活動報告

HOME 活動報告 東北大学「REDEEMプロジェクト」への訪問調査報告(11.03.11)

東北大学「REDEEMプロジェクト」への訪問調査報告(11.03.11)

更新日:2014年3月13日

東北大学REDEEMプロジェクト(医療工学技術者創成再教育システム) 訪問調査について

日 時  平成23年3月11日(金)午後2時30分から
訪問先  仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-01 特定非営利活動法人REDEEM
      東北大学医学部5号館およびバイオメディカル棟(星稜キャンパス)
訪問事項 REDEEM教育プログラム内容と解剖学実習見学  


本年度2回目の医工薬関係教育研究プロジェクト推進大学の訪問先として、長年にわたる医工連携の歴史をもち、平成19年度から大学院に医工学研究科を新設するなど活発な取組みを推進している東北大学を選ばせていただいた。
東北大学では、従来から医療工学人材育成委員会が立ち上げられており、医療工学の技術開発と医療応用における工学と医学の双方向の理解と協力の基盤づくりを行うため、医療工学技術者創成事業が開始されている。

具体的な取組みとして、平成14年度から2年間の経済産業省のプログラム採択を受けてスキルスタンダードやカリキュラムの開発などに着手され、平成16年度からの5ヵ年計画に基づく、文部科学省科学技術振興調整費による人材養成プログラム、「医療工学技術者創成のための再教育システム」(Recurrent Education for the Development of Engineering Enhanced Medicine、略称REDEEM)をスタートさせ、主として社会人技術者の再教育プログラムが進められてきている。
さらにその後、医療工学の産業・医療現場での指導者育成のニーズに応えるため、内容をレベルアップさせた教育プログラム策定を目指し、平成18年度から経済産業省の産学連携に関する人材育成事業、「次世代医療関連産業中核人材育成のための実践的教育システム」(Education through the Synergetic Training for the Engineering Enhanced Medicine、ESTEEM)が開始され、医学のより高度で実践的なカリキュラムを構築し、将来新しい技術・産業分野となることが確実視されている医工境界領域において活躍できる先進的な人材育成事業が実施されている。
そして、この取組みはさらに、平成19年から、全国で初めて設置された医工学研究科における教育活動の一環として位置づけられ、さらに体系的な大学院教育に発展している。

REDEEMプログラムは、社会人を対象とした医工学に関する再教育プログラムで、毎年度2回の募集で合計50名程度が履修しており、短期集中的な講義と実習教育のカリキュラムが組まれている。講義は、基礎生物学、基礎医学、臨床医学、医工学、医療法制・医療機器市場についての各科目群を受講し、実験・実習では、分子生物学、細胞生物学、生理学、解剖学の多くの実験が設けられている。
指導側も工学部と医学部の教員が主に担当し、内実性を高めるとともに、年度進行に伴ってさらに進化させた内容のカリキュラムが構築されてきている。 

今回の訪問は、それらのプログラムと大学院における医工学教育研究への展開の経緯や社会人の再教育の状況についてお話をお聞きし、我々の教育プログラムの将来の方向を考える上で参考にさせていただくことを目的としたものである。
当日は、医学部5号館の控室でREDEEM事務局担当者から白衣をいただき、となりのバイオメディカル棟に移動した。ちょうど年度2回目のプログラム最終日にあたり、行われていた解剖学実習を見学した。入室してから、実習指導中であったが、医療工学人材育成委員会委員長を務めておられる医工学研究科医工学専攻の山口隆美教授から概要の説明を受けた。その間、実習生は動物の肝臓からのDNA抽出などの作業を行っていたが、医療機器産業に関わる工学系出身者が解剖学実習を行っている様子は、おそらく他に類を見ない光景ではないかと思われた。
このことは、医工連携教育がかなり実質的な意味で融合した次元に進展してきていることを意味し、短時間の見学であったが、これからの医工学はまさにかくあるべきではないかとの印象を強く認識することとなった。

ちなみに、上記の教育方針は、大学院医工学研究科のカリキュラムにも受け継がれており、前期課程(2年、1学年定員31名)、後期課程(3年、同10名)とも、理工学系卒業者にはまず医学・生物学系基礎科目を、保健・生物・薬学・農学系卒業者には工学系基礎科目を履修させている。
前期課程では、その上で基礎医工学、臨床医工学、社会医工学の3つのコースに分かれ、実習、国内外インターンシップ研修を含む医工学応用科目群を履修するとともに、研修科目としてPBLゼミナールと医工学修士研修(研究論文)が置かれている。後期課程では、学際基礎科目群の講義と特別講義、国内外インターンシップ研修とともに、専門科目、医工学特別研修、医工学博士研修の科目が設けられている。


    50.jpgのサムネール画像            49.jpgのサムネール画像
            写真1 東北大学医学部5号館前にて       写真2 REDEEM参加実習生


参考資料
1. 山野真裕ら:東北大学における「医療工学技術者創成のための再教育システム」の実践.
工学教育, 56-6, p. 125-132 (2008)
2. 山野真裕ら:「次世代医療関連産業中核人材育成のための実践的教育システム」の開発と実証研究.
工学教育, 57-2, , p. 13-21 (2009)
3. 山口隆美:東北大学REDEEMホームページ, http://www.redeem.jp/aisatsu.html
4. 山口隆美:東北大学REDEEM/ESTEEM ホームページ, http://www.redeem-esteem.jp/aisatsu.html
5. 東北大学大学院医工学研究科ホームページ.http://www.bme.tohoku.ac.jp/edu/
  および情報公開(設置計画書等)http://bme.tohoku.ac.jp/public
6. 国立大学法人東北大学:東北大学大学院医工学研究科設置計画に係わる補正計画書(上記5の情報公開サイトから)


追記
 本訪問は、ご多忙のところ、我々三大学医工薬連環科学教育研究機構の今回の参加者のために見学スケジュールを設定いただいた、東北大学医工学研究科教授の山口隆美先生のご厚意により、実現したものです。しかし、実習見学中に予期せぬ巨大地震が発生し、訪問はもちろん実習自体が中止になりました。山口先生はじめREDEEM関係各位、また東北大学の関係者におかれましては、甚大な被害を受けられたことと拝察し、衷心よりお見舞いを申し上げます。また、東北地域を中心に津波をはじめとする未曾有の大震災に見舞われ、夥しい数の尊い人命が失われたことに対し、心から哀悼の意を表します。

活動報告
  • 関西大学
  • 大阪医科大学
  • 大阪薬科大学