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教員が語る専門領域の魅力 vol.9

守崎 誠一 教授

文化背景の異なる他者とより良くコミュニケーションするためには、何が必要とされるのか? 守崎誠一教授 Profile「専門は、異文化間コミュニケーション学。異文化間のコミュニケーションを困難にする要因について、量的な調査研究手法を用いて明らかにしようとしている。」

異文化間コミュニケーション学とは

 わたしが専門としている「異文化間コミュニケーション学」は、1960年代のアメリカで生まれた50年あまりの歴史しかない比較的若い学問です。新しい学問が誕生する背景には、常にある種の“社会の要請”のようなものがその背景にありますが、1960年代のアメリカには、異文化間コミュニケーション学に対する“社会の要請”があったということになります。具体的には、多くのアメリカ人(ビジネスマン、外交官、軍人、平和部隊隊員など)が海外に出るなかで、現地の人々と様々なトラブルを引き起こしていました。 同時に、アメリカ国内でも公民権運動の高まりに見られるように、人種間の対立が極度に高まっていました。そのような中で、どのようにすれば“異なる文化の人とよりよくコミュニケーションできるのか”ということに関心が集まり、異文化間コミュニケーション学は生まれました。

 そう考えると、いまの日本社会においても異文化間コミュニケーション学という学問は、大変重要な学問であると思われます。なぜなら、多くの日本人が国内外で外国人と一緒に仕事をしたり、勉強をしたりする状況になっているからです。にもかかわらず、最近になってさまざまなところで“若者の内向き志向”が批判されています。つまり、日本人留学生や海外駐在を希望する社員の減少などが問題視されています。その際に“最近の若者はチャレンジ精神がない”とか“海外なんて、行けば行ったで何とかなるものだ”のような、ある種の“精神論”でそのことを論じる人がいますが、そういった議論は全くのナンセンスです。効果的に異文化適応するためにどのような知識やスキルが必要とされ、どのような教育・訓練をおこなうことでそれらが身に付くのか、といったことの多くが、すでに異文化間コミュニケーション学によって明らかにされているからです。
 では、外国人とうまくコミュニケーションが出来るようになれば、それでいいのでしょうか。近年になって、多様な人々がこれまで以上に社会参加をするようになったことで、国籍や人種の違いに基づく“文化”だけでなく、それよりも小さな“共文化”と呼ばれる違いを超えたコミュニケーションもまた活発になってきています。具体的には、同じ職場で男女がより良く仕事をするための“異性間のコミュニケーション”や若者と高齢者の“異世代間のコミュニケーション”、“健常者と障碍者のコミュニケーション”などの機会が増えています。そして、そのような共文化間のコミュニケーションもまた、異文化間コミュニケーション学では研究をおこなっています。

学生のみなさんへのメッセージ

 これからの日本社会は、ますます多様化をしていきます。その際に、さまざまな違いを“文化”の違いとしてとらえて、異なる“文化”のあいだのコミュニケーションを困難にする要因を探り、どのようにすればうまくコミュニケーション出来るのかについて研究をおこなってきた「異文化間コミュニケーション学」に対して、より多くの学生が関心を持ってくれることを希望します。