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教員が語る専門領域の魅力 vol.16

八島 智子 教授

データと向き合い、研究コミュニティと対話し、人間理解をめざす

八島 智子 教授

Profile

専門は応用言語学と異文化コミュニケーション論にまたがる。主な研究テーマは、第二言語学習と異文化接触の情意的側面。継続的な国際誌での発表と国際共同研究を通して、非西洋的な視点からの発信をめざしている。

「外国語(第二言語)を用いてコミュニケーションをする」とはどういうことなのか?

 私の第一の興味は「ひとが外国語(第二言語)を用いてコミュニケーションをする」ことを可能にするのは何かということです。もちろん外国語の知識は必要でしょう。でもそれだけではテストの成績は良くても、実際に例えば国際的な場面で効果的なコミュニケーションができるとは限らない。これを可能にするには外国語の知識以外に、性格や態度などの心理的要因や、相手との関係性など社会的要因、さらにはその場の状況など数多くの変数が関わります。これを整理して、その影響を数量的に予測しようとするのが、私の研究の一領域です。外国語を使用する相手は、通常文化背景も異なるので、ここで異文化に対しどのような態度を持っているかも問題になるのです。

異文化接触動機と外国語学習動機

 人は一般的に自分と似た人と付き合うことが好きですので、異文化の人とコミュニケーションを避ける傾向があります。異文化接触に積極的であるということと、外国語学習動機はどのような関係があるのでしょうか?教育心理学における動機付けの研究は、数学・英語・社会などいろいろな科目に共通する人間の心理を扱ってきました。しかし、外国語は、他の国の人が日常使っており、そのアイデンティティの核となる言語を学習するという特殊性があります。この点に注目した外国語学習動機の研究が私の第二の研究テーマです。目標言語文化への興味は常に外国語学習を誘いますが、同時にアイデンティティの問題が浮上します。言語学習とアイデンティティの問題も興味あるテーマです。

学際的研究へのすすめ 多様な研究法への広がり

 上で書いた以外にも、この分野では海外留学の成果の測定や異文化適応のプロセスの解明など様々な研究があります。人間のことばの習得とコミュニケーションを研究しようとすると学際的な研究の視点が必要となります。そもそも、応用言語学とコミュニケーション学は異なる分野です。しかし、外国語を用いてコミュニケーションを可能にする能力やその時の心理を分析しようとすると、両方の知見、さらに心理学が必要となります。また上で述べた量的な研究に留まらず、例えばアイデンティティの問題を扱おうとすると、対象が生きている環境をまるごと理解するために、インタビューや観察など質的な研究も必要となります。つまり多角的に研究課題に接近する意欲が求められます。

学生のみなさんへのメッセージ

 人間を対象とした研究は、みなさんの大学生活を豊かにすると思います。人間ほど面白いものはないですから。特に、「ことば」は自分そのものですから、言語やコミュニケーションの分析は、人間に接近するためのパワフルな道具となるでしょう。そしてその知見は実践的にもきっといろんな役に立つと思いますよ。