住吉大社境内の石燈籠からみた大阪文化の伝播
研究代表者 | 黒田 一充 関西大学文学部・教授 |
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研究概要 |
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研究分担者 | 林 武文 関西大学総合情報学部・教授 谷 直樹 大阪くらしの今昔館・館長 森本 幾子 尾道市立大学・講師 小出 英詞 住吉大社・権禰宜 櫻木 潤 高野山大学・助教 松永 友和 徳島県立博物館・学芸員 |
研究期間 | 2016年8月~2017年7月 |
研究成果概要
(1)進捗状況
まず、境内と摂社に残っている石燈籠の銘文の解読と分析をおこなった。年代が読み取れるものからは、寛永21年(1644)が一番古く、 享保年間(1716~36)が一番多いことがわかった。さらに地名を旧国名で分類すると、大坂・堺・京都が約6割を占めるが、あとは松前(北 海道)から薩摩まで分布し、内陸部の信濃・飛騨や山陰地方などを除いて、ほぼ全国的に分布していることがわかった。ただし、関連資料 の調査で、現在の石燈籠の配置は、昭和5年(1930)年ごろに境内の奥に散在していたものを前面に動かして整備した結果であり、造立当 時のままの景観ではないことも明らかになった。これらの知見にもとづいて、境内の石燈籠を紹介するイラストマップを作成し、一般の方々 に向けた現地でのガイドツアーを催した。また、ウェブ上でも見ることができるコンテンツの制作をおこなった。
さらに、石燈籠の銘文に記された場所の現地調査をおこなった。山形県には石燈籠造立の際に寄進を募った文書が残っており、富山県 高岡市や徳島市では、住吉の石燈籠と同じグループが、地元の有力神社にも石燈籠を寄進していたことがわかった。また、大坂で造った 狛犬や家の欄間などが運ばれて現地に残っており、江戸時代の物資の移動や大坂との地域交流の様子を探る上で、この石燈籠の碑文が 資料となることが明確になった。
(2)今後の課題と展望
これまでの住吉大社の石燈籠研究は、碑文の業種名と造立年代だけを分析対象にするものだったが、碑文の人名から人物を特定してみ ると、造立年代とは時代が合わない事例が見つかっている。石面には最初の造立年が刻まれているのだが、再建もしくは修繕時に寄進し た人名が刻まれているのである。これらから、年代別の分析も容易でないことがわかった。そのため、研究成果をまとめて出版する計画を 持っているが、その実現にはもう少し時間が必要かと考えている。