研究活動

【公募研究班】近世大坂の遊興文化と出版の研究―名所・芝居・花街を中心に―

研究代表者 山本 卓 文学部・教授
研究概要

 近世の大坂では、士農工商といった枠組みを超えて、文化が享受されていた。本研究では、大坂で生まれた遊興文化について、以下の三つの大きな柱を設定し、調査・研究を進める。

1.名所
 18世紀後半から「名所図会」刊行の流行があり、『摂津名所図会』(1796-98刊)の原本は、なにわ大阪研究センターにも所蔵されている。こうした名所図会を基本に、図書館に所蔵されている鬼洞文庫の一枚摺や大坂の名所を描いた浮世絵についても網羅的に調査・研究していく。さらに、『新出「浪花名所図屏風」の調査・研究』(2016年、関西大学なにわ大阪研究センター刊)で取り上げた屏風の原本が2023年度、センターに寄贈された。本屏風と浮世絵「浪花百景」や現在の風景などを関連づけたデジタル研究も考えていく。さらに、名所に関連づけた和歌も近世には広く知られている。古典文学と名所との関連づけも行う。

2.芝居
 本センターの基幹研究の一つに「道頓堀五座、芝居小屋大工中村儀右衛門資料調査研究、上方演芸ならびにCGによる可視化の促進と発信」がある。これは近代道頓堀の景観復元に眼目があるが、道頓堀は近世に誕生した芝居街である。本研究では、近世大坂の芝居の様相を明らかにすることも目的とする。本学図書館には、近世芝居関係の図書や資料が数多く所蔵されている。さらに、KU-ORCASで公開されている図書館所蔵「長谷川貞信(初代・二代・三代)浮世絵版画コレクション」、中村幸彦文庫や鬼洞文庫などの特別文庫についても調査・研究を行う。

3.花街
 官許の廓である新町やその他の花街に関する文献実証的な研究は進んでいるとはいえない。しかし、図書館には数多くの図書や資料類が所蔵されている。これらの悉皆調査を行うことで、本学図書館所蔵図書の意義を広く知らしめたい。

 以上、三つの遊興文化を、主に出版物を通して明らかにしていく。研究成果を広く問うためには、博物館と協力しながら展覧会開催を目指すこととする。展覧会は原物展示を基本としながら、映像作成など、デジタルを用いたものとしたい。

研究分担者

北川 博子  関西大学非常勤講師

中尾 和昇  奈良大学・文学部・准教授

岸本 理恵  文学部・教授

長谷 海平  総合情報学部・准教授

研究期間 2024年度~2025年度(2年間)

研究成果概要

 山本、北川、中尾各自が、関西大学図書館となにわ大阪研究センター所蔵の文献資料の調査・検討を行った。山本は花街資料である図書館所蔵『新町細見之図澪標』、その他、新町関係の一枚摺の研究を行った。また、図書館所蔵の読本『絵本太閤記』と実録体小説との関係についての研究を深めた。北川は図書館所蔵の歌舞伎役者や花街の芸妓の襲名・追善の際に出された「摺物」を網羅的に閲覧、各作品を考証した。ちなみに、摺物は近年世界的に注目されている浮世絵であるが、かなりの数となる図書館所蔵摺物については全く知られていない。この調査・研究の成果の一部として、研究ノート「役者似顔の上方摺物二種」(2024年6月刊「演劇研究会会報」第50号)を発表した。また、図書館所蔵「長谷川貞信(初代・二代・三代)浮世絵版画コレクション」は以前に調査を行っているので、各作品の意義を見直した。中尾は名所関係の資料を調査、具体的には「センター所蔵『摂津名所図会』が各作品に与えた影響」という視点を持ちながら「浪花名所図屏風」や図書館所蔵「鬼洞文庫」の地誌の一枚摺、版本などの調査・研究を行った。岸本は和歌研究の視点から、名所である「住吉」を取り上げ、考察を深めた。長谷は江戸期の資料の映像化について、外部視察を行いながら取り組んだ。
 2025年度は、2024年度の研究を更に進めると共に、研究成果として、2026年度の博物館春季企画展「近世大坂の遊興文化-名所・芝居・花街を中心に-」を開催する。従って、山本・北川・中尾の調査は、出品作品の選定を行うもので、各作品の研究は展覧会図録の作品解説に繋がるものである。また、山本・北川・中尾・岸本の研究は図録のコラムとして発表するもので、これらを図録にまとめた(2026年2月27日、関西大学博物館・関西大学なにわ大阪研究センター発行)。長谷の研究は、博物館展示室で放映する映像制作のためのもので、期間中、会場で上演すると共に図録の付録としてDVD化した。
 博物館ではこの展観が開催されている(2026年4月1日~5月30日)

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