流通ビッグデータ利活用のための
データマイニング技術の振興

商学部 矢田 勝俊 教授

商学部 矢田 勝俊 教授

ABOUT

2019年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、科学技術賞(科学技術振興部門)を矢田勝俊教授が受賞しました。
矢田教授は、大規模データを分析するデータマイニング技術を流通業界に導入し、さらにデータの蓄積・管理・分析の低コスト化を実現し、マーケティングにおける有効な活用法の振興を進められたことが評価され、今回の受賞となりました。

INTERVIEW

現場経験を活かして効率的な
データマイニングに挑む

コンビニで「サラダ」と「ドレッシング」が同じ場所に陳列されていたので、両方買ったという話をよく耳にします。これは、購買データから頻繁に購入される商品の組み合わせを見つけ出した上での陳列配置が関係しています。消費者の立場で売れる環境を整えれば、売上はおのずと上がるもの。商品開発や販売にとってデータマイニング技術が非常に有効な手法であることは、今では誰もが認めるところですが、矢田教授はまだこの分野の研究が進んでいなかった頃から、データマイニング技術のビジネス応用に取り組んでいます。 大規模データから価値ある知見を導き出すためには「いかに有用なデータを見極め、効率よく収集し分析するか」が重要なカギ。矢田教授は「現場の知識」を大切にしながら、これらの課題を解決するプラットフォームや技術の開発に努め、流通業界への普及を進めています。

現場経験を活かして効率的なデータマイニングに挑む

流通業界でビッグデータの
利活用を推進する礎を築く

会員カードを用いて顧客データを収集するFSPやレジで売上データを管理するPOSシステムなど、多様なデータを収集できるようになったのは、およそ20年前のことです。マーケティングに活用するには、大量のデータから有用なパターンやルール、相関などを抽出するデータマイニング技術が重要。しかし、当時は多様な分析に柔軟に対応できる効率のよいデータ処理技術がなく、流通業界でビッグデータはほとんど活用されていませんでした。そのような状況の中、多くの小売りの現場を経験した矢田教授が開発したのが、大規模データ処理のための前処理システム「MUSASHI」でした。 データマイニングの約9割は「前処理」と言われるように、データ処理前のデータの並び替えやクリーン処理には膨大な作業を要します。「MUSASHI」の特長は、前処理の圧倒的な低コスト化、効率化を実現したところにあります。また、矢田教授はデータ処理に特化したツールを作るだけでなく、オープンソースとして無償で公開したため、今まで活かしきれなかったビッグデータの利活用が大きく進展していきました。

流通業界でビッグデータの利活用を推進する礎を築く

有用性の高いシステムで
ビジネスの成功に貢献

大規模データが効率的に処理できるようになると、データを使った分析の幅が広がります。例えば、顧客と商品の属性を用いた「顧客クラスタリングシステム」では、顧客と商品をそれぞれのカテゴリーに分類し両クラスターを多変量解析することで、Aの顧客群はBの商品群をよく買う傾向にあることを明らかにできます。サラダを買う人がドレッシングも買う率が高いため、同じ場所に陳列する関連購買も大規模データから導き出されたマーケティング戦略です。顧客群ごとの特定のニーズ、売れる時間帯や時期のデータ分析は、高精度な販売促進戦略だけでなく、販売員の効率的な配置を可能にし、コスト削減にも役立ちます。 「顧客クラスタリングシステム」を導入した企業の成功からライフスタイル・マーケティングというコンセプトが生まれ、今では多くの企業が採用するシステムに発展しています。

有用性の高いシステムでビジネスの成功に貢献

消費者行動からデータを分析。
効果的なマーケティング戦略を導く

ビッグデータは消費者がある商品を購入したという「結果」です。矢田教授は「なぜ」「どうやって」を知るため、消費者の購買プロセスに着目。ショッピングカートに取り付けたICタグと店舗内の無線LANを使って「顧客動線データ」を収集し、購買者の行動分析に取り入れることで、有効なマーケティングアプリケーションを開発しました。

また、消費者の目線を追う「アイトラッキング」という手法も活用。特殊なメガネに取り付けたセンサーで視線の動きを捉え、その動きから被験者が陳列された商品をどのような順番で、どのくらいの時間見て購入したかを分析します。これらのデータから、販売者は人の見方に合わせた効果的なディスプレイや広告を作り、消費者は自分の要求を満たす商品をスムーズに手にできるようになるのです。

消費者行動からデータを分析。効果的なマーケティング戦略を導く

データマイニングの
さらなる普及のために

矢田教授はアイトラッキングや顧客動線、購買行動など多様なデータを融合し、これまでにない「価値」を生み出す研究を続けています。そしてデータマイニングをさらに幅広く活用できるようにするための普及活動にも注力。産学連携のある研究会は、100社を超える企業が参加する大規模なものになっています。企業と連携して実施した購買行動実験や実例を用いて、データマイニング技術の有効性や最先端の知見が紹介されており、企業の絶大な支持を集めています。データマイニング技術を用いてあらゆる業界に革新をもたらす矢田教授の挑戦はこれからも続きます。

データマイニングのさらなる普及のために

PROFILE

商学部 矢田 勝俊 教授

[研究分野]

経営情報・知能情報学
・流通小売業におけるデータマイニング
・データマイニングに関する情報戦略
・消費者行動モデリングに関するデータマイニングの応用

商学部 矢田勝俊教授
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