研究活動

住吉・堺の歴史景観の復元

研究代表者 黒田 一充 文学部・教授
研究概要 住吉・堺の歴史景観の復元本研究は、以下5項目を研究の目的とする。

①住吉・堺の景観の変遷に関する研究
すでに平成27年に住吉大社境内と宿院頓宮の石灯籠の調査を終えており、今後は狛犬や石碑など石造物の銘文を調査する予定で、地図および報告書の形でまとめる予定である。また、住吉神宮寺や堺・開口の大寺など神宮寺について調査する。あわせて、名所としての住吉社を考えるために、近世の名所図会、新出の『浪花名所図屛風』などの図版の分析をおこなう。

②住吉・堺の文学遺跡に関する研究
住吉・堺を舞台にした文学作品、住吉を訪れた文人たちの記録類の調査をおこない、ゆかりの地が特定できる場合は地図上に落として石碑などの写真を入れた文学遺跡地図を作成、公開する。

③住吉大社と周辺の近代化に関する研究
明治以降の住吉大社の建物について、新しく入手した明治28年の建築図の翻刻と公開を進めるとともに、大阪最古の公園として整備された住吉公園について研究する。

④住吉祭とコミュニティーに関する研究
住吉・堺の住民たちが参加する8月の住吉祭を中心に、住民の祭りに対する意識の問題など、コミュニティーの問題を研究する。

⑤鳥瞰シミュレーションによる可視化
境内の変遷や、文学遺跡を地図上に重ね合わせていく鳥瞰シミュレーションをおこない、地図上の点をクリックすると拡大写真が見えるデジタルコンテンツを作成する。
研究分担者 乾  善彦 文学部・教授
岡 絵理子 環境都市工学部・教授
橋寺 知子 環境都市工学部・准教授
井浦  崇 総合情報学部・准教授
櫻木  潤 高野山大学・助教
研究期間 1年間

研究成果概要

本研究では住吉大社とその周辺地区、および住吉大社の夏祭りの神輿渡御先である堺市・宿院頓宮の周辺を対象に、人びとと景観の歴史的な変遷を課題に、研究実施計画にもとづいて推進した。その研究成果は、以下の通りである。

1.住吉・堺の景観変遷の研究
住吉大社の境内に林立する石燈籠群の悉皆調査を行い、写真撮影と高さの計測、銘文の調査を行った。一般の方へ研究成果を紹介する手段としては、石燈籠マップを制作するとともに、ワークショップを行った。また、住吉は歌枕の地として、文人たちが集まった土地であり、文学碑なども多く建てられている。それらの調査とマップの作成を行った。
住吉大社の夏祭りは、堺へ神輿が渡御するものだが、この祭りを支える人びとの様子を探る材料として、大和川の付け替えの問題に焦点を当てた。大坂市中で祭りの見世物として制作されたつくりものについても考察した。
さらに、堺の地場産業については、鉄砲鍛冶屋敷の古文書調査を行い、新しい知見を得た。
住吉大社の景観が大きく変化したのは、明治維新後の廃仏毀釈による神宮寺の破却である。
神宮寺の建築についての研究とともに廃仏毀釈が落ち着いて社殿が改修された時期にあたる明治28年の建築図面の翻刻作業を行った。この資料は、住吉大社にも残っていないものである。

石燈籠MAPはこちら

パノラマコンテンツはこちら

  • 住吉大社石燈籠マップ


2.デジタルコンテンツの作成
これらの研究成果の一部は、冊子体の報告書で紹介したが、それ以外に一般の方にも地図上でその変遷を表現するデジタルコンテンツを井浦が制作した。
こちらは住吉だけではなく、広く江戸時代後期の大坂の名所を描いた「浪速名所図屏風」を使い、屏風の画面上に描かれた寺社などの名所を、『摂津名所図会』の場面と現在の様子の写真に切り替えて、歴史的な変遷がわかるように工夫した。

  • 浪花名所図屛風コンテンツ1
    浪花名所図屛風コンテンツ1
  • 浪花名所図屛風コンテンツ2
    浪花名所図屛風コンテンツ2

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