堺市との共同研究
堺鉄砲鍛冶屋敷井上家資料調査研究
研究代表者 | 黒田 一充 関西大学文学部・教授 |
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研究概要 | 堺市北旅籠町西1丁に所在する井上家は江戸時代を通じて鉄砲生産に関わった家柄であり、井上家住宅は、江戸時代初期の建築で鉄砲の生産現場が残されている全国唯一の建物として、堺市指定有形文化財(建造物)に指定されている。この井上家に伝わる古文書を中心とする資料は、第二次世界大戦の戦火を免れ堺環濠都市区域に残る資料として大変価値が高く、総点数は数万点を越えるものと推定される。そのため、その歴史的価値及び今後の保存活用について調査研究を行う。 |
研究分担者 | 藪田 貫 名誉教授 |
研究期間 | 2015年8月~2019年3月 |
研究成果概要
(1)進捗状況
堺市内の鉄砲鍛冶屋敷で見つかった1万1700点の古文書について、共同調査を実施。2015年度から藪田名誉教授の指導のもと、古文書資料の目録作成・整理・分析・翻刻を行っている。
2015年度~2017年度の調査・研究により、江戸後期には斜陽化していたと考えられていた堺の鉄砲産業が、意外に隆盛だったことが分かった。
1842年の『顧客名簿』によると、堺の鉄砲鍛冶は東北から九州まで239家の大名、旗本らと取引があり、このうち1/4を井上家が受注したこと、さらには、1752~1871年までの約120年間のうち、井上家の年間最大受注量は1845年の330丁余で、江戸初期などと比べても遜色ないことが分かった。この発見は、「徳川の平和」の下で「堺の鉄砲産業は斜陽化していた」という長年の通説を覆すものである。
2018年1月21日・11月8日には、鉄砲鍛冶屋敷井上関右衛門家調査報告会「蔵のとびらを開いてみれば」を開催し、一般市民に研究成果の公開を行った。
(2)今後の課題と展望
2018年度の調査を通じて、鉄砲鍛冶屋敷としての井上家の所蔵資料の概要はほぼ把握されるようになり、史料的価値の重要性も明瞭となった。今後堺市による鉄砲鍛冶屋敷井上家整備計画が具体化し、今回の基礎調査を踏まえた文化財指定のための二次調査が必要となるであろう。