授業のサポート

教員インタビュー

オンデマンド授業をする以上は良いものを。一つ一つの授業に重みを感じた。

システム理工学部

庄田 敏宏教授

研究分野

幾何解析

プロフィール

庄田 敏宏(しょうだ としひろ)

関西大学 システム理工学部 教授。1998年東京理科大学理学部一部数学科卒業、2000年東京工業大学理工学研究科数学専攻修士課程、2004年同博士課程修了。博士(理学)。

多様体上の幾何解析、部分多様体上の幾何学的不変量、周期的極小曲面のモジュライ理論を主な研究テーマとする。

将棋愛好家であり、昨今の情報化社会の恩恵を受けてタイトル戦のライブ中継は欠かさずチェックしている。また、1970年代のテレビ時代劇や1960年代の市川雷蔵主演の映画を好む。

 

 

 

【インタビューの経緯】

20217月に実施した「2021年度遠隔授業に関する教員アンケート」内の自由記述欄において、遠隔における授業実践の工夫や新たな取り組みについて回答いただいた教員5名にインタビューを実施しました。

未だコロナ禍で授業の実施方法について模索が続く中、回答いただいた先生方の授業に対する取り組みをGood Practiceとして広く公開することで、授業運営に悩んでいる・困っている先生方に少しでも役立てていただきたいという思いで、今回のインタビューを企画しました。

また、このページをFD活動の一環として利用いただけると幸いです。

授業形態:講義

#教材作成、課題作成

#関大LMSの活用

#各種ツールの活用_Dropbox

#各種ツールの活用_その他

#アンケートや課題実施による理解度の把握

#予復習を促す工夫

回答いただく科目について

・数学を学ぶ(微分積分1)(履修者数92名)

Q.コロナ禍において、どのような方法・形態・ツールで授業を実施しましたか?

 ナレーション入りのスライドを使ったオンデマンド型授業を実施しました。資料提示型は学生の立場に立つとしんどいかなと思い、専門家のノウハウを直接吸収できるように講義形式で説明を入れる方法にしたいと思いました。その中で有効な方法を考えると、テレビのようなナレーション付きの動画がより引き込まれるのではないかと思い、これを採用しました。自分自身がもともと早口のため、動画内のセリフはなるべくゆっくり話すように心がけています。また、ゆっくり話すことで学生もノートが取りやすいと思います。動画を見ながらノートをとる学生もいるため、大体1時間程度を目安に動画を作成しています。動画自体はなるべく1時間で終わらせることを意識して作っていますが、90分の対面授業よりも分量は少し多めに進めることができました。話し方はゆっくりですが、対面授業で発生する板書の時間が省かれるので、オンデマンド授業の方が通常よりも早めに授業を進行できています。説明も丁寧にできて内容も早く進められているのでその点は良かったと思います。
 オンデマンド授業の実施において、関大LMSは多用しました。出席を確認するために、動画を見たかどうか確認するためのクイズを2題ずつ出すようにしています。動画の配信には、関大ファイル便とDropboxを利用しました。トーク&チョークの文化も大切だと思いますが、自分で手を動かして身に付けることが最も大事なので、そのきっかけが板書かスライドかという違い程度に感じています。学生の考学意欲を高めるためには、授業時間に考える時間を担保するほうがよいだろうと考えています。そのため、授業目的に応じて授業動画内で演習問題を組み込み、定期試験の結果が悪かった人には関大LMSで課題を出しました。

Q.授業を実施する上で苦労した点や工夫したことを教えてください。

 スライドを一つ一つ凝って丁寧に作るため、制作時間が長くなる点において苦労しました。1日まるまる使ったとしても2日かかり、雑用の合間だと3、4日かかってしまいます。授業内容とスライドの構成を考え、どのような説明だと学生にわかりやすく伝えることができるか、というところに頭を悩ませました。動画を作成するのはやはり労力が必要ですが、一度作ってしまえば使いまわせる部分があることにも気づきました。また、対面授業の時は学生に実際に手を動かしてもらっていた実験については、自分で実験をしながらの撮影が求められたので、ライトやアングルの工夫が難しく何度も確認しながら撮りなおすことを繰り返しました。例えば、ピンポン玉を使った実験では、ぶつかり方がきちんと見えるアングルで何度も撮りなおし、当たる時にスローモーションとなるよう動画を編集しました。動画編集経験は今まで全くなく、コロナ禍をきっかけに初めて行いました。

Q.学生の学習効果についてはどう感じていますか?

 対面授業よりもオンデマンド授業の方が授業を早く進行できているので、対面授業のときよりもテスト範囲は確実に広くなっていて問題は難しくなっていると思います。ただ、対面授業時よりも範囲が広がっているにもかかわらず、定期試験の結果に差はなく、むしろ全体的に成績は上がっている印象を受けました。あくまでも1年間の肌感覚なので、あと数年オンデマンド授業のサンプルができれば対面授業との対比ができると思っています。
 学期終わりの授業アンケートにおいて、動画内の話すスピードについて質問したり、直接学生と会話する機会にも感想を聞きましたが、「もう少し早めに話してもいいんじゃないか?」との意見もありました。また、「リアルタイム型オンライン授業で生じるようなフリーズや音響トラブルがないためありがたい」との感想もありました。説明を聞き逃しても動画を停止したり巻き戻して見ることができるなど、学生それぞれのペースで学習できる点においてもメリットがあったと思います。学生それぞれの生活リズムやスタイルで受講できたのではないかと思います。定期試験不受験の学生もほとんどおらず、コロナ禍以前と比較してもオンデマンド授業による弊害は特に感じられませんでした。

Q.オンデマンド授業について先生にもメリットはありましたか?

 スライドを作るためにはエネルギーと時間が必要となるため、板書の方が楽な面は確かにあります。ただ、対面授業での板書は座る席や角度によって見えづらかったりするため、字を大きくする工夫が必要ですが、動画であればどのような環境でも等しく見せることができ、全員に同じクオリティのものを提供できる点はメリットだったと思います。せっかくやる以上は良いものを提供したいという気持ちから、以前より授業一つ一つの重みを感じるようになりました。また、授業動画を作成する中で、テレビの制作者に改めて感心する機会となり、第三者の苦労に対する想像力が豊かになったと思います。

Q.次年度以降も続けていきたい事、挑戦したことについて教えてください。

 オンデマンド授業については、今後も前向きに考えています。特に、幅広い知識を提供しなければならない授業については、オンデマンド授業の方が向いているのではないかと感じました。今後は、オンデマンド授業に対する理解を深め、周囲とバランスを取りながら実施していきたいと思います。対面授業においても、オンデマンド授業の仕組みをうまく交えながら取り組んでいきたいと思います。例えば、板書でなくオンデマンド授業でのスライドを使ったり、資料配付についても関大LMSを用いるなど、学生の反応を見ながら進めていきたいです。

取材記録

インタビュアー:教育推進部 教授 山田剛史
記事編集:教育開発支援室 上田果歩
(取材日:2022年3月17日)

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