博士課程前期課程 防災・減災専攻

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種別 授業科目 単位数 配当年次
必修科目群 専攻演習IA(各テーマ) 2 1
専攻演習IB(各テーマ) 2 1
副指導演習IA 1 1
副指導演習IB 1 1
専攻演習IIA(各テーマ) 2 2
専攻演習IIB(各テーマ) 2 2
副指導演習IIA 1 2
副指導演習IIB 1 2
選択科目群 共通科目 アカデミックライティング 2 1
Academic Writing & Presentation in English 2 1
人間システム系 ↓安全の思想 2 1
↓災害心理学特論 2 1
↓災害復旧・復興特論 2 1
災害情報特論 2 1
安全教育特論 2 1
↓ヒューマンエラー特論 2 1
↓リスク心理学特論 2 1
↓リスクコミュニケーション特論 2 1
社会システム系 ↓行政法特論 2 1
↓消防防災行政特論 2 1
↓公衆衛生学特論 2 1
↓災害経済学特論 2 1
↓リスクマネジメント特論 2 1
損害保険特論 2 1
↓安全と法システム特論 2 1
↓消費者安全法特論 2 1
交通システム安全特論 2 1
理工システム系 ↓水災害特論 2 1
↓地震減災特論 2 1
耐震工学特論 2 1
地盤災害特論 2 1
↓都市安全計画特論 2 1
↓社会減災政策論 2 1
↓工学的安全システム特論 2 1
安全設計特論 2 1
↓工学システム解析 2 1
情報セキュリティ特論 2 1
応用データサイエンス特論 2 1
自由科目群 アドバンストインターンシップ(各機関) 2 1
種別 最低取得単位数
必修科目群 12単位 合計30単位以上
選択科目群 18単位以上

※選択科目群は、共通科目から1科目2単位、各システム系からそれぞれ2科目4単位以上を含む

授業科目の概要(社会安全研究科 防災・減災専攻)

安全の思想
 社会安全学とは、“安全を図る”観点から、必要十分な学問領域の知識を駆使して最適な安全対策をつくりだし、その対策が十分に効果を発揮できるようにするための基礎学問である。一言でいえば、安全配慮の行き届いた社会の実現に必要な社会の実力向上を目指す学問である。方法論的特徴を述べれば、伝統的な専門領域別に安全問題、安全対策を考えるのではなく、問題の特徴に即して必要十分な専門領域の知識を活用する立場であり、また近代科学的思考法とその基礎の上に構築された科学技術文明の弊害が安全問題として顕在化している面も多いため、現代科学技術文明の欠点を補う視点も欠かせず、科学技術文明を鳥瞰するに必要十分な技術史的、社会史的、政治史(立法、行政、司法等を含む)的視野と知識も欠かせない学問である。講義では、そうした学問の特徴を、幾つかの典型的な事例を通して、明らかにするとともに社会安全学的な現代的課題についても考察する。
災害心理学特論
 被災経験は、人々にさまざまな形で大きな変化を与える。災害時や被災後の人々の行動や心理的な変化、また、災害に強い社会を築くためには、災害が起こる前に、どのようなことが必要なのかについて、心理学的なアプローチによる研究や事例を紹介しながら、理解を深める。
災害復旧・復興特論
 阪神・淡路大震災以降、「復興」の概念は、法制度の制定とも絡みながら、広がり、変化してきた。本講義では、こうした近年の動向を踏まえ、「被害の回復に取り組む個人と社会の再適応のプロセス」に焦点を当て、復興とは何かを問い、議論していく。前半は総論として、「復興とは何か」その定義について検討し、復興の問題を考える際の視点と枠組み、近現代史の中で災害復興に関わる社会的な対応がどのように形成されてきたのかについて文献を紐解きながら検討していく。後半は各論として災害種別ごとに復興事例を検討する。履修者の研究テーマに関連する過去の災害事例を取り上げ、個人の生活再建と地域の復興がどのように関わり合ってきたのかを検討していく。「復興」という事象から、社会に潜在する問題を捉え、さらにそこから減災や、安全・安心な社会の条件を考えていく視点を獲得すること、さらにそうした視点を持った研究を設計できるようになることが、本講義の狙いである。
ヒューマンエラー特論
 ヒューマンエラーと事故・災害との間に密接な関係があることは広く認識されているが、万全たる対応策は必ずしも確立されていない。ヒューマンエラーに対する誤った認識から誤った対策が導かれることにより安全対策の効果が損なわれ、事故や災害の再発につながる事態も起こりうる。
 本講義では、身近な出来事から社会的に大きな影響を及ぼした大事故に至るまで、様々な事例の背景要因を探りつつ、ヒューマンエラーの本質を把握し事故・災害を防止するための具体的かつ実践的な方策について考察する。
リスク心理学特論
 安全と安心を確保するためには「リスク(risk)」という概念がとても重要である。「リスク」は将来の不確実な危険と便益についての概念であるが、社会心理学的には自分を取り巻く周囲の現実に対する評価的認識であるということができる。自分の日常生活を自分自身がどのように評価しているかはリスク認知であり、その上でどのように行動するかはリスク対処行動である。本講義では、リスク概念に基づいて、私たちが日々の生活において自分を取り巻く周囲をどのように認識・評価して対処行動をとっているのか、その心理のメカニズムを多面的に検討する。まずリスク概念についての検討を行った後に、私たち人間がリスクをどのよう認識し、そして判断を下すのか、そのメカニズムについて社会心理学の「社会的認知」「態度」「ヒューリスティクス」「感情」などの概念をもとに考察する。その上でリスクを他者共に対処することに関わる概念「社会的リアリティ」「社会的スキル」「信頼」「公正・正義」について解説をする。
リスクコミュニケーション特論
 現実社会に遍在する多様なリスクを低減するために社会全体の資源を如何に配分するかというリスクガバナンスのためには、リスクコミュニケーションを通じた社会的合意形成が必要です。講義では、健康や環境などさまざまリスクコミュニケーションの事例や関連する心理学や社会学の理論を紹介しながら、リスクに関する社会全体での合意形成に対するリスクコミュニケーションの意義と問題点について考察を行う。
行政法特論
 防災行政について行政法学の観点から研究する。(1)命令・強制のみならず契約や補助金など、防災のために行政機関はさまざまな手法を用いている。これらの手法が総合的・体系的・有機的に機能することによって防災の目的を達成することができる。防災に携わる者は、この多種多様な防災行政の手法を体系的に理解するとともに、その体系の法理論を修得する必要がある。(2)災害発生の危険をもたらす事業活動や防災のための行政活動が原因となってさまざまな紛争が生じている。これらの紛争の発生を未然に防がなければならず、また発生した紛争を適切かつ合理的に解決しなければならない。防災に携わる者は、紛争の予防と解決のための能力を修得する必要がある。これら(1)(2)によって、防災行政の法的問題に対する理論的・実践的な分析能力・解決能力を修得することができる。
消防防災行政特論
 消防防災行政研究の災害研究における特殊性は、災害に対する一次的な対応(災害にどう対応するか)だけではなく、二次的な対応(災害に上手く対応するためには、どの様な行政管理を行うべきか)にも問題関心が向けられるところにある。
 本講義では、消防防災行政研究の学問的な存在意義を主に行政学と近隣学問領域(政策学、政治学)の視点から明らかにし、更に研究を行う上での切り口について解説を行う。
公衆衛生学特論
 公衆衛生制度は英国の地方自治体制度の中で、産業化、都市化に伴う疾病問題を制御するための社会制度として発展したきたものである。わが国も明治期に先進国の公衆衛生制度を模倣して制度を発展させてきた。しかし、公衆衛生制度の理解にはわが国の政治行政制度をはじめ、社会制度、地域社会の現状と課題について理解する必要がある。授業では、英国の公衆衛生制度をもとに公衆衛生制度の原点を理解し、わが国の地方制度および公衆衛生制度を勉強し、将来、地方自治体や地域において人々の健康保護や安全で安心できる政策担当者となれるために事例検討も取り入れて授業を進める。また、欧州やWHOで進められてきているヘルス・インパクト・アセスメント取り組みをわが国の自治体に応用の仕方について討議する。
災害経済学特論
 首都直下地震や東海・東南海・南海地震など、巨大災害の発生が懸念されるが、それによって我が国や被災地域に対してどのような経済的影響が生じるのだろうか。また、大規模災害の被害の軽減策において、市場メカニズムをどのように活用してゆけばよいのだろうか。この講義はこうした二つの疑問に答えようとするものである。
 本講義の目標は、受講者が、災害という社会的現象を経済学的に捉える視点を身につけると同時に、減災社会の構築にむけた基礎的な政策立案能力を身につけることである。
リスクマネジメント特論
 近年、リスクマネジメントに対する社会的な要請が高まり、さまざまな専門分野からリスクマネジメントにアプローチされるようになった。本講義では、本研究科で展開されている防災・減災・安全に関わるさまざまな分野の研究や修士論文作成にあてはめることが可能な「リスクマネジメント・システムの基本的なフレームワーク」について、さらに専門的な学習をする。前半は担当者が講義を行い、後半は参加者によるプレゼンテーションとする。枠組みを提供する。本講義では、保険学や経営学の観点からの伝統的なリスクマネジメントの理論をベースにしている。
安全と法システム特論
 安全に関するわが国の法制度は、近年の技術革新やグローバル化、国際的圧力などにより大きく変化している。わが国は現在、社会システムとしての法の転換期・過渡期にあり、安全や社会秩序に関する様々な問題が顕在化している。
 本講義では、「安全と法システム」に関して、わが国や欧米諸国との比較法的アプローチによるレクチャーを行った上で、安全や社会秩序を揺るがす具体的な事件や訴訟、国際機関や公的研究会の議論、学会における先端研究などを紹介し、議論を通じて現行法制度と安全・社会秩序との関係を考察する。
消費者安全法特論
 全ての人は消費者としての側面を持つが、近時その生活が危険にさらされている。生活に関連する種々の事故が後を絶たず、震災は人災と相まって被害が拡大し、ITの発達による便利さの裏返しとして私生活の平穏も脅かされている。それらの対策として、近年法整備が著しく、消費者契約法・特商法などの大改正はもとより、民法の大改正の方向も消費者を意識したものである。さらに、消費者庁関連三法の成立に伴い、表示・取引・業法・安全などの各方面に縦割りとなっていた各法が統一的に把握されるようになり、基幹法としての消費者安全法もスタートする。本講義では、これらの消費者安全に関する法制度、消費者保護と救済の仕組み、法体系の今後の課題などについて考察する。
水災害特論
 2004年インド洋津波や2005年ハリケーン・カトリーナなどの大規模な水災害が世界中で発生し、甚大な被害を与えている。本講義では、水災害として津波、洪水、高潮を取り上げ、それぞれの災害のメカニズムや解析技術、観測技術、防災・減災技術などを学ぶ。これらの水災害には自然現象として共通する部分が多いため、まず津波を事例としてその解析技術等を詳細に学び、ハードウェアおよびソフトウェアによる防災を理解する。その後、洪水および高潮について、それぞれに特徴的な部分を中心に学ぶ。
地震減災特論
 地震災害の大きさは人間社会にふりかかる「地震外力」と、災害を受ける側が持つ「耐力」の相対的な大きさの大小で決まる。その災害を軽減するためには、適切な外力を想定し、社会の持つ耐力を効果的に高めていくことが必要である。耐力の高め、「減災」を実現するには様々な方法が考えられるが、本講義では即時的な地震観測、波形処理技術、高速通信網、GISといった技術の集大成にもとづく「リアルタイム地震防災」についての現状レビューと将来展望を行う。
都市安全計画特論
 都市という環境が引き起こす災害の特性を素因と誘因を規定した上で説明し、これらが起こりうるメカニズムの違いを理解する。導入として阪神・淡路大震災の被害を例に取り、地震動の発生から都市災害となるまでの過程を明示化し、その後一般的な都市災害特性(自然災害・大規模事故災害・地域災害・日常災害)について講義を行う。これらの内容を学んだ後、都市災害を防ぐための様々な技術的アプローチに関して講義を行う。
社会減災政策論
 災害に粘り強い(resilient)社会を作るためには、単なる政策提言にとどまらず、その論理的な背景やそれを実現する枠組みの提示まで進める必要がある。1961年に世界に先駆けて制定された災害対策基本法は、34年後に発生した阪神・淡路大震災を経験して大きく改定されたが、まだまだ不十分な点が少なくない。そして、政策にまで至らないけれども、様々な試みが大きな災害直後から提案され、今日の条例や法律につながっている。ここでは、これらの具体例を示しながら、どのような努力を継続しなければならないかについて紹介する。
工学的安全システム特論
 学部配当の「原子力プラントの安全性」を基礎として、さらに高度な原子力発電プラントを中心とした、工学的安全システム設計計画の基本的事項について理解を深めることを目的とする。電力の需給見通し、資源エネルギー問題から始まって、原子炉の開発史、軽水炉の構造、安全性研究のあり方、基本計画、基本設計、詳細設計、モックアップ試験、スケールアップ問題、設計基準、安全性評価、製造時の諸問題、運転前試験、運転開始後のメンテナンス、第三者検査のあり方、原子力行政・制度などの諸問題に亘って、安全性を軸として解説する。
工学システム解析
 我々の身の回りでは、化学プラント、交通システムなどでしばしば事故が発生している。また、危険を伴う再現実験の代わりとして、計算機シミュレーションが有力な事故解析手段となり得る。実際、人や車の流れを模擬するモデルが数多く開発され、例えば駅やビルの設計に役立てられている。本講義では、まず各工学システムにおける安全性を定量的に評価することの意義を説明する。さらに、計算機シミュレーションを利用した事故解析と、実際の工学システムとの関連について説明する。