学部長メッセージ
「安全・安心」で
サステナブルな社会の構築に貢献します。
社会安全学部 学部長 髙野 一彦 教授
社会安全学部の設立趣旨
2010年4月、社会安全学部は関西大学の13番目の学部として創設されました。同時に大学院社会安全研究科修士課程も開設され、2012年4月には博士後期課程も開設されました。本学部・研究科は、安全・安心な社会の構築を目的とした「社会安全学」に関する研究・教育を行う高等教育機関として、わが国で初めて創設され、現在に至っています。
「社会安全学」とは、人間社会を脅かす災害を対象に、その発生防止、発生頻度の抑制、被害の軽減や被害者の救済などを目的に、理工学・社会科学・人文科学の学際融合研究を行う新しい学問体系です。研究の対象となる災害は、人命や社会生活に被害が生じる事態のことを言い、大規模地震や津波などの自然現象に起因する自然災害、製品事故や労働災害・企業事件など人為的な原因に起因する社会災害があります。
たとえば、近年のわが国では、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)などの地震災害、西日本豪雨(2018年)などの水災害、COVID-19パンデミック(2020年)などが発生しました。また、製薬会社の製品による健康被害(2024年)をはじめ、情報漏えいや検査不正など企業活動に起因する事件・事故も頻度高く発生しています。
本学部・研究科は、このような問題を対象に、幅広い分野の研究者が文理の垣根を越えて研究・教育を行うことで、安全・安心な社会づくりに貢献しています。災害大国と呼ばれるわが国にとって、不可欠な学部・大学院であると言っても過言ではありません。
学びの内容
たとえば、大規模地震災害への防災・減災対策や復興・復旧対策を理解するためには、工学のみならず、経済学や行政学、社会学などの複数の学問分野を学ぶ必要があります。また、企業の製品事故の予防・クライシスマネジメントを学ぶためには、経営学や法学、心理学などを学際的に学ぶ必要があります。このように、災害や事件・事故の有効な対策は、既存の学問分野を横断的に学ぶ必要があります。
本学部では文系・理系の垣根を越えた学際的な学びを特徴としています。1年次は自然災害・社会災害のいずれを学ぶにも必要となる基礎科目を中心に履修します。2年次以降では1年次で学んだ基礎知識をもとに、より専門的な科目を履修します。3年次になると専門科目の履修に加えて、全ての学生がゼミに所属します。ゼミでは指導教員の専門分野についてより高度に学び、安全・安心に関わる課題解決に向けた研究を進めます。4年次では卒業研究を論文にまとめます。基本的には、1・2年次で多くの知識を勉強し、3・4年次ではそれらの知識を活用した実践的な演習科目が多く配置されたカリキュラムになっています。
また、さらなる高度な研究は、大学院博士課程前期課程、後期課程で行うことができます。
期待される進路
わが国では2003年から2006年にかけて、企業に対して平時からリスクの発生を予防するための体制の整備を求める法律が相次いで成立しました。それは、個人情報保護法(2003年)、会社法(2005年)、金融商品取引法(2006年)などですが、主に大企業に対してリスクマネジメント体制の構築を促しました。私が大企業グループの親会社21社を対象に、2010年に実施した調査では、リスクマネジメント部門の人員は10年前の4.8倍に増加していました。大企業が法令に真摯に対応している様子がうかがえます。
このような経緯から、多くの大企業はリスクマネジメント、コンプライアンス、防災の専任管轄部署を置いているため、社会安全学の専門知識を学んだ本学部の卒業生の大企業就職率は他学部に比べて高い傾向があります。また、多くの行政機関も防災の専門部署を置いており、公務員の就職率も比較的高い傾向があります。
本学部の就職状況は良好で、1期生から毎年高い実績を上げ続けています。本学部で教育を受けた人材は、企業や行政機関などでリーダーとして活躍することが期待されています。
社会へのメッセージ
近年、サステナブル(持続可能)という言葉をよく聞くようになりました。社会安全学が目指す安全・安心な社会の構築は、サステナブルな社会の基盤であることは論を俟ちません。本学部は、社会安全学を学ぶことができる日本で唯一の学部です。
また、社会安全学はその研究成果の実効性が問われる学問分野です。従って、本学部では企業・行政機関との共同研究、協創活動も積極的に行っています。
本学部は、社会安全学の研究・教育をつうじて安全・安心でサステナブルな社会の構築に貢献します。