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教員が語る専門領域の魅力 vol.18

竹内 理 教授

外国語(英語)学習の方法と、その動機づけを探る

竹内 理 教授

Profile 専門は英語教育学(学習方法論、学習者要因)。実践と研究の橋渡しを指向し、教育現場と太いパイプを持つ一方、国内外の学会でも精力的に活躍中。21年には、動機づけの研究でアジアの代表的研究者の1人に選ばれた。

効果的な外国語学習法とは

 これまで私が取り組んできたのは、どうすれば外国語(特に英語)が効果的に学べるのか、そしてその過程で、どうすれば「やる気」を失わないのか、というテーマです。外国語の学び方には、多くの人々に共通する普遍的側面と、環境や目的により変わる個別的側面があります。これまでの研究では、普遍的なことに焦点を当てて論文を発表してきたのですが、現在では、目的や場面、状況に応じた研究へとシフトさせ、研究を続けています。ところで、方法がしっかりしていたら、学習は上手くいくのでしょうか。皆さんもご自身の体験からお分かりのように、そうはいきません。ここには人間の感情(やる気など)の要素が入ってくるのです。つまり、方法(メタ認知と方法)と感情をセットにして研究しないことには、「めげない」「おれない」「効果的な」外国語学習の方法というのは明らかにならないのです。

自己調整学習の方法を探る

 方法(メタ認知と方法)と感情をセットにして、効果的な学習方法の解明に挑む。このアプローチのことを、専門的な用語では自己調整学習のアプローチとよんでいます。この自己調整学習は、実は、2021年度から中学校で、2022年度からは高等学校で実施される学習指導要領の中でも中心的な概念の1つとなっています。自ら目的を設定し、その目的に応じて学習計画と学習方法を考える。そして、それを「めげずに」「折れずに」実行に移し、成果を振り返りながら改善していく。このメカニズムに興味を持ったというわけです。研究の成果は、英文の著書や論文で世界に向けて発信するだけでなく、学部の授業や教職課程・大学院での教員養成に利用したり、小中高の英語検定教科書作りに盛り込んだりと、積極的な活用を行っています。

実際の授業はこんな感じ

 学部1年生の「基礎演習」の授業では、この自己調整の概念を取り入れて、目標設定、計画立案、振り返りのサイクルを重視するよう授業を運営しています。もちろん、動機づけの要素にも十分な注意を払っています。また、3年生の「言語教育学(英語)」の授業や教職課程の「英語科教育法(一)(二)」の授業では、学習者の「やる気」を引き起こしながら学校の英語授業をどのように運営するのかを、アクティブ・ラーニングの方法で学生の皆さんと一緒に考えています。大学院では、「外国語学習者論」や「外国語教育メディア論」の授業、および博士課程前期課程(修士)ならびに博士課程後期課程(博士)の「演習」(ゼミ)の授業で、学習方法、動機づけ、学習不安、自己調整学習、行為主体性などの研究に、院生の皆さんと一緒に取り組んでいます。

学生のみなさんへのメッセージ

 宗教改革に取り組んだ神学者で牧師のマルティン・ルターは、

If I knew that tomorrow the world would go to pieces, I would still plant my apple tree.

と述べています。不平不満をあまり口にせず、やるべきことを毎日着実にやり遂げる。そうすれば、その蓄積は大きな成果を生むというわけです。さて、皆さんにとっての apple tree は何でしょうか。毎日、それを着実に植え続けていってください。