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教員が語る専門領域の魅力 vol.17

名部井 敏代 教授

「教室」は対話があるから面白い

名部井 敏代教授

Profile 専門は英語教育学、第二言語習得研究。教室での学習活動中に起こることばのやりとり(談話・対話)が、外国語(第二言語)学習に及ぼす影響や効果を考察・研究している。

「学校の教室で外国語を学ぶ」ということ

 私が「英語」に出会ったのは、中学校1年生のときでした。中学校の教室で、ドキドキしながら英語の教科書や辞書を広げたものでした。近年、外国語指導は小学校ではじまりますので、皆さんの「英語との出会い」は小学校でしょうか。いずれにせよ、日本人英語学習者の多くは、「教室」で英語に出会っていると思います。
 教室は「学び」を創出する場です。コミュニカティブな指導を指向する教室は、学ぶべき外国語が身につくよう、教材が準備され、教師が学習者のレベルに応じて指導をする場所です。教室内での言語活動は必ずしも完全に自然なコミュニケーションではないかもしれません。しかし、言語を使ったやり取りをする相手(つまり、教師やクラスメート)と多様な言語使用の機会が存在する、有機的でダイナミックな場です。

教室内の第二言語習得研究

 外国語や第二言語の習得過程を研究する者にとって「教室」は、奥深く興味深い探究テーマの宝庫です。「授業中の教師の質問やフィードバックとそれらに対する学習者の受け答えといった教室内談話や対話は、学習過程にどのように影響するのだろうか」、「教師が見込みをもって計画した学習活動は、学習者にどのように受けとめられ、実際どのような学びが発現するのだろうか」、「グループ活動中の学習者同士の対話で外国語知識が深化し言語能力が向上することはないだろうか」など、教室で日々展開するやりとりと学習活動、教室に集う人々の対話に、外国語の習得の軌跡を見たいと考えています。

学習者こそ学びの主役

 教室はとても複雑な環境です。最近は遠隔授業やオンデマンド授業もありますから、「教室」そのものが物理的に複雑です。そこに教師の望みと意図があり、集う学習者はそれぞれに個性があります。こうした様々な要素が集まり混沌とした中で「外国語を学ぶ」活動を行うとき、「学び」を発現させる重要な要素の一つは、学習者自身の気づきです。コミュニカティブな教室で教師が使った文型に気づくとき、提出した作文に教師が記したフィードバックの意図に気づくとき、友達が用いた新しい語句に気づくとき、自ら表現したいことをどう言い表せばいいかわからないと気づくとき、その学習者が学びの一歩を踏み出していることを、これまでの研究は示唆しています。学習者の視点から指導と学びを見つめる研究を続けたいと思っています。

学生のみなさんへのメッセージ

 授業中に「気づく」経験をしたことはありませんか?気づきは発見、そして学びの促進剤です。気づく瞬間を経験したいですね。ところで、気づくとき、ひとは「対話」していることが多いようです。教師に質問するもよし、クラスメートに語るもよし、脳内で自分に向かって一人でツッコミするのもよし。ことばを使って語ることが気づきを引き起こすようですよ。