「エジプトは経済危機のため古代の埋蔵品の研究はおろか、博物館を維持する余裕さえない」と、考古大臣が述べた。
ギザのピラミッドからルクソールの王家の谷まで、多くの有名な史跡を持ち、エジプト経済の頼みの綱である観光業は、ホスニ・ムバラク氏を失脚させた2011年の革命以降強い打撃を受け、外国人観光客の減少に苦しんでいる。
「私たちは1月25日の革命以後に閉館した20館以上の博物館を所有しているが、それらを運営するための財源がない」と、ハーレド・エル・エナニー氏はロイター通信社のインタビューに答えた。
考古省は自給自足で運営し、国家予算からの財源を受け取る予定はなかった。2010年考古省の収入は年間10億3000万エジプトポンド(1億4640万USドル)であったが、2015年の収入は2億7500万ポンドに下落した。
「収入は月に2000万ポンドをわずかに超えるだけである。私は給料だけで月に8000万ポンド支払わなければならない。」
エナニー氏は、「観光業の復興がない限り、博物館や史跡の紹介や開館時間の延長といった新しいプロジェクトにはいずれも望ましい効果がないだろう」と述べた。
紀元前24世紀の中頃、9代目にして第五王朝最後の王、ウナスのために建設されたピラミッド複合体の再開館についても同様のことが言えるであろう。
「それでもやはりエジプトは、2017年に大エジプト博物館、すなわち大望を持って計画された、世界一大きな考古学博物館となる古代エジプト文化財博物館の部分的な開館を計画している」とエナニー氏は開館の予定日を一年後まで繰り上げて述べた。
これは単なる可能性である、なぜなら数年前には、日本による24億8000万USドルの借款が必要であったからだ。
経済難は発掘の試みにも影響を与えており、2011年以降、急激に減少している、とエナニー氏は述べた。他にも、他国から密輸された、あるいは以前の植民地時代の国々の支配者に獲得されたエジプトの文化財の返還を主張する国際法学者が不足 しているという問題も省内で起こっている。また、密輸に対抗するため、文化財を集約したデータベースを作る必要性や、2000年以降盗まれてきた文化財に対する努力の問題もある。
3月のエナニー氏就任前、前任者はイギリスのエジプト学者ニコラス・リーヴス氏の、ツタンカーメンの墓の後ろに存在する可能性がある女王ネフェルティティの失われた墓があると信じられている仮説調査を支持していた。
エナニー氏はこの件については冷静な立場を示している。
ネフェルティティは紀元前14世紀に亡くなり、ツタンカーメンの継母であるとされている。彼女の墓の確認は、今世紀最も注目すべきエジプト考古学上の発見である。
先の11月に現地で終了したレーダースキャン分析はツタンカーメン王の墓にある2つの壁の後ろに2つの空間が存在することを明らかにした。
前考古大臣のマムドゥーハ・エルダマティー氏は11月に「90%の確率で壁の後ろに何かがある」と述べ、リーヴス氏は、巨大な墓は本来ネフェルティティのものであり仕切りの壁の後ろに彼女が葬られている、と考えている。
しかしながら、壁の最も小さい開口部は何年間も密閉状態にあった墓内部にダメージを与える可能性がある。「二回目のレーダースキャンが、空間は100%存在することを示した時に限り、私は墓を公開するつもりである」と、エナニー氏は述べた。