最近集中的に資料集めをしているイギリス、サセックス大学の図書館にて
第二次大戦中に行なわれた連合国による日本人の精神構造、性格構造の研究がどのようなものであったのかを研究対象としている。目下の興味は、アメリカ、イギリスを中心として資料収集を行い、様々な研究機関で集中的に行なわれた日本人論・日本文化論とは如何なるものであったのか研究している。対象人物としては、『菊と刀』の著者であるルース・ベネディクト、そして戦時中、いち早く日本人の性格構造に着目し、日本研究において先駆けとなった研究を行なったイギリス人、ジェフリー・ゴーラーなどに着目し、研究を行なっている。
私の研究は、まず資料収集することから始まる。様々な国の図書館を訪れ、じっくり腰をすえて、しかし、あらかじめ研究していたことを踏まえて勘働き、これが正しく行なえるかどうかが重要で、そのため集中力を高め、どの資料が重要なのかを判断し、コピーをしたり、パソコンに打ち出したりし、ホテルや日本に戻って整理するのである。
図書館にお願いして資料の入った箱を開けるときは、何か宝ものを探すときのような「心躍る」瞬間である。図書館は「ここ掘れワンワン」の宝を持つ「場」となる。そういう経験はめったにできないだけに、クセになる刺激の場である。友人がかつて私に言ったのだが、「先生は図書館で資料集めをし始めるとあまり飲んだり食べたりしなくなる」とか。
個人研究室にて
論理的な検証を含め、集めた断片的な資料のピースを手がかりにパズルを解くようにひとつの作品に書き上げる。それを提供し、学生たちと共に考える刺激的な場を提供していくことが私の仕事の一つだと思っている。文化を研究することとは、必ずしも答えを導き出すことにあるのではない。考えるプロセスを重要視したい。ある学生は教育関係の仕事に、またある者は実務の場で働き、そしてまた研究者を目指す人も出てくるだろう。どの仕事についても、どこに居ようとも、決して臆することなく、堂々としかし謙虚に、また必要なときにはぶつかりながら、挑戦していけるような人になってほしいと願っている。日本文化論の授業から、そうしたことが経験でき、何かを感じていただければ教師冥利に尽きる。そのためにもこれまで研究してきたことを教育の俎上に載せていきたい。