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関西大学が取り組むグローバルリーダー育成に向けた体制
山本英一(やまもとえいいち)(学長補佐・外国語学部教授・本会会報編集顧問)

社会のグローバル化・国際化は、大学教育を受ける若者に求められるスタンダードも国際水準であることを意味する。語学(英語)力の修得は大前提であり、そのうえに培われた教養、判断力、リーダーシップといった、いわば「人間力」が必須となる。大学も卓越した研究力維持には、世界規模で優秀な学生を集められる魅力ある教育を用意しなければならない。関西大学が提案する「トリプル・アイ構想*」は、こういった社会の要請にこたえ、10年後を見据えたキャンパスの国際化プランである。
*Intercultural Immersion Initiatives(異文化イマージョン構想:Iが3つでトリプル・アイと略す)

イマージョンとは、言語や文化に「どっぷり浸かる」という意味。学内外で、多様な言語・文化に浸かることで、社会が求める「人間力」を養おうというものである。そのために、教育・研究の両面で、海外との往来を活性化する。海外協定大学を増やし、受入・派遣留学生の数も増大させる。長期に限らず、1週間の超短期でもよい。何らかの異文化体験が、学生一人ひとりの「人間力」を高めるという考えが背景にある。キャンパス内外で、他国の若者の、旺盛な知的好奇心や多様な価値観・世界観を垣間みるだけでも、若者たちには価値ある刺激となるのである。

受入・派遣留学生が増えることは、英語による授業が増えることも意味する。多様な言語も意識しつつ、まずは共通言語(Lingua Franca)としての英語による意思伝達が出発点となる。授業をすべて英語で行なうKUGF(Kansai University Global Frontier)科目が人文、ビジネス、科学など6つの分野で始まり、日本人学生と留学生が共に学んでいる。また、インターネットで海外の大学と教室を結ぶことで、他国の学生と共に英語を使って課題に取組むCollaborative Online International Learning(COIL)も始まっている。さらに、授業外で語学力の向上を目指したり、留学生との交流を通じて異文化理解を深めたりしたい学生のために、Mi-Room(マルチリンガル・イマージョン・ルーム)も用意し、外国人教員や留学アドバイザーを配して、学生の勉学を支援する体制もできた。

英語の正課授業も、習熟度別クラスをはじめ斬新な試みで充実が図られている。外国人講師による集中コミュニケーション講座もある。別途、4人の学生を1人の教師が教えるTutorial Englishもある。
また、留学のメニューも充実している。本学への学費で先方の学費が相殺され、さらに奨学金が給付される交換派遣留学の制度、一定金額の納入で在学のまま海外で学べる認定留学の制度、短期間で語学を学ぶ海外語学研修の制度等々。関西大学には、「人間力」を磨く仕組としてのイマージョン環境が揃っている。あとは一人ひとりの学生が、その門戸を叩くか否かである。「求めよ、さらば与えられん。」新入生、在学生の積極的なアプローチが期待される。

COILの授業風景
Mi-Room

VOICE 留学プログラムと先輩の経験談
本学の留学プログラムを利用するには、早い時期から周到な準備を進めたい。これまで留学を体験し、社会で活躍している、あるいは在学している先輩からのメッセージを紹介しよう。

交換派遣留学
(卒業生)からのメッセージ

高校生の時、ボストンへの短期留学の経験があり、関西大学にも同じマサチューセッツ州に協定校があることを知り、入学当初から交換留学を意識していました。留学のために、国際交流サークルで留学生と交流し、生きた英語の基礎を固め、欧米流マナーも身につけました。留学に必要なTOEFLの勉強も、留学生の一人がアシストしてくれました。
留学先のブリッジウォーター州立大学では、政治学・国際政治を主に受講。相当な予習・復習が必要で、睡眠時間も4-5時間で必死に勉強しました。やがてチューター制度も利用して全科目でAを取れたとき、苦労が報われた思いがしました。
アメリカ人の友人たちとホームシェアをし、他国からの留学生とも交流を深めることができ、彼らとの絆はいまも強く、一生の宝物だと感じています。
留学で得た語学力と経験のおかげで、東京海上日動でのインターンを経て楽天に入社。現在は、より国際的な経験を積むために楽天を離れシンガポールで働いています。そして、この4月から、Tetra Pak Asia Pte Ltdに勤務します。
語学力自体がすべてではありませんが、重要な武器になり得ると私は考えています。特に、経験少ない若い世代は、きちんとした語学力がなければ、国際舞台では声を聞いてもらえません。実力主義のシンガポールでの仕事を通じて、「正しい発音」、「学びの中身」、「国際的な立ち振る舞い方」の重要性を実感する毎日です。
関西大学には学生のやる気と努力さえあれば、挑戦をさせてくれる環境があります。誇りに思える学生生活を送っていただきたいと思います。

認定留学
(卒業生)からのメッセージ

私が認定留学に参加したのは、出願時に語学力が高くなくても利用でき、かつ留学すべてを自分自身が主体的に行うプログラムだと感じたからです。やる気がある学生にとっては良い制度です。それゆえ留学の準備も大切になります。留学先の選定では、入念な下調べはもちろんのこと、現地で何をして、留学後それを何につなげたいか、具体的にイメージして目標を立てる必要があります。
私はイギリス・マンチェスター大学に留学しました。現地のクラスには、会社員など学生以外の人たちもたくさんいて、彼らから「少しでも知識を自分のモノにしたい」という強い意思を肌で感じました。生活や仕事を賭けて勉学に勤しむ人々と交流できたことで、勉学に対する意識も大きく変わりました。私はJTB九州に就職しましたが、この教訓は重要でした。日々の生活・仕事の中で、少しでも多くのことを知ろうと努力をする習慣がしっかりと身についたのです。
留学では、100人いれば100通りの経験があり、それぞれが大きく成長できると感じています。そこには、成功も失敗もありません。自ら積極的に挑戦して、「自分だけの留学」を目指して欲しいと思います。

海外語学研修
(現役生)からのメッセージ

私は3歳の頃から家業である能楽の道に進んでいました。10歳の時、子役として初めて海外公演に参加して以来、能楽を正確に発信するためには、通訳を通して話すより自分自身で話すことが必要であると思っていました。そのために自分の語学力を試すきっかけになればと思い海外語学研修プログラムに参加しました。
留学先のサウスカロライナ大学には様ざまなプログラムが用意されていて、一番印象に残ったのは小学校で日本の文化について教えるプログラムでした。私はその際着物を着て行き、児童に着物を説明したりすることで、文化を伝えるトレーニングになりました。留学で得られたことは、自分の言葉で自分の仕事を伝える自信がついたことです。例えば香港から来られた方へ能についてのレクチャーをすべて英語で行なうことができるようになりました。留学をすることは人生において大切な財産になると思います。
近年では国も力を入れていて様ざまな助成をしてくれたりしますので、留学へのハードルは下がっています。まずは一歩踏み出してみてください。

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