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教員が語る専門領域の魅力 vol.16

新谷 奈津子 教授

「話せるようになりたい」への飽くなき挑戦

新谷 奈津子 教授

Profile

専門は第二言語習得研究。外国語として言語を学ぶ場合の習得のメカニズムや効果的な学習方法に興味がある。研究トピックは、タスクを中心とした言語指導、ライティング指導、学習者の個人差がもたらす言語習得への影響など。

なぜ英語で話せない?

 こんな疑問を抱いたことがある人はたくさんいるのではないでしょうか。「第二言語習得論」では、一般的に言語の知識は、明示的知識と暗示的知識の2つに分かれていると考えられています。明示的知識とは、文法など言語形式のルール説明ができる知識、暗示的知識は、そのルールを無意識に使うことができる知識です。たとえば、英語を学習する人が、「三単現のsは、主語が三人称で単数の場合に…」とルールを説明することができたとしても、実際に英語で会話をすると、三単現のsが抜けてしまうという場合、この文法項目についての明示的知識はあるけれど、暗示的知識は身についていないということが考えられます。「文法を知っている」ことと「それを使える」こととは別の知識領域だと考えられているのです。

ではどうしたら英語で話せるようになる?

 よく耳にする「中学・高校で6年間も英語を学んだのに,英語で道を聞かれたら何も答えられなかった。」という話は、学校で学んだ知識とコミュニケーションに必要な知識が別のものであるために起こる現象だと考えると、少し安心しませんか。
 では、どういう勉強をすれば、言語の暗示的知識を身につけることができるのでしょう。一般的に明示的知識は明示的な学習(文法説明や機械的な練習)、暗示的知識は暗示的な学習(コミュニケーションの内容に意識が向く学習)によってより発達すると考えられています。つまり、話せるようになるためには、その言語を使って意味のやりとりを伴うコミュニケーションを繰り返すことが大切だということになります。留学をしたことがある方は、ある時期から急に話が聞き取れ、言葉が口からスムーズに出るようになったという体験をお持ちかもしれません。それは暗示的な学習の機会がたくさんあったからだと考えることができます。

答えを求めて

 では、学校で身につけた明示的知識は、暗示的な学習にどのように役立つのでしょう。そもそも、暗示的知識を学校の授業の中で伸ばすことは可能なのでしょうか。そして、一般的に行われている英語のテストは、どちらの知識を測っているのでしょう。そういったさまざまな疑問を一つ一つ解き明かそうとするのが、私たち第二言語習得研究者の仕事です。「どうやったら使えるようになるの」という疑問に対する答えを求めて研究を積み重ねているのです。

学生のみなさんへのメッセージ

 人間は、コミュニケーションを通して情報や思いを共有し、一人ではできないことを成し遂げて発展してきました。外国語を身につけることで広がる世界をぜひ体験してください。
As you think, so shall you become.