研究活動

新出「浪花名所図屏風」の調査・研究

研究代表者 長谷洋一 文学部・教授
研究概要 新出「浪花名所図屏風」の調査・研究本研究では、《浪花名所図屏風》の調査研究を通して「近世後期大坂の景観研究」を行うことを課題とする。具体的には以下の通り。

①場所の特定や製作環境に関する研究
一部ではあるが場所の特定が未確定である名所も存在する。この期の絵画資料として主として『摂津名所図会』や《京・大坂図屏風》(大阪歴史博物館蔵)、《大坂市街図屏風》(個人蔵)をあげるにすぎない。類例作品の比較検討を通して描かれた 名所の全確定や建物、船舶の構造から製作時期、筆者など《浪花名所図屏風》が持つ地誌情報や製作環境に明らかにする。

②可視化とデータベース化による景観変遷の研究
名所は細かく描かれているために屏風上の任意の場所の拡大図を虫眼鏡で見ているかのように表示できるコンテンツを制作するほか《浪花名所図屏風》では描写上の歪んだ空間を補正し現在の大阪市街図と重ね合わせた鳥瞰シミュレーションによる可視化を行う。また天満宮、 四天王寺、大坂城など主要な名所のデータベース化を行い、名所の個別的な詳細な景観変遷を明らかにする。
研究分担者 黒田一充 文学部・教授
林 武文 総合情報学部・教授
井浦 崇 総合情報学部・准教授
橋寺知子 環境都市工学部・准教授
藪田 貫 関西大学名誉教授
Ehmcke,Franziska ケルン大学名誉教授
森本幾子 尾道市立大学・講師
研究期間 1年間

研究成果概要

本研究は、新出の「浪花名所図屛風」(六曲一双)の調査・研究を通して「近世後期大坂の景観研究」を行うことを課題に、研究実施計画にもとづき推進された。その成果は以下の通りである。

①場所の特定や製作環境に関する研究
屛風に描かれた風景は、画面背後の山並みは西側から東方の生駒山地を眺めたもので、左隻には桜宮、大坂城、天満天神や道頓堀の芝居小屋、右隻は阿弥陀池和光寺、四つ橋、住吉大社の風景が描かれているが、左隻に天満橋や大川の風景、右隻に安治川の河口に浮かぶ菱垣廻船が見えるなど、屛風に描かれた名所は必ずしも実際の地理とは一致しておらず、全体を扁平なS字状の配置にして描いている。このような構図をもつ大坂図屛風は、類例のないものと考えられる。

②可視化とデータベース化による景観変遷の研究
この屛風は、『摂津名所図会』などの図版との比較・検討により、江戸時代に盛んに描かれたさまざまな名所図会をもとにして制作されたことがうかがえる。絵の表現としては稚拙なところがあるが、明治に入り近代化で景観が変わる前の近世大坂の最後の光芒をとどめた稀有な作品であることが判明した。 そこで、『摂津名所図会』のうち現在の大阪市域にあたる巻之一から四を選び、祭礼・法会・信仰・民俗行事・興業・商業・産物・名勝などに関するものを抽出し検索するデータベースを製作するとともに、特定できた場所については、屛風上をクリックすることにより、『摂津名所図会』や現在の写真が表示できるデジタルフラッシュコンテンツを制作した。

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