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関西大学東京センター、東京駅に隣接、年間1万人が利用
教育後援会 会報編集部

東京駅に隣接したタワービルに関西大学東京センターはあります。関西大学の首都圏での活動拠点で、年間利用者は1万人。各種証明書の発行などの事務手続き、路線案内や宿泊施設の紹介のほか、学生の就活支援、深夜バスで上京した学生のための仮眠室(男女別)など、きめ細かいサービスを行っています。さらに卒業生のための各種研究会などを展開。こうしたネットワークを生かして起業の際に東京の先輩に相談しながら成功しつつある卒業生も出てきました。東京駅を見下ろす高層ビルの9階から発信される「関大の魅力」とその舞台裏をのぞきます。

関西大学の東京事務所は平成9年、東京銀座に開設されました。開設に尽力した当時の常務理事、森本靖一郎氏(現関西大学教育後援会常任顧問)は「ヒッチコックの映画に出てきそうな蛇腹式エレベータのあるレトロなビルでした」と懐かしがります。事務所はその後、「東京センター」と改称されて八重洲南に移転し、平成19年に現在の東京駅日本橋口に直結したサピアタワーに引越しました。

「疲れをとりたい」

サピアタワーに開設された当初の東京センターを利用する学生たち

このビルは様々な企業や団体がオフィスを構えるほか、上層階にはホテルが入った34階建てで、9階に関西大学東京センターがあります。このタワーに入居したのは関大が最初で、そのあと約10校が入居しました。大小の会議室や教室のほか、男女別に各2人が仮眠できる部屋や更衣室まで完備しています。「就活の合間に、疲れを取るため薄暗い部屋で足を伸ばして寝そべり、ボーッとしていたい」という学生の生の声を生かした配慮です。
また東日本大震災では交通の寸断で足止めを食った関大生のために、教室に災害用の毛布などを用意し、終日開放しました。職員も親身になって対応するので、学生にも好評です。
政策創造学部4年次生の小林春奈さんは「就活ルックでセンターに着くと〝お帰りなさい〟、面接に出かける時は〝がんばって行ってらっしゃい〟と声をかけてくれ、まるで自分の家のようです。友人の中には勝手のわからない深夜バスのチケットの予約まで職員に手伝ってもらった人もいます」と話しています。

汗と涙の落書き帳に学長もメモ

こうした声を集めた「落書き帳」がセンターにあります。小さな大学ノート3冊に、手書きでびっしり書き込まれています。例えば…。

先輩におしえてもらって初利用しました。東京駅のデカさと関大東京センターのアットホーム感には驚きました。(工学部3年次生)

今日で2回目です。そして、たったいま就活が終わりました。長かった。マジで。2月からはホントがんばった。 (工学部)

意識がもうろうとしたなか、東京センターで仮眠させていただき本当に助かりました。春雨スープもおいしかったです(差し入れしてくださった卒業生の方、有難うございました!)

また、意外な人物も寄稿しています。

久しぶりに参りました。利用する学生が増えうれしい限りです。(中略)就職戦線の学生諸君のガンバリを祈っています! (学長 河田悌一)

(注) 教員でこのノートに書いたのは河田氏(現在、日本私立学校振興・共済事業団理事長)だけですが、氏は学長在職時に2回、このノートに寄稿しています。

にぎわう文化財講演会

創立130周年記念シンポジウム
「サイバーセキュリティの最新動向と対策」
風景

東京センターは卒業生や一般の社会人にも開かれています。学び直しのための各種講座やセミナー、シンポジウムがそれで、例えば「飛鳥の歴史と文化遺産」を総合的に学ぶ講座は2009年から始まりました。年間3回でセンターの200人収容の教室での講座では申込者が400人、有楽町の750人の別のホールで開く時には1500人が申し込むほどの盛況です。
森本氏が常務理事の頃、メディアと共催で、有楽町で文化財の講演会を開いた時も数百人が詰めかけました。講師は考古学の泰斗、故網干善教先生。そのうち高校生ら50人を飛鳥のセミナーハウスに招き、石舞台など現地の文化財を見学するツアーまで行って好評でした。
今回の取材で訪ねた11月中旬も、社会安全学部のシンポジウムが開かれ、参加した学部の3年次生、西和基君や西村理沙さんは「自分の研究を説明するのは難しかったですが、パネリストの筑波大副学長、稲垣敏之教授の話はとても印情的でした」と振り返っています。
竹内洋センター長は「現役学生の学びや就活に疲れた時の充電の場にもなります。頻繫に出入りしている卒業生らの絆も強まり、私も関東の校友たちとずいぶん知り合いました。私が全国紙に寄稿しているコラムを楽しみにしている校友もいます」と話しています。
東京センターには関西大学東京経済人倶楽部の事務局もあります。倶楽部は2004年に発足しました。経済界等で活躍する首都圏在住の校友の団体で、当時理事長だった森本氏の声がかりで創設され、氏の要請を受けたパソナグループの代表、南部靖之氏が快諾して会長に就任しました。
最近では東京大手町の日経ホールで7月15日、関西大学との共催で、創立130周年記念シンポジウム「サイバーセキュリティの最新動向と対策」を開催しました。

起業に成功

倶楽部には現在約160人の卒業生が参加していますが、特に若手卒業生向けの活動が活発です。その中心メンバーの一人が株式会社ノエックス代表取締役社長、山田祐輝さん(2010年電子システム工学科卒)で、東京の関大人脈をたどりながら起業に成功しつつあるエネルギッシュな青年です。
山田さんは卒業後、電子部品の会社に就職しましたが、昨年2月に退社、6月にセンサーを活用したIoT機器のメーカー「ノエックス社」(茨城県つくば市)を創業しました。同社の強味は二つあります。一つは技術的優位性。もうひとつはドロくさい飛び込み営業です。

魔法のゴミ箱

関西大学東京経済人俱楽部の中心メンバーの一人、
山田祐輝さん

「ノエックス社」の仕事は多岐にわたりますが、例えば公共施設用の特殊なゴミ箱です。ゴミは中身を取り出したあとの空箱やグシャグシャの包装紙などが多いので、これを自動的にゴミ箱の中で破砕すればゴミは7分の1から8分の1に減量できます。おまけにどれだけゴミがたまっているかを示すセンサーをつけることで、ゴミ回収の手間が減るというわけです。ある施設で実験したら、ゴミ回収に必要な人件費が6分の1に減ったといいますから「魔法のゴミ箱」です。
また遠隔地の高齢者を見守る新たな支援システムの開発にも乗り出しています。介護施設を展開する企業などとの共同事業で、東京電機大学も連携します。この事業は経済産業省の商業・サービス競争力強化連携支援事業に採択され、2年間で上限6000万円の経費助成が受けられるそうです。

卒業生の絆

山田さんが有難く感じているのは、こうした新事業の創設時に、関西大学東京経済人倶楽部で知り合った卒業生たちとの絆と支援です。「魔法のゴミ箱」では、商業施設のプランニングや商品開発などを手がける企業の社長から「事業性の有無」について、詳細で手厳しい指導を受け、ずいぶん参考になったそうです。また別の校友からはゴミを破砕するシュレッダーの刃についてアドバイスをもらいました。
「ノエックス社」の業績は順調そうです。昨年度は売り上げ1000万円だったのですが、今年度は約1億円の見込みといいます。正社員は社長以下4人ですが、バイトも筑波大学の優秀な学生を時給3千円で5人雇い、彼らは夏休みにはフルに働いて1カ月50万円の収入があるそうですから半端ではありません。
山田さんは「これからは私も、できる範囲で後輩へ様々な支援をする番です」と話し、東京経済人倶楽部の創設に関わった森本氏は「校友たちの絆の強さと熱い思いには驚かされます。ここに関西大学の強さの秘密があります」と話しています。

東京センターでの「新社会人歓迎会」の様子

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