設置の理念・沿革

 文化的、社会・経済的、技術的に高度に発達し複雑化した現代社会において、私たちが安全に、かつ安心して暮らしていくためには、自然災害、事故、環境問題、食の安全、感染症、情報セキュリティなどに関するさまざまな危機事象を回避・抑止し、それらによる被害を軽減する政策の立案と、制度的・技術的な対策を適時に実施する必要があります。自然災害のみならず、人間の社会・経済活動に起因する事故を含む種々のリスクに対処するには、旧来の分野を超えた分野融合的な観点に基づく新しい安全研究領域を創成・推進するとともに、それを担う研究者や、社会の第一線で安全・安心な社会の創造に寄与する実務的人材を養成することが必要不可欠です。

 関西大学大学院社会安全研究科は、「安全の学知」の集積・体系化に取り組むとともに、防災・減災政策の立案と実践、危機発生時の社会的合意形成の技術開発、防災・減災のための制度設計などを担いうる高度な知識とシミュレーション能力を有する先端的研究者ならびに専門職業人を育成すること目的として、2010年4月に高槻ミューズキャンパスに開設されました。本研究科では、過去数十年にわたる自然災害に対する防災・減災研究で培われた手法を研究教育の柱としつつ、人工物による災害や食の安全、健康リスク、環境リスクなどの問題群を取り扱うために、企業の倫理や社会的責任、経営体制、法制度、検査体制、労働政策、さらに、生きがいや働く喜びといった心理的・文化的側面にまで踏み込んで分析を行います。社会安全研究科は、法学・政治学、経済学・経営学、社会学、心理学、理学、情報学、工学、社会医学などの従来の個別的な学問体系では対応しきれない問題に正面から取り組む新しい大学院研究科です。学際的、複眼的なアプローチを通じて、「安全・安心な社会」を実現することを第一義的に捉え、高度な研究教育を推進します。