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教員が語る専門領域の魅力 vol.7

奧村 佳代子 教授

美しいものを美しいと


暗いものを暗いというだけ


このたんじゅんなことを表すために


どれだけ労して言葉を選ぶことか


(塔和子「言葉の核」より)


奧村 佳代子 教授


Profile


現代中国語に出会ったのは大学、唐話に出会ったのは大学院。出会った頃には分からなかった面白さ、難しさ、深さに気づき始めた現在です。

中国語学習と私

 私は、大学の国文学科に所属しながら、第二外国語として中国語を学び始めました。大学生になったので、心機一転、真面目に勉強しようと決意したことを今でも覚えています。
 1年生の秋に、翌年から中国に語学留学することが決まりました。大学の交換派遣留学ではなく、まったくの私的な留学でしたが、突然降って湧いた話でした。留学に対して漠然とした憧れを抱いてはいたものの、現実のものとなるとは、正直なところ思っていませんでした。想定外の留学ではありましたが、留学中はもちろんのこと、この留学を決めてからの多くの出会いが、私の人生の糧になりました。
 世の中には、留学などせずとも、語学学習にしっかりと取り組み習得できる人も大勢いることでしょう。私自身は、留学して良かったと心から思います。留学していなければ、私は中国語の勉強を早々と止めてしまっていたかもしれません。しかし、留学しさえすれば、自動的に語学力が増すわけでもなければ、人生変わるわけでもありません。人生を一変させるのも留学なら、単に外国で暮らした一時期となるのも留学です。
 外国語学部では、現代中国語の基礎固めをする授業を担当しています。少しでも自信を持って留学してもらいたい、と思いながら授業に臨んでいます。

それぞれの「現代中国語」

 「現代中国語」を学ぶという行為は、現代の人間だけの特権ではありません。たとえば、300年以上も前の江戸時代の日本人の中にも、「現代中国語」を習得しようと努力した人々がいました。「現代中国語」とは、その人その人が生きる時代に、生身の人間が実際に使用している中国語です。1700年代の日本人にとっては、1700年代の中国で話されていた言葉、使われていた言葉こそが、「現代中国語」でした。私は現在、日本の江戸時代の中国語資料の研究に力を注いでいます。遠い過去の「現代中国語」の姿を知ることは容易ではありませんが、好奇心旺盛で勉強熱心だった江戸時代の日本人は、当時の「現代中国語」を様々に取り入れ、書物の中に残してくれています。その膨大な資料を前にすると、鎖国政策下における閉鎖的な側面よりも、むしろ積極的に受容しようとした開放的な精神を感じます。
 現代であれ江戸時代であれ、中国語学習という大きな流れを形作っているのは、ひとりひとりの個人の営みです。現代とは学習環境がまったく違っていたであろう江戸時代に、どのような人々が、どのようにして中国語を学んでいたのか、さらには学んだ中国語をどのように用いたのか、コツコツと調査していきたいと思っています。

学生のみなさんへのメッセージ

 語学学習には終わりがありません。外国語学部に入学したことで、みなさんは母語以外で一生つき合える「ことば」に出会える可能性があります。その「ことば」は、みなさんの年齢や内面の変化にともなって、様々な意味を持つでしょう。ぜひ、途中で中断せずに、死ぬまで続けてください。出会えた「ことば」を、豊かで奥深い世界への扉にするか、無味乾燥の道具としてしまうかは、みなさん次第です。