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教員が語る専門領域の魅力 vol.12

平嶋 里珂 教授

伝えたい内容を表す方法を学ぶための文法学習を目指す

平嶋 里珂 教授

Profile

専門はフランス語の文法教育。日仏対照言語学、フランス語学、認知言語学(誤用分析)を活用して様々な文法教材の文法記述・記述言語を研究する一方で、文法学習と運用練習のバランスを考えた授業運営の実践研究と教材開発を行う。

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なぜ文法教育の研究が必要なのか?

 私が取り組んでいるのはフランス語を学ぶうえで効果的な文法学習の方法を探ることです。外国語の実力をつけるには文法にこだわるより運用能力の養成に力を入れるべきだと考える方が多いと思います。確かに運用は大切なのですが、学習者が使っている教科書に外国語の仕組みが正しく記述されているとは限りません。多くのフランス語の教科書が準拠している文法は「伝統文法」と呼ばれており、フランス語の学校教育で使われている文法記述と同じものです。動詞の活用等、形の変化を学習するにはいいのですが、文法要素が実際の文中で表す意味を正確に伝えていないことがあります。ネイティヴスピーカーの直感が育っていない学習者が言葉の表す意味を正しく理解せずに形だけ覚えてしまうと、伝えたい内容を適切に伝えることができなくなってしまうのは問題です。

多方面の言語に関する研究を活用する

 そこで私は3段階にわけて外国語学習に必要な文法記述の研究を行っています。まず、フランス語の文法要素の働きを言語学の視点から詳細に分析し、実際の文法要素の機能を明らかにします。次にフランス語の文法要素と日本語および大部分の日本人学習者がフランス語学習を始める前に学んでいる英語の文法要素の使い方を対照させ、類似点と相違点をあぶりだします。母語や既に学んだ英語に同じ要素があれば、フランス語の文法要素の意味を理解するのは難しくありません。同じものがない場合は要素の働きを理解するのは容易ではないので、機能の説明の仕方の方法を研究します。教育に応用する場合は、学習者のモチベーションやレベル、使える学習時間等を考慮して、研究で得られた知識をフランス語の例文やモデル文の作成、文法解説の説明の仕方、練習問題等に反映させていきます。

フランス語教育の現場で行うこと

 文法教育の研究をしているからといって授業中に文法のことばかり説明しているわけではありません。授業の現場で大切なのは学習者の認知的側面です。入門の段階では、学ぶ方の頭にフランス語のストックが入っていないので、抽象的な説明を聞いても分かった!という実感が湧きにくいものです。この段階では感覚的に理解できる状況が反映された例文を用い、学生さんがそこで使われる文法要素の働きに注目してフランス語の仕組みを学んでいけるように心がけています。入門編を終えた学生さんには多様な状況を設定して言語を使ってもらいます。入門編で習った文法要素について解説を加えることもありますが、そこではより細やかに、文法要素が「伝える内容を的確に表すための手段」であることを伝えています。

学生のみなさんへのメッセージ

 「外国語は英語さえ使えれば十分」と考える人は多いかもしれません。英語で精一杯と思っている人も多いでしょう。でも外国語学習には相乗効果があるので、英語が得意であれば二つめの外国語はかなり楽に学べます。英語が得意でない場合も、内容を伝えるための言語手段を意識して第二外国語をきちんと学ぶことで、英語の能力だけでなく母語の能力もアップすることがあります。