと私は考えています。
山本:
なるほど。ただ教えてもらうだけではなく、学生が先生の研究する姿に憧れて学ぶ意欲を高めるような、そんな関係を築いてほしいということですね。
芝井:
その通りです。そういう主体的なアプローチを育むことも大学教育においては必要だと考えています。

新しい未来に向けて

山本:
関西大学は1886(明治19)年、関西法律学校としてその歩みを始めました。長い歴史を受け継ぎ、「この伝統を、超える未来を。」というキャッチフレーズのもと、創立130周年に向けて、様ざまな革新的な取り組みを行ってきました。これからは20年先の創立150周年、さらにはその先の未来を見据えてその歩みを進めていくことになります。
そこで未来に向けて、芝井先生がどのような姿勢で臨まれるのかお聞きしたいと思います。
芝井:
今、山本会長がおっしゃった通り、関西大学には130年の長きにわたって受け継がれてきた素晴らしい伝統があります。
また、13学部13大学院研究科3専門職大学院をもつ日本屈指の私立大学として、変化する時代の中で常に新しい大学像を発信していかなければならないという社会的使命を背負っています。
関西大学の将来像を考えるうえでは、受け継ぐべきものはしっかりと守り、変わるべきところは革新的に変えていく、そしてその区別をつけることが大切だと考えています。これだけの歴史ある大きな組織を変えていくことは簡単なことではありませんが、変化を恐れず前向きに挑戦していく姿勢は大切にしていきたいと考えています。
関西大学 学長 芝井敬司

関西大学の進むべき未来とは

山本:
伝統を大切にしながら、変化を恐れずに挑戦するという姿勢は素晴らしいと思います。具体的にはどのようにお考えでしょうか。
芝井:
長期的な展望を見据えた時に、一つのキーワードとなるのが「ダイヴァシティ(多様性)の確保」だと私は考えています。
例えば、学生が多様であるということです。昔は大学生というと男性が圧倒的に多かったのですが、現在の関西大学の男女比はおよそ6対4で、女性の大学進出が広がっていると言えます。
しかし一方で、年齢層を見ますと、20歳前後の学生がほとんどで、もっと多くの社会人やシニアの方が大学で学べる機会を確保するなど、間口を広げていく必要性を強く感じています。
また、国籍という面においても、関西大学にはたくさんの外国人の教員職員が務めていますが、本当に世界で通用する大学をめざすのであれば、もっとその割合を増やさなければなりません。
こうした変化は今すぐにできることではありませんが、長期的な展望を考えるうえでは、想定しておかなければならないことだと考えています。
山本:
真の国際人をめざすうえで、相手の文化を理解することが大切だと言われていますが、日本の大学では学生が自らの意思で世界に飛び出さない限り、グローバルな経験をすることは難しいと思います。 芝井先生は多様性を確保することで、そういう状況を変えていきたいとお考えなのですね。
芝井:
その通りです。時代の課題に対応するためには必要不可欠な変革だと考えています。

最近の若者との付き合い方

山本:
ところで、私たちの時代と違って、今の若者は片時も離さずスマートフォンを触っていて、人と人とのコミュニケーションのあり方がまったく変わってきたように思います。
勉強においてもスマートフォンで検索すれば、大抵のことは調べられるので、利便性という面では非常に発達したと思うのですが、親の立場としては、果たして若い頃からこんな楽を覚えて大丈夫なのかと心配になる面もあります。
芝井先生は最近の若者に対してどのような印象をおもちですか?
芝井:
お気持ちはよくわかります。ただ今の状況が若者たちの責任かというとそうではなく、私たち大人が築いてきた社会や、親として、教育者として子どもと接してきた結果であると言えるのではないでしょうか。
私たちが伝えなければいけないのは「そのままではいけない。」ということです。スマートフォンで調べ物をするのが悪いわけではありませんが、それは表面的なことで本当の知識にはなりません。本を読んで活字と格闘する経験をしたり、目に見えるものではなくその裏側にあるものについて深く考えたり、一歩踏み込む機会を作らなければならないということを若者に伝える責任が私たちにはあると思います。
そして、学生たちは自分を成長させるために、自分に何を課すのかを考えてほしいですね。特に私は本を読む、文章を書くという二つのことを強く推奨していて、これを自らに課すことができたら、生涯役立つ普遍的な素養を身につけることができます。
山本:
なるほど。私たちの世代からするとスマートフォンをはじめとする電子機器は、SF小説やアニメの世界に出てくるような空想上の産物でしたので少なからず戸惑っていますが、大切なのはデジタルの恩恵を受けつつ、自分を鍛えるアナログな手法も取り入れるバランス感覚なのですね。
教育後援会 会長 山本和良

父母・保護者の皆さまとの特別なつながり

山本:
教育後援会では大学に多大なご支援をしていただきながら、「総会・学部別教育懇談会」、「地方教育懇談会」、「就職説明懇談会」など、関西大学と父母・保護者の皆さまとをつなぐ様ざまな取り組みを行っています。
芝井先生にもすでにいくつかのイベントに参加していただきましたが、教育後援会についてどのように感じておられますか?
芝井:
関西大学は古くから父母・保護者の皆さまとの関わりを大切にしていますが、私が関西大学に赴任した若かりし頃は、他大学ではほとんど見たことのない取り組みでしたので大変驚きました。正直なところ大学生に対して過保護ではないかと最初は疑問を抱いたものです。
しかし、その考えはすぐ改められ、素晴らしい取り組みだと考えるようになりました。一人の教員として父母・保護者の思いを聞かせていただいたおかげで、自分が教育者として学生にどう接するべきかを考えてみることができました。
一人ひとりの父母・保護者の皆さまの熱い思いが教育後援会という組織となって機能し、大学を温かく支えていただいています。大学としてもそのお気持ちに応える義務があります。そういう関係性が今日の関西大学の見事な繁栄を支えてきたのではないでしょうか。
山本:
私たち父母・保護者にとっては、大学に私たちの声を届けるだけではなく、子どもの様子を先生がたから教えていただける素晴らしい機会となっています。
大学と父母・保護者の皆さまが密接につながる関西大学ならではの取り組みを、これからもぜひ発展させていきたいと思います。
芝井先生、本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

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