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教員が語る専門領域の魅力 vol.15

阿南 順子 教授

パフォーマンス・スタディーズ:「当たり前」を疑う

阿南 順子 教授

Profile

専門は演劇学、パフォーマンス・スタディーズ、視覚文化。異なるメディアにおける身体の表象を研究。

パフォーマンス・スタディーズとは?

著書、
Contemporary Japanese Women’s
Theatre and Visual Arts: Performing 
Girls’ Aesthetics

 私の専門は、日本文化論、演劇学、パフォーマンス・スタディーズ、視覚文化です。「パフォーマンス・スタディーズ」に関しては、聞いたことがないという人も多いかもしれません。従来の演劇学は舞台芸術を対象にした研究分野ですが、1970年代から80年代にかけてアメリカ合衆国で誕生したパフォーマンス・スタディーズは、舞台芸術を含め、さまざまな場で起こっている「パフォーマンス」を対象にしています。例えば、日常におけるパフォーマンス。電車で座席に座っている人々を見てみると、男性と女性では座り方が異なることがわかります。男性は足を広げて空間を大きくとり、女性は足を閉じて空間を狭く使っています。

身体は文化によってつくられる

 「日常のパフォーマンス」についてもう少し考えてみましょう。男性と女性の身体の使い方は異なる、といいましたが、かといって女性なら皆同じ身体の使い方をするわけではありません。日本で育った女性とアメリカで育った女性では身体表現の仕方が異なります。また、同じ日本国内でも、50年前と現代では身体表現や身体感覚が異なっていることでしょう。ここからわかることは、私たちの身体は文化や時代によってつくられるということです。「女性にとって自然な身体の使い方」や「日本人にとって自然なジェスチャー」が存在しているのではなく、人々はある社会に所属するためには何を「パフォーム」しなければならないのかを、意識的に、あるいは無意識のうちに学んでいるのです。

パフォーマンス・スタディーズの魅力

 パフォーマンス・スタディーズの魅力は、このように、「当たり前だと思っていたこと」が実はそうではないということに気づかせてくれるところです。身体以外にも、2次元で起こっているパフォーマンスを考察することもできます。例えば世界地図。世界地図は各国で異なります。自国を中心に添えるという「パフォーマンス」をしていることはもちろん、各大陸の大きさが地図ごとに異なっている場合もあります。これは一体どういった「パフォーマンス」なのか。ここで重要なのは、「地図は正確なもの」という考えが、実は当たり前ではないということです。では、どうして私たちは様々な事柄を「当たり前」のこととして信じているのか。それを考えることが、パフォーマンス・スタディーズの第一歩です。

学生のみなさんへのメッセージ

 自分の「当たり前」が崩壊してしまうことを恐れず、異文化をたくさん吸収して、視野を広げて下さい。外国語学部はそのための最適の場です。