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教員が語る専門領域の魅力 vol.19

郭 楊 准教授

論理的に言語の諸問題を扱おう

郭 楊 准教授

Profile

専門は現代中国語の統語論と意味論。中国語にある面白い言語現象を一般言語学の理論、とくに生成文法に基づく考え方に落として分析する。

面白い言語現象とは?

 我々は日々母語を何気なく使っており、様々な人と様々な話題について話を交わしているでしょう。ただ、その何気なくしゃべっている言葉のなかに、追及したら意外とネイティブの人でも答えられないような現象はたくさんあるのです。たとえば、私の母語である中国語では“小圆桌”(「小さい丸いテーブル」)とは言えますが、“圆小桌”(「丸い小さいテーブル」)とは言えません。ネイティブにとっては、これは当たり前のことであり、なぜ?と言われても答えるまでもないと言われるでしょうが、言語学の立場から見れば、これは当たり前のことではありません。だって、“小”「小さい」も“圆”「丸い」も“桌”「テーブル」」の素性としての質が同じなのに、なぜ前者の語順しか許されないのか、全く自明ではありませんね。このような「面白い現象」に出会うたびに、わくわくして、脳裏からなかなか消えません。

面白い現象を見つけてから何をする?

 上のような「面白い現象」(すぐには解けない問題)にであって、暫くしてからもスッキリとした答えが出なかったら、“小圆桌”(「小さい丸いテーブル」)と似たような表現をなるべくたくさん考えておいてから、それぞれの言えるとき、言えないときの規則性を見出します。この手法はたびたび論理学では「帰納法」とも呼ばれたりします。この作業をするときのコツは、偏りなく、満遍なく例を考えることです。たとえば、“小圆桌”における形容詞はモノの形状を語る形容詞になっていますが、そこを心理形容詞(「危ない」や「素晴らしい」など)に置き換えたら、どのような語順の規制がかかってくるだとか、“小圆桌”における名詞の“桌”は一音節(漢字一文字)なのですが、二音節の名詞に置き換えたらどうなるかとか、「言葉の実験」みたいものをするのです。

なんとか答えを見つけたあとは?

 以上の帰納法による作業を経て、様々なケースを見てからは、さあ、いざ自分なりの答えを出す、つまりこの現象に基づく仮定をする番です。“小圆桌”とは言えるけれども、“圆小桌”とは言えない理由については、私は○○だと思いますと結論付けるのです。ただ、結論を出せたら終わりではありません。自分の答えが正しいものであるか、ちゃんと演算していかないといけません。この場合は、自分の持っている母語における「常識」を全部捨て、純粋に数学の式に値を代入し、「=」の右に出てくる結果がokか、×かを見てみるだけです。×な結果、つまり自分の仮定によって生み出されてもよさそうだけど、実際言わないようなものが出てきた場合は、立ち止まって、自分の答え(仮定)のところに戻って、やり直さなければいけません。このやり方は、論理学では「演繹法」と呼ばれたりします。

学生のみなさんへのメッセージ

 失敗なんてありません!人生のすべてが経験にしかすぎない。