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教員が語る専門領域の魅力 vol.17

田尻 悟郎 教授

英語教育の発展のために

田尻 悟郎 教授

Profile

専門は英語教育学(英語授業実践論)。全国の小学校、中学校、高校を回り、授業を見学したり、授業をさせていただいたりして研究し、その成果(物)を教育現場に還元できるよう努めている。

英語力向上のための指導法研究

 日本における英語教育では、以前は文法学習が中心で会話練習はほとんど行われず、「訳読式授業=訳毒式」などと非難されました。その後、コミュニケーション中心の授業へのシフトを求められましたが、高校・大学入試を突破するための指導(=文法学習)と会話の指導という対極にある指導を両立させることは難しいと感じておられる先生は少なくありません。しかし、英語でコミュニケーション(試合)をするためには英語が使える能力を身につけておかなければならず(練習)、文法学習は試合をする力をつけるための練習となります。文法が分かるから会話ができるという体験をしてもらい、その効果を検証するために全国の教育現場を回っています。

頭と心を動かす授業・教材作り

 教室には、将来英語が必要でない仕事に就く人や、英語とは縁のない生活をすると思われる人は少なからず存在しています。そのような人たちが受けて価値がある英語の授業とはどのようなものかを考えることから、私の英語授業研究は始まりました。学習内容が面白く、深く、豊かであり、「もっと知りたい」、「もっと知ってもらいたい」と思った時に、言葉を使う必然性が生まれます。そのような気持ちを引き出す授業とはどのようなものか、あるいは知的で面白い活動はどのようなものか、生徒が家庭学習をやる気になるための教材や学習内容はどのようなものかを考えるのが、英語教育学の面白さです。

学習者心理の研究

 教員が授業中に口頭説明をしながら黒板に情報を書き、生徒にそれを写させることが仮に10分かかるとすると、中学校では10分×140回×3年間=4,200分、3年間で実に70時間にもなりますが、果たして70時間分の成果が得られているのでしょうか。また、授業中に指名され、立って答えさせられている時の生徒の心理状態はどのようなものでしょうか。グループ学習やペア学習をする時、音読練習をする時、テスト返却時、姿勢が悪い時、先生の解説を聞く時などの生徒の心理を考えることは、生徒を理解し、授業を改善するためにとても大切なことです。一方的に教えるのではなく、生徒に考えさせ、気づかせる「発問・指示」を研究することも、教育学の面白さです。

学生のみなさんへのメッセージ

 この不確実な社会を生きていくためには、『思考→判断→行動→反省→改善』という流れが不可欠です。「私も同じです」という返事は極力減らし、同じ意見であってもプラスαの情報を入れようとすることが創造につながります。コロナウイルス禍を経て、世の中は「言われたことをそつなくできる人」よりも「新たな価値を創造できる人」を求めています。能動的に頭を使いましょう!私も英語の授業を通してそれを支援していきます。