コラム

第12回 2013/7/1

織田作之助生誕100年記念

関西大学文学部教授/センター研究員
増田 周子

 織田作之助は、本年生誕100年を迎える大阪を代表する作家である。本センターでは、2011年に、幻の原稿『六白金星』を入手し、本格的に織田作之助研究にとりかかった。2013年3月には、『織田作之助と大阪』をセンターから刊行し、関西大学附属図書館所蔵の全集未収録書簡や草稿とともに、この『六白金星』原稿の紹介をし、センター研究員達の論文をまとめた。

 センター所蔵の『六白金星』原稿は、400字詰原稿用紙36枚で、1940年9月の『文芸』に掲載予定であったものの、前半半分程度である。主人公の楢雄が、小豆島や岡山にわたり、サーカス団に入るなど岩波文庫などで広く流布している内容とは全く異なり、大阪弁が自在に使われ、興味深い作品となっている。本センターの研究によって、はじめて内容が明らかになったのだが、実は、1969年に伊勢丹で開催された『三人展』の図録に、この原稿の冒頭のみが画像でとられている。この展覧会は、青山光二、瀬川健一郎、藤澤桓夫など、織田と親しかった人々が企画している。つまり、1969年には、確実に原稿は、手元に存在していたのだ。もしかしたら、1969年には後半部分もあったのかもしれないと思うこの頃である。どのような経緯で古書店にわたり、前半部分しかみつからないのかは知る由もないが、非常に貴重な原稿なので、今後も後半の出現を期待したい。織田作之助研究は、生誕百年を迎えた今も、まだ、不明なところも多く始まったばかりである。今後も、力を尽くし、大阪文化研究に貢献していくつもりである。

織田作之助『六白金星』

織田作之助『六白金星』           


 織田作之助生誕100年記念の本年は、各地で、織田を顕彰するイベントが開催されている。8月には、NHKで、『夫婦善哉』『続夫婦善哉』のドラマが放映され、8月24日、織田作之助の生涯をつづった放送が予定されている。本センターの『六白金星』原稿も撮影され、広く公開されるので、ぜひともご覧頂ければ幸いである。

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