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三大学医工薬連環科学シンポジウム(第12回)報告(於:医科大)(17.01.21)

更新日:2017年2月20日

平成29年1月21日(土)に、三大学医工薬連環科学シンポジウム(通算12回目)「地域医療充実のための医工薬連環科学の今後を探る」を大阪医科大学 臨床第Ⅱ講堂において開催しました。講演には、医療従事者、大学教員、企業関係者等、様々な方64名が参加されました。

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寺﨑文生・三大学医工薬連環科学教育研究機構 副機構長の司会により、大槻勝紀・大阪医科大学 学長から三大学医工薬連環科学教育研究機構のこれまでの取組と今後の展開の紹介がなされ、開会の挨拶が行われました。

今回のシンポジウムでは、地域医療に焦点をあてて、医学・工学・薬学それぞれの立場から発表がなされました。



講演 「地域医療と総合診療」
大阪医科大学 地域総合医療科学寄附講座 特任教授 鈴木 富雄 氏

2-suzuki.jpg講演では、まず、大阪医科大学が掲げる5つの教学改革方針のうちの一つであるsocial contributionが当てはまるとして、地域総合医療科学寄附講座の紹介がなされました。地域総合医療科学寄附講座は、兵庫県・高知県の財政支援により設立され、兵庫県・高知県の医療人材が少ない地域と連携し、医療人材の派遣を行っているそうです。また、地域医療に貢献できる医療人の育成、地域医療に関する様々な研究活動を行っていることを説明されました。次に、新専門医制度で基本領域の専門医として新たに追加される総合診療専門医について説明されました。総合診療医と言っても、都会の大学病院では、初診外来や様々な病態解明、研修医の教育を行うし、地域中小病院では、一般内科外来や救急外来等、各地にある診療所では、整形外科外来や小児・高齢者医療、在宅診療など環境によってニーズは様々であり、現場のニーズを的確に捉え、その場のリソースを最大限に用いて応えることが重要であると述べられました。そして、地域総合医療科学寄附講座が行っている診療支援活動について紹介されました。



講演 「薬局薬剤師をとりまく最近の話題」
大阪薬科大学 特任准教授 銭田 晃一 氏

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講演では、薬剤師、薬局について、医薬品の分類と販売について、薬局・薬店・ドラッグストアの違い、また、同じお薬なのに薬局によってなぜ値段が違うのかをわかりやすく説明されました。次に、薬局における調剤業務は、変化してきており、現在は、地域住民の身近な健康づくりの相談相手、健康づくり支援(健康サポート機能)と高度薬学管理機能(専門医療機関と連携した抗がん剤の副作用対応等)が求められていることを述べられ、それを担うのがかかりつけ薬剤師であることを説明されました。そして、かかりつけ薬剤師になるための要件、また、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件、薬局施設基準について述べられました。2025年の地域包括ケアシステム構築にむけて、薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行う等、セルフメディケーションの推進のために薬局の再編成が進められていることを報告されました。



講演 「災害時支援、高齢・障害者対策」
関西大学 社会安全学部 教授 高鳥毛 敏雄 氏

4-takatorige.jpg講演では、1995年発生の阪神淡路大震災が災害支援を強化していく出発点となったが、東日本大震災を経験し、広域災害に対してはこれまでの災害支援体制では対応できないことが明らかになり、あらたな体制の構築がなされてきていると報告されました。そんな中で、災害時の支援を取り巻く変化として、①大都市への人口集中、②高齢者人口の急速な増加、③災害の多様化(地震、火山、土石流、ゲリラ豪雨、台風、洪水など)、④高齢者、障がい者の処遇の制度の変化、⑤地方分権、平成の大合併、住民サービスや支援の市町村への移譲、⑥共助、互助社会の弱体化をあげて説明されました。災害時には、直接死以外に関連死も多く報告されており、地域医療、地域包括ケアシステムによる日常のケアも大切だと述べられました。災害時、地域の自治体が崩壊してしまったとしても、十分な支援を可能にするために、チームで支援できる人材育成も始まっていることも紹介されました。



特別講演 「地域包括ケアの概要」
厚生労働省近畿厚生局 上席地域包括ケア推進官 河本 慶子 氏

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「地域包括ケアシステム」は、現在、団塊の世代の方が75歳以上になる2025年(平成37年)を目指し、医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じた自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保できるしくみ(ネットワーク)のことで、そのための仕組み作りが推進されています。河本先生が広島県のある病院を訪問されたときに、院長から、「一生懸命に夜を徹して救命した命が、2年後3年後には病院に来なくなり、再び来院した時には、背中に大きな褥瘡(床ずれ)ができ、変わり果てた姿になっている。こんな姿を見るために医療をしたのではない。」というお話を聞かれ、(寝たきりをなくすため)この取組を強くすすめなければならないと考えられたそうです。高齢化が進み、多くの人が自宅で最期を迎えることを望んでおり、そのためには、このシステムの構築が不可欠であることを実感することが出来ました。



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最後に倉田純一・三大学医工薬連環科学教育研究機構 機構長より、閉会の挨拶を頂きシンポジウムの幕を閉じました。

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