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三大学医工薬連環科学シンポジウム(第9回)報告(於:関西大千里山キャンパス)(14.01.23)

更新日:2014年3月13日

日時: 2014123日(木)13:20-17:15

場所: 関西大学100周年記念会館 第3会議室



◎全体01.JPGのサムネール画像のサムネール画像 三大学医工薬連環科学教育研究機構では、関西大学先端科学技術シンポジウムとの併催 で「医工薬連環分野におけるこれからの看護学の位置づけ-看工連携の動向と今後-」というテーマで医工薬連環科学シンポジウムを開催しました。

 近年、経済産業省での医療機器開発プロジェクトや、新学会である看護理工学会が設立され、昨年2013105日に東京大学で第1回 看護理工学会学術集会が開催されるなど「看工連携」の動きが活発化しています。看工連携にご感心のある方々に向けて工学、看護学、薬学のそれぞれの専門家の立場から、これまでの経験を踏まえ、事例紹介、問題提起を交えて講演し、今後への期待を交えた活発な議論が行われました。

 当日は36名の方が来場し、講演終了後は活発な質疑応答が行われました。最初に関西大学 倉田純一 機構長より、10年計画の文部科学省の大学連携事業よりはじまった医工薬連環科学教育研究機構の活動が5年の中間地点に差し掛かったこと、連携校である大阪医科大学看護学部が完成年度に達したことを交え、開会挨拶が行われました。



「看工連携の現状と今後」

(大阪大学大学院医学系研究科 特任教授 山田 憲嗣 氏)

◎山田先生04.JPGのサムネール画像  新学会の看護理工学会の発起人かつ理事でもあり、日本初となる看工融合講座設立のキーパーソンでもある山田憲嗣 先生より、ご講演いただきました。光計測などの工学系の立場で臨床研究に関わってきた経緯からはじまり、医療の世界におけるヒューマンエラーの問題、ナーシングルームでは薬を溶かす、蒸しタオルを作るなど、本来の利用目的以外で使用される家電製品がとても多いにも関わらず、専門機能付きの製品が今だに開発されないことなど、高齢化社会に向けて企業はなぜ動かないのかなどの問題提起をされました。

 また看工連携の問題では、病院での転倒転落防止のビジョンセンサーの開発が凍結した経緯を踏まえ、工学の人たちは「最先端」や「サイエンス」がなければ動かないこと、企業からの洗髪ロボットの評価の依頼では、性能評価のみで自分たちの作ったものの評価でなければ研究としての面白みがないこと、看護学の研究は調査研究が多いこと、研究期間が2ヶ月程度と短いこと、研究の多くがニーズ、市場調査、ビジネスモデルまで考慮しているのだろうか、などの問題提起がありました。

 研究室での看工連携の話題では、看護学出身の学生が病院内の人の行き来の動線の画像解析をC言語でプログラミングしたこと、3Dプリンターを使い20代の斬新な発想でモノ作りが行われていること、文系の知財関係出身の学生もいて良い影響を及ぼしていることなどが話されました。また、フィリピン語なども含めた17言語に対応した多言語問診票MultiQは文系の語学関係者の協力も受けて開発された事例なども紹介されました。病院での夜間眩しくない巡視ライトは、ペットボトルを使って開発できる現場では求められる製品であっても技術そのものはローテクであり、大阪大学としては最先端を求められること、現場のニーズと最先端をどう両立させるのかなどの苦悩も話されました。また科研費では新たに「看護工学」の項目ができ、この分野の推進に繋がるであろうとのことでした。



「看護を中心とする連携期待に対して」

(大阪医科大学 看護学部長 教授 林 優子 氏)

◎林先生02.JPGのサムネール画像 三大学医工薬連環の中での看護学の位置づけと、どのように連携していくことができる かについて、看護学の立場から林 優子 先生より、ご講演いただきました。大阪医科大学看護学部では、博士・修士課程の研究科が平成26年度4月に設置されることから、ますます連携が期待されることを述べられました。本学にある外部研究資金開発企画課を活用して看護学部からも企業への外部資金申請の制度ができるしくみになっていることが話されました。過去に行った研究では、病院で起こるトラブルの80%がヒューマンエラーであることから、医療事故防止のためのシミュレーターの開発(与薬)を行ったこと、看工連携の話題では本学部基礎看護学准教授が中心となって行っているスマートフォン型の超音波診断装置の例が話されました。また、褥瘡の予防に関わる分圧のための体位や体位交換の工夫など人間工学に関わる研究について話題が提供されました。さらに臨床→ニーズ→シーズ→メカニズム→プロダクト→応用・評価などのサイクルに基づいた看工連携への期待を述べられました。



「薬学分野から看護と連携に期待するもの」

(大阪薬科大学薬学部 特任准教授 銭田 晃一)

◎銭田先生02.JPGのサムネール画像  基礎研究から薬剤師の現場など広く経験を積まれた銭田 晃一先生より、ご講演いただきました。最初にインシュリンを例に動物から抽出していた糖尿病の治療薬であるインシュリンが遺伝子組換え技術で製造されるようになったこと、患者さんが自己注射できる注射器のデバイスの開発や、蚊の針を模倣した非対称断面の痛くない注射針など医工薬の連携の成功例が紹介されました。近年、粉薬は自動分包機、錠剤や水剤なども調剤ロボットが開発され運用されている事例を踏まえ、容易にハイテク化できない、薬剤師に求められる仕事は何かとして、医師とは異なる立場で、薬や病気の相談に応じる役割、在宅医療における高齢者の薬剤の服用・管理に関する問題解決への関与、服用時点の色分けや、壁掛式クリアポケットの現場での工夫などを事例を交えて話されました。また、在宅医療の現場では、医師、看護師、薬剤師、その他多職種連携が益々求められるとのことでした。



「継続的な看工連携実施に対する問題提起」

(関西大学システム理工学部 准教授 倉田 純一)

◎倉田先生01.JPGのサムネール画像 機械工学の専門の立場から倉田純一先生より、ご講演いただきました。機械屋の思い込 み設計という、工学の視点だけで研究開発していると、世の中には出ることのない無用なハイテク機器を開発しているかもしれない危険の警鐘や、医師、看護師、患者からのフィードバック、ニーズ調査の大切さが指摘されました。医工連携、看工連携の共同研究を推進する上で、病院内での医師と看護師、大学内での医学部と看護学部との関係など、医療外の分野が感じるヒエラルキーの問題などの相互関係の危うさがプロジェクトに与える影響についての危惧が語られました。福祉工学に関わるサイエンスの問題として、普遍性のないものはケーススタディと見做されてしまう、現場では新規性のある技術でなくてもローテクで対応できてしまうとのことが語られました。さらに看工連携の上で共同開発か、共同研究か、産業化まで見据えた上で看護といかにWin-Winの関係を築くかについて問題提起されました。また、山田 憲嗣先生の講演で紹介された看工連携活動の進展について賞賛されていました。



ワークショップ 

看工連携の継続的実施へ向けて-医療機器の具体的改善案を例に考える-

 倉田先生の司会のもと3名の講演者を前にワークショップが行われました。会場からの質問も多く、看工連携における大学院教育や学部教育についても紹介されました。サイエンスということが取り上げられ、医工連携の研究では自然科学に焦点化した研究になるが、看護学はヒューマンサイエンスが基盤であり、看護学ではサイエンスといっても自然科学のみをさすのではないという立ち位置が話されました。また、大学の看護学部教員と臨床の看護実践者が協働連携してケアに関する研究を行うことの重要性など、臨床との協力関係の構築への課題などが指摘されました。

◎ws01.JPGのサムネール画像 ◎WS02.JPGのサムネール画像のサムネール画像

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