研究活動

【基幹研究班】道頓堀・堺鉄砲鍛冶屋敷研究の可視化

研究代表者 乾 善彦 文学部・教授
研究概要

 本研究は、以下二つのテーマの取り組みを通して、センターの前身から長年にわたって積み上げられてきた成果を十分に活かしながら、さらに地域に密着した研究の継続と発展を目指すものである。

①道頓堀五座、芝居小屋大工中村儀右衛門資料調査研究、上方演芸ならびにCGによる可視化の促進と発信
 (1)景観復元のための文献調査
 (2)道頓堀芝居町CG映像の編集とWeb公開
 (3)昭和初期の道頓堀と御堂筋近辺のCG制作に向けた資料収集

②鉄砲鍛冶屋敷井上関右衛門家に関する堺市との共同調査に基づく鉄砲ならびに「モノ作り」に関する研究
 (1)井上家文書の読解・整理
 (2)鉄砲鍛冶屋敷の3次元CGモデルとアニメーション映像の制作
 (3)CGモデルに基づく映像、CG、その他のコンテンツの開発

 ①については、これまでに、芝居町道頓堀のCG化をおこない、大正8年頃の道頓堀の町並み景観をCG化することができたが、その発信力は10年の歳月を経過した現在でも、各方面で使用されている。この成果を発展させ、より充実したものとするために、松竹座を含めた大正末から昭和初期の景観のCG化を行う。  

 ②については、なにわ大阪研究センターの発足と前後して開始された研究であり、これを引き継ぐものである。資料の整理は、現在、堺市と共同で進められており、2021年度には、共同でシンポジウムを予定している。また、新たにCG等のデジタルコンテンツを作成する。

研究分担者

林 武文  総合情報学部・教授

藪田 貫  関西大学名誉教授

研究期間 2021年度(1年間)

研究成果概要

2021年度から改正されたなにわ大阪研究センター規程によって、同センター長を研究代表者とする基幹研究班を設置し、基幹研究テーマのうち、2021年度は、下記2件の研究テーマに取り組むこととした。


研究テーマⅠ
道頓堀五座、芝居小屋大工中村儀右衛門資料調査研究、上方演芸ならびにCGによる可視化の促進と発信


研究テーマⅡ
鉄砲鍛冶屋敷井上関右衛門家に関する堺市との共同調査に基づく鉄砲ならびに「モノ作り」に関する研究


1.研究テーマⅠの成果
(1) 可視化に向けた資料収集
松竹座を含めた大正末から昭和初期の景観のCG化のための基礎資料として、当時の景観に関する資料の収集をはかった。その過程で、センターWebサイトのCG映像にも修正を加えることにした。
(2) 道頓堀のCGデータを用いたコンテンツ開発
これまでに制作した大正期道頓堀 芝居町のCGモデルの再構築と現行のCGソフトへの移行を行い、各種デジタルコンテンツの開発に着手した。
(3) 顔認証決済システムへの適用
パナソニック株式会社による大阪道頓堀商店街における観光実証実験(2021年12月実施)にCGモデルを提供し、顔認証決済の実証アプリコンテンツとして公開した。
(4) Webサイト用CG映像の制作
センターホームページ掲載のCG映像「道頓堀五座の風景『西から東へ』『東から西へ』」に対し、史実により近いCGシーンに差し替えるとともに、通行人を配置した映像を制作した(2022年度に公開予定)。
(5) 資料整理とその公開方法の検討
専門的知識をもった研究者によるセンター保有資料の整理を開始した。それと同時並行で、大正期の舞台絵付きの上演台本と戦前の大阪の景観資料とを購入して、資料の充実化を進めている。山田伸吉資料に加えて大塚克三氏のデザイン画も、資料整理とその公開方法の検討を開始した。


2.研究テーマⅡの成果
(1)関西大学-堺市シンポジウムの開催
堺市との連携事業の一環として2021年11月14日にシンポジウムを関西大学堺キャンパスにて開催した。当日は、林副センター長(研究分担者)が3Dプリンタによる火縄銃復元のデモンストレーションを行い、藪田貫名誉教授(研究分担者)が基調講演を行った。
(2) CGによる火縄銃の製造過程の可視化
火縄銃の製造過程を分かり易く表示することを目的にCG映像を制作した。堺市井上家鉄砲鍛冶屋敷および滋賀県国友鉄砲ミュージアム等の現地調査に加え、金属材料の分析・加工の専門家からの知識提供を受け、CG制作に着手した。映像は、2022年度に堺市-関西大学連携事業のシンポジウムで公開予定である。
(3) 火縄銃の3次元計測とデジタル造形によるコンテンツ開発
堺市より貸与された実物の火縄銃を3D計測し、デジタル造形のためのモデルを制作した。VRを用いた体験コンテンツ開発に向けた検討を開始した。
(4) 鉄砲鍛冶屋敷のCG復元に関する検討
関西大学と堺市による研究成果に加え、ミュージアム建設における発掘調査で明らかになった井上家住宅の変遷に関する知見に基づき、CGによる家屋の復元の検討を開始した。今年度は、明治14年(1881)の屋敷平面図と昭和初期の写真を基に屋内と外観のCGモデリングを行った。その年代より時代を遡り、地籍地図が残る文政8年(1825)、文化10年(1813)、元禄2年(1689)のCG復元を進めることとした。

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