社会科学における実験の推進

 40年ほど前まで社会科学は実験ができない学問であると認識されてきました。実験が可能であるとしても、社会の中で実際に取り組む「社会実験」だけだとされてきました。この「社会実験」としては例えば、ロシア・東欧などで採用された社会主義型計画経済です。このような壮大な社会実験は社会に多大な(負の)影響を与えました。しかしながら、社会科学、特に経済学においては、実は1940年代から実験を用いた研究手法が発展してきました。また、社会心理学においても一部では実験が行われてきました。
 実験では、実験室のなかに仮想的な経済環境を構築し、その中で参加者に仮想的な財の取引、投資に関する意思決定、寄付に関する意思決定、リスクに関する意思決定、チームで労働する際にどのようにすれば協力して働くようになるか、といった問題を取り扱っています。近年では、株価の予想や金利の予想プロセスを検証する、というマクロ経済学的な実験も盛んに行われています。
 社会科学における実験研究の成果の集大成として、2002年と2009年に実験経済学やその関連分野の行動経済学でノーベル経済学賞が、また、2012年にも実験経済学およびマッチング理論でノーベル経済学賞が与えられました。腎臓移植で移植者と提供者の型をどのように合わせるか、医師のインターン問題の解決に役立ってきました。
 近年では、実験室の外で実験が行われるようにもなりました。フィールド実験や野外実験と呼ばれる手法です。特にフィールド実験は社会問題の解決に科学的な証拠を与えることに大きく寄与しています。例えば、節電させるための要因は何か、健康診断やがん検診を受けるためにはどのような情報提供を行えばよいか、開発途上国における教育水準の引き上げにはどのような施策が必要か、といったことです。フィールド実験分野にも2019年にノーベル経済学賞が与えられました。

本機構経済実験室では日本有数の設備を有し、 社会科学実験の共同利用拠点として本学の研究者のみならず学外の研究者にも広く開放しております。日本の社会科学における実験研究の一層の発展のために、より容易に実験ができる環境を提供したいと考えております。利用方法につきましては実験を希望する研究者の皆様をご覧ください。

経済実験室

実験参加者募集

学生対象

関西大学の学生のみを対象としています。

  1. 実験参加応募サイトに登録をしてください。
  2. 調査・実験の開催が決定した段階で、ご案内メールを送ります。参加を希望される場合はサイトから申し込んでください。

社会人対象

※学生の登録方法とは異なります※

現在、電子メールでのご案内およびご回答が可能な方を対象に募集を行っております。ご興味のある方は、以下の要領でエントリーしてください。
なお、携帯電話のアドレスをご登録される場合は、riss-econ-lab@ml.kandai.jpからのメールが受信できるように設定してください。

  1. riss-econ-lab@ml.kandai.jp宛に以下の内容で登録メールをお送りください。
    件名:実験参加者募集(社会人対象)
    本文:お名前・フリガナ、登録するメールアドレス
  2. 調査・実験の実施日が決まった段階で、対象となる参加者の方々へ、メールにて詳細をご案内します。
  3. 参加を希望される場合は、メールにて申し込みを行ってください。

現在募集中の実験

学生対象

実験参加応募サイトにて確認してください。

社会人対象

現在募集している実験はありません。

実験を希望する研究者の皆様

本機構の実験室にて実験を希望される場合は、riss@ml.kandai.jpまでご連絡ください。

本実験室の仕様は以下のようになっています。

また、本機構の施設または実験参加者プールを利用した実験を行う際には、以下ご留意願います。

  1. 本機構の倫理委員会の承認を得ること。
  2. 本機構では実験参加者管理ソフトウェア(ORSEE)を使用しており、本ソフトウェア使用にあたっては、成果を公表する際に以下の論文を引用することが求められています。
    Greiner, B. Subject pool recruitment procedures: organizing experiments with ORSEE. J Econ Sci Assoc 1, 114–125 (2015). https://doi.org/10.1007/s40881-015-0004-4

    本機構実験室を利用した成果を論文化する際には、私学助成(私立大学等経常費補助金)の要件の1つとして、「査読付き論文」に実験室を利用した旨記載することが求められています。
  3. 本機構の施設、実験参加者プールを使用して得られた研究成果を、調査・実験終了後1年以内に公表することが義務づけられています。