研究活動

【基幹研究班】なにわ大阪研究センターにおける研究成果の可視化

研究代表者 林 武文 総合情報学部・教授
研究概要

 本研究班は、基幹研究のテーマのうち、2023年度に引き続き、①道頓堀五座、芝居小屋大工中村儀右衛門資料調査研究、上方演芸ならびにCGによる可視化の促進と発信、②鉄砲鍛冶屋敷井上関右衛門家に関する堺市との共同調査に基づく鉄砲ならびに「モノ作り」に関する研究、のテーマに取り組むとともに、あらたに、⑤その他として、幕末から大大阪時代へのステップに関わる地域研究とその見える化に関する研究、に取り組むものである。 

 ①については、松竹座を含めた大正末から昭和初期の景観のCG化について、⑤とも関係するが、大大阪時代の道頓堀の景観を復元する。また、大塚克三氏のデザイン画については2023年度に撮影を終了しており、引き続き、既存の山田伸吉資料と合わせて、昭和初期から戦後にかけての舞台装置の可視化に向けて研究を進める。

 ②については、2024年3月の堺鉄炮鍛冶屋敷ミュージアムの開館に向けて、鉄砲鋳造過程のCGを完成させたが、2024年度は鉄炮鍛冶屋敷のCG等の作成を推進し、あらたなコンテンツの作成を期す。また、鉄砲の製造過程の解明に向けて、鉄砲に用いられた和鉄の鍛造加工性とたたら製鉄原料由来の化学成分に注目した調査を引き続き行う。さらに、堺鉄炮鍛冶屋敷ミュージアム開館に伴い、堺市との協同のもと、井上家文書のデジタルアーカイブズ化に向けての調査を開始する。

 ⑤については、①にも関わるが、道頓堀だけでなく、大大阪の他の地域にも目を向け、2023年度に寄贈を受けた浪花名所図屏風の調査と活用法も含め、より地域研究に密着した研究と、その成果の見える化を図る。

研究分担者

乾 善彦  文学部・教授

藪田 貫  関西大学名誉教授

井浦 崇  総合情報学部・教授

橋寺 知子 環境都市工学部・准教授

丸山 徹  化学生命工学部・教授

北川 博子 関西大学非常勤講師

研究期間 2024年度(1年間)

研究成果概要

 2024年度は、以下の3テーマについて研究を進めた。
①道頓堀五座、芝居小屋大工中村儀右衛門資料調査研究、上方演芸ならびにCG による可視化の促進と発信
②鉄砲鍛冶屋敷井上関右衛門家に関する堺市との共同調査に基づく鉄砲ならびに「モノ作り」に関する研究
⑤その他(浪花大坂図屏風に関連する研究)

1.研究テーマ①について
 大大阪時代の景観のCG復元として、昭和10年前後の松竹座外観、戎橋近辺、角座付近のCG映像を完成した。今後はセンターWebサイト等を通じた映像の公開とXR技術を用いた展示用デジタルコンテンツを制作し、一般に向けた研究成果の発信を行う。
 松竹株式会社より、大正12年大阪松竹座の竣工図面63点と当時の古写真の提供を受けた。次年度には新出図面に基づく劇場内部の復元を行う。松竹および大林組からは、芝居研究や歴史建築の研究に関しても資料提供を受けることになった。

2.研究テーマ②について
 火縄銃の金属組織の分析を通して、材料と製造工程の調査を開始した。堺市より井上関右衛門による火縄銃2丁の銃身の提供を受け、切断面の金属組織の分析を開始し、材料組成と鍛造組織の特徴を明らかにした。
 2021年度より実施してきたCGによる火縄銃製造過程の可視化が完了し、映像の一部は2024年3月に開館した堺鉄炮鍛冶屋敷ミュージアムにて上映されるに至った。また、西之表市経済観光課から種子島の鉄砲博物館での上映の打診があり、共同でデジタルコンテンツ開発を行う方向で進めている。
 10月12日(土)に、鉄炮鍛冶屋敷講演会「堺と国友 -受け継がれる鉄砲鍛治の歴史-」を堺市立東文化会館5階メインホールにおいて開催し、一般市民に向けて研究成果を公表した。また、講演会場のホール、千里山、高槻オープンキャンパス、なにわ大阪研究センター報告会にて、火縄銃の仕組みを分かり易く体験できるMRコンテンツを展示して来場者が体験した。
 完成した映像「CGでよみがえる火縄銃の製造と発射のしくみ」はこちら

3.研究テーマ⑤について
 2023年度に「浪花名所図屛風」が本センターに寄贈されたことを受けて、学内での特別展示と講演会「「浪花名所図屏風」―「天下の台所」大坂の名所と風景―」を実施した。一般市民を含め、50名が参加した。また、大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の特別展「徳川大坂城400年―城のかたち・まちの姿ー」(2025年2月11日(火)〜2025年4月6日(日))にて展示を行った。これに併せて、HTML5と最新の技術を用いたWebコンテンツを開発しており、センターWebサイトで公開予定である。

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