賞の概要

受賞者は，天然キラル分子を利用した機能性マテリアルの開発に取り組んできた。例えば，α- プロパルギルアミノ酸由 来の置換ポリアセチレンを合成し，これが共役主鎖近傍に位置 するカルボキシ基との相互作用により，カチオンサイズに応答して鋭敏に色調が変化するセンシング能を示すことを見出した。 また，環状多糖類であるシクロデキストリンからなるロタキサ ンのうち，特定の刺激を加えることで各構成成分に分解する「サイズ相補性」を示す一連の化合物群を合成し，これが空間を介した不斉伝達能を示すとともに，架橋剤に組み込むことで共有結合の分解を伴わない分解性ネットワークポリマーが得られることを明らかとした。これらの研究成果は高付加価値な天然物由来のインテリジェントマテリアル創出に寄与するものであり， 高分子研究奨励賞に値するものと認められた。