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教員が語る専門領域の魅力 vol.14

李 佳樑 准教授

中国語を通して学習者に知的な楽しみも味わって頂きたい!

李 佳樑 准教授

Profile

中国語学専門。研究領域は、現代中国語の文法論の諸分野であり、特に中国語における情報源表出形式の意味機能、中国語構文論、共時的な視点から見た中国語における文法化等の課題について考察中。

初心者に優しい中国語、学べば学ぶほど難しい中国語

 発音はともかく、中国語は総じて初心者に優しい外国語だと言えます。英語では、単数・複数によって名詞の形が変わったり、事柄の起きた時点が過去かどうかによって異なる形の動詞を用いたりするので、それを覚えるのは初心者にとって一苦労ですが、中国語にはそのような「手続き」は一切ありません。それに加えて、中国語と日本語は、漢字のみならず、語彙もかなり共通しているので、日本語の母語話者なら、辞書に掲載されている単語をそのまま基本語順の通りに並べることで意思疎通できるケースが少なくありません。しかし、「形」の変化がないからこそ顕在化しないルールが数多く存在し、学べば学ぶほど難しく感じるというのも中国語のもう一つの顔です。

文法の記述と説明は思ったより面白いかも

 「ザ・文法」を敬遠されている方にちょっとしたクイズです。仮に梅田駅から阪急北千里線の電車に乗るとします。時間順で豊津→関大前→千里山という3つの駅が隣接しますが、中国語の“「関大前」前一站”(“站”=駅)は豊津駅と千里山駅のどちらを指すでしょうか?―答えは「どちらも指しうる」です。「どちらも指しうる」の類はルールの記述(description)で、どうしてそうなのかに答えるのは説明(explanation)です。様々なルール(文法)を記述して学習者に分かりやすく提示すること、中国語がこういう仕組みをしている理由に迫るところに面白さとやり甲斐を感じ、私は文法論の研究に取り組むことにしました。

廬山の真面目を識らざるは只身の此の山中に在るに縁る

 私の尊敬するある日本人の中国語学者は、「『中国人の語感が欲しい!』と、叶うはずもない虚しい思いを抱いていた頃」があったとご著書に綴られています。私は、日本に留学に来て中国語を研究してきましたが、「どうして日本で?」という質問を何度も受けました。しかし、見出しで引用した詩にもあるように、中国(語)の本当の姿を知るためには中国(語)と一旦距離を置くことも必要です。そういう意味で、中国語の母語話者でなくても中国語に関する優れた研究成果を世に出すことが十分可能ですし、母語話者の研究者の場合は、中国語と他の言語、中国と他国の社会・文化・歴史を常に意識的に比較して、中国語を複眼的に見つめ直すのが肝心だろうと思います。

学生のみなさんへのメッセージ

 中国語運用力の養成だけでなく、中国語を通して学習者に知的な楽しみも味わって頂けるよう日々研鑽を重ねています。みなさんが中国語の世界のエキスパートになるまでの道のりを伴走することを楽しみにしています。